第3話

 始発電車の出る時間になって、俺達は駅に戻った。


「涌井さん。あの人、一杯だけとか言いながらそうとう呑んでいましたね」


 内田がスマホでニュースを見ている。


「後になって、国道でトラックが横転なんてならなきゃいいけど。そうなると、飲ました僕らの責任になるんですかね?」

「大丈夫だよ。誰が飲ませたかなんて分かるもんか」

「涌井さん。ばっくれるんですか?」

「じゃあ、おまえ名乗り出るのか。私が飲ませましたって」

「それは……昨夜は、何も無かったということで」

「それでいいんだよ」


 事故が起きたとしても、飲んだあの男の自己責任。飲ませた俺達には関係ない。誰かが事故に巻き込まれるかもしれないが、運が悪かったと思って諦めてくれ。


 俺は何も悪くないんだ。内田は……こいつは、ちょっと悪いが……悪くない。


 悪いのは、運転があるのに酒なんか飲む、意志薄弱なあの男だよ。


 始発電車が入ってきた。電車は停止位置を十メートルほど通り越して停止する。


 随分ずれたな。


 電車は十メートル戻って扉を開いた。俺達は先頭車両に乗り込み席に着いた。その時……


「涌井さん。あれを……」

「ん?」


 内田は運転席を指さしていた。運転席がどうしたのだ? あれ? あの運転手って……さっき、ファミレスで酒を飲んでいた……

 

「涌井さん。あの人、トラックの運転手じゃなくて……」


 電車の運転手だったのか!?


「いかん! 逃げるんだ!」

 

 俺達は慌てて出口へ向かうが、寸前で扉が閉まってしまう。


「発車します」

  

 車掌のアナウンスが流れて、電車は動き出した。


「開けろ! 降ろしてくれ!」


☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


飲酒運転は飲ませた人にも責任があります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

始発電車を待つ間 津嶋朋靖 @matsunokiyama827

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ