エピローグ

私はやっとニミグラ村に帰ってくることができた。

しかし、治療の為、予想以上の長期旅行になってしまった。

きっと、樹液が恐ろしい程溜まっている。

これは、沼で天幕を張った時よりもハードじゃなかろうか?

それに、【黒塚】で助けてくれたのは【黄色き蜃】だよな

何か礼をしに行かないと行けないな。

何が良いだろう。


皇国からはイリシメル姫とフメサリスさん一行が

王国からはギルニアさんとセラメル達騎士一行が

ついてきてくれた。


村の入り口では、みんなが出迎えてくれている・・・あれ?


あの鮮やかな赤い衣装は・・・・クリスパメラさん?

非常に悪い予感が脳内を駆け巡る。


「ク・・・クリスパメラさん、お久ぶりです」

「ああ、ポジャカ久しぶり。どうしたんだい・・・そんなに汗かいて?」

あなたのせいですよ・・・・クリスパメラさん。


「今日はどうされたんですか?」

「仕事だよ、依頼者がココに来ると聞いたのでね。挨拶さ」


「仕事の依頼者ですか?」

「そうだよ、ねえ。イリシメル姫?」


振りかえると、そこには満面の笑みを浮かべたイリシメル姫が


「ああ金の歌姫、来てくださったのですね。『青き髪のポジャカ』素晴らしい出来でした。ぜひ今回の『ポジャカと皇国の黒き獣』もよろしくお願いいたしますわ」


「ああ、まかせておくれ。そのかわり王国の国立劇場に飾るフメサリス殿の画は

頼んだよ」


すると、いままで一言も話さなかったフメサリスさんが問いかけた。

眠れていないのか、目が真っ赤になっている。


「姫様、歌姫殿。まず国立劇場に飾る絵は青の神との出会いか? それとも黄色き神の癒しか? どちらにいたしますか?」


「それは・・・難問ですわね?」

「どちらも・・・欲しいな」


「でしたら・・・この村でポジャカ殿をモデルにして2枚のデッサンを描き上げますので、それを見て判断していただきましょうか?」


「それがいいわ」

「それなら、国王陛下に見せる事も出来るわね。それで行こう」


・・・逃げなきゃ


「すみません、仕事を溜めてますので。私は失礼させて頂きます」


「ポジャカ」「ポジャカ殿」「ポジャカ様」


逃げる途中で村長を見つけたので聞いてみる

「村長、私が留守の間の樹液はどこですか?」

村長はニッコリ笑って、村の外れを指さした。


見た事の無い大きな建物、集会所にも使う村長の家の3倍くらいある。

しかも入口に、棒を持ったジリウスさんが立っている。


「・・・村長、村にあんな大きな建物ありました?」

「ポジャカが居ない間に建てた、樹液専用倉庫だ。

青の雫用と樹液酒用、両方の樹液を保管している」


「入口に見張りですか? ジリウスさんまで立てて、やけに物々しいですね?」

村長がため息をつく・・・何があった?


「ポジャカが皇国に向かってすぐのことだ。

 樹液酒の倉庫でジャンガが倒れているのが見つかってな、

 それから見張りを付けるようになった」


「ジャンガは・・・無事ですか?」

「3日程寝込んだがな」


「村長、とりあえず今日は『青の雫』作りから始めます。

すみませんが開いた桶の洗浄にだれか来て貰えますか?」


「わかった。そういえば、皇国から”瓶”じゃったか? それも届いておったぞ」


「酒を詰めてみようと皇国から送ってもらったのをすっかり忘れてました。

明日、説明します」


頭痛が起きるまで魔法を使うのは久しぶりだ。

私はベッドに倒れ込んだ。


明日は、樹液酒の蒸留だな。

そういえば、村長に酒の名前をどうするか相談されてたんだった。

普通に考えれば『樹液酒』と『樹液火酒』か?

村長には名前に『青』を入れたらどうかって言われたけど、 

褐色のお酒にそんな名前を付けるのは、どうだろう?


その時、かばんの中がごそごそ動いて、

中から青い瞳の黒い子猫が現れた。


『ポジャカ?』


「ノール、君の事は内緒だからね。

人前では話さない様に気をつけてね」



        完

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青い髪のポジャカ 黄昏 暦 @kaku_twilight

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