ウスキ国の攻防
天丼
天丼;同じギャグやボケを二度、三度と繰り返して笑いをとる手法のことを指す。余り間を置かずに畳み掛けるように使ったり、他者のボケに乗っかる形で重ねる場合は、かぶせ(る)と称することもある。
語源は、天丼には一般的に海老が二本載っていることから。
(ニコニコ大百科より)
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一行は津久見の魔物の拠点を潰したので、王様に挨拶した後さらに北の臼杵国に行くことにした。
「いやー。まさか開口一番『貴方がこの国の王様ですか。初めまして。あの魔物の城を撃破した勇者の吉弘綾香と申します。突然ですが、報酬としてあの山を頂けませんこと?あ、よろしい?感謝いたしますわ。それではごきげんよう』で、さっさと退出するとは思わなかったぜ」
堅苦しい話が苦手なベッキーが愉快そうに言う。
賢者のソーカは『山一つ壊せるようなドラゴンみたいな化け物が来たんだから、さっさと帰って欲しいと思ったんでしょうね』
と事情を察したが敢えて黙っていた。
それよりもソーカが気になるのは、あのような脆くて作物も育ちそうにない山を何故欲しがったのか?という事だ。
実は、現実世界と同様に、こちらの世界でもツクミの山はセメントが採れる山だった。
セメント技術は未熟なので、あの資源の山はただのはげ山と見られていたが、1億程度の価値はあると踏んだので綾香は手っ取り早く報酬に貰ったのである。
これが通常の異世界物なら新技術を広める所だが、御嬢様は商売人である。
必要な資源は適正報酬(クルーザーチャーター代1日分+迫撃砲10台+弾丸代+技術料)で買い取るだけで、技術の布教まではする義理もなかった。
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「おまえか?この国に召還された勇者って奴は」
角と羽の生えた少し小生意気な感じの少年から声をかけられたのは、そんな所有物の山の横を通りぬけようとした時だった。
黒を基調としたレザースーツに整った顔ながら野心が見え隠れする雰囲気をまとった少年。
いつの間に現れた?とパーティーメンバーが驚く中、
「はい。私この国と契約を結んでおります、吉弘綾香と申します。」
優雅なしぐさで吉弘は一礼した。
「ああ?別におまえの名なんて聞いてねぇよ」
小馬鹿にしたように少年は言う。
その態度で賢者は思い出したように吉弘嬢に耳打ちする。
「あれは、最近魔王軍の四天王になった男ですよ」
「あら?あんなに幼そうな方なのにですか?」
驚いたように、中学生にも満たないような姿の四天王を見る。
「その通り!俺は新四天王にして未来の魔王候補!疾風のエス!!!」
威圧するような声で四天王のエスは言う。
見た目は小さいが自分を強者として認め、怯える人間たちの姿を見るのがこの四天王はとても好きだった。
力は化け物。頭脳は子供。
見た目はかわいらしく、美しさすら感じるが、中身はタチの悪い小悪魔のような化け物。世界中の人類の強者を鼻歌交じりに処分する実力者だった。
今回もオークキングが倒されたと知り次に来るのはツクミだろうと、禁呪を使って瞬間移動してきたのだ。
「まずいで。あの化け物はノツ国の英雄ソーダ(LV60;戦士)すら倒したと聞いたことがある」
「LV50超えの英雄と仲間が全滅させられたような奴、勝てるのか!」
と、いう反応をエスは期待、いや、確信していた。
生意気ではあるが、それだけの戦果を挙げていたし、異世界の勇者ならともかく、この世界の住人なら自分の凄さだって知っているはずだ。
今まで倒した魔物が味わった絶望感を今度は勇者たちが味わう番だった。
だが、
「で、その疾風のエス様がいったい何のご用なのですか?」
と、怯えた様子もなく丁寧に尋ねるお嬢様と、後ろで『に・げ・ろ』『は・や・く』『し・ぬ・ぞ』と無言ながら必死の形相でこちらになんとか忠告を伝えようとする不敬な人型種族達がそこにはいた。
おかしい。
普通、自分の名前を知っているなら全力で逃げるか絶望のあまり腰が抜けて泣きながら命乞いをする。それが人間や阿人という生き物だったはずだ。
なのに、ここまでビビらない連中は初めてだった。
なので
ものすごい轟音と共に、左手にそびえたクリスタルマウンテン(所有者;吉弘嬢)の一部が吹き飛んだ。
魔法で空気を凝縮し、一気に爆発させたのだ。
それを見て、さきほどまで口パクをしていた3人の表情が凍りつく。
エスは良い気分で
「どうだ?他にもカマイタチで貴様らの手足をバラバラにする事だって造作もない事だぞ」
と、『この作品には残酷・グロテスクな表現を含みます』な情景を想像し蟻でも見るように見下してたが
「なるほど。つまりアナタは特使とか使者ではなく、ただ喧嘩を売りに来ただけなのですね」
と、笑顔で そう、非常ににっこりとした笑顔で吉弘綾香御嬢様は問うた。
「あ?いまごろ気が付いたのかよ、」おまえ。とエスが言う前に吉弘御嬢様は
パン!パン!
……突如取り出した銃で四天王の両膝を打ち抜いていた。
「へ?」
筋が切れて膝から倒れる四天王。
可憐な姿と上品で丁寧な言葉使いから、綾香嬢を勝手に『レベルの低い格下』と思っていただけに、エスの頭は現実に追いつかない。
「使者だったら、多少の暴言を吐いても外交問題にするだけで危害を加える気はなかったのですが、私の私物を破壊して、おまけに宣戦布告までする幹部の方がのこのこと出向いて下さったのでしたら、それなりの利用価値が有りそうですわね」
「え?足が動かない?何これ…」
強い四天王が、その力の片鱗を見せるため、気まぐれで登場する。
RPGなどでよくある演出だ。
だが、彼にとって不幸だったのは、そのパターンは以前もあり、担当者は仲間に報告もせず逃げ出した事。
そして今回は相手がその強い四天王に比べて悪魔並、いやそれ以上に強かった事である。
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「ぐわああああああ!!!!」
エスは両手を使って地面を飛び、お嬢様に飛びかかろうとしたが
「お取り寄せ;ナ●セ製 鉄扉(厚さ15cm)」
とつぶやいただけで、堅い壁が出て行く手を阻む。
さらには、ホビットとエルフが
「ファイアボール!」
「ホーリーライト!」
と援護攻撃をする。
「はっ!そんな貧弱な攻撃効くかよ!!!」
などと、蚊ほどにも効かない低レベルな魔法を余裕を持って食らっていると
「吉弘流護身術47!!AK47!セミオートですわ!」
明らかにこの世界の魔法と規格番号が違う呪文とともに、装甲魔法ごとエスの肉体が口径7.62 mm7.62x39mm弾によってこそぎ落とされていく。
「ぎゃあああああああ!!!!!!」
エスの下半身が『ミンチよりひでえや』状態から『これはなんですか?』状態へと現代アート風味に変わっていく。
「あーあ。私たちの攻撃で倒れていれば良かったのに…」
「相変わらず、えぐい攻撃やなー」
四天王がCERO A(全年齢対象)からCERO ZZ(映像化できるか、こんなもん)に変貌した姿を見て勇者の仲間は同情を込めて言った。
遠距離攻撃が出来ないドワーフのベッキーは『きょうは肉料理だけは食べたくないな。あ、ちょうちょさんがとんでる』
と、なるべくグロ画像をみないように、あさっての方角を向いていた。
「わかった!!!参った!!!参ったよ!!!」
下半身が無くなり、右腕と左耳、それに頭の一部などを銃弾で撃ち抜かれてエスはついに降参の声を上げた。
だが
ズガガッガガガガガガ!!!
「なんでぇええええ!!!」
容赦なくマシンガンの銃弾がエスをおそう。
問われた吉弘嬢は慈母神のような笑顔で
「え?だって、降参を宣言するのは貴方の自由ですけど、それを受け入れるかどうかは私の自由ですよね?」
何いってるのかしら?この方?
そんな不思議そうな顔で遠回しに、こう宣告された。
『おまえを殺す(CV;緑川●)』と。
その目は魔王よりも冷たく、命を刈る意思に溢れていた。
ライオンに睨まれたネズミ。
それ以上の恐怖を感じた四天王は
「申し訳ありませんでしたああああああああ!!!!!」
恥も外聞もなく土下座した。
「このエス、貴方様の力を見誤っておりました。私は貴方様の力も見抜けないゴミ屑です。愚かで愚かでどうしようもないカスでした。奴隷にでもなります。貴方の所有物になって一生尽くします!!!だから!どうか、どうか御慈悲を!!!」
体の●%を削られた状態で器用に土下座しながら叫ぶ。
「あら?でしたら、さきほど破壊したこの山を元通りに戻せますかしら?」
その言葉に、粉々になった山のかけらを見てエスは絶望する。
億単位の高価な花瓶を割ってしまって、元通りに戻せといわれてもここまで絶望はしないだろう。
死を覚悟して目を閉じたエスに
「あ~可哀そうだし、ちょっと手伝いますね」
そう言って賢者は『エクスヒール』と言いながら壊れた山に回復魔法をかける。
すると、クレーター状に破壊されたセメント山が元通りになる。
「まあ、色々情報とか聞けそうだし、一人くらいは生かしておいてあげましょうよ」
パーティーメンバーとして『史上類を見ない殺戮者』の称号を手に入れてしまった賢者はほっそい蜘蛛の糸を垂らした。
すると、御嬢様はしばらく考えた様子で
「仕方ありませんわね」
と、自分の資産を破壊した四天王を許す事にした。
「あああああああああああああありがとうございます!御嬢様!そして命の恩人さま!!!!」
と、エスは2人に礼を言った。
こうして御嬢様は、あらたな所有物を手に入れたのだった。
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AIにトラックで轢き●されるゴブリンの絵を書いてもらおうと思ったのですが、失敗しました。
マシンガンでミンチ状態にる四天王の絵は成功させたいです。
悪役でない…はずの令嬢 異世界に行く 黒井丸@旧穀潰 @kuroimaru
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