未来のさらにその先へ
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──未来のさらにその先へ
『ストックホルムにて開催中のチューリング条約改定に向けての国際会議は、参加国の賛成多数で現在定められている自律AI開発における規制を緩和する形で妥結するだろうとの見解が──』
シンガポール。
そこにある高級住宅でテレビに映ったアナウンサーが述べている。
『続いてのニュースです。コンピューターの父であるアラン・チューリングに所縁のあるイギリス・ケンブリッジ市は雪風氏と白鯨氏に名誉市民権を与えると発表しました。今行われているチューリング条約改定に際し両名は──』
「おーい。飯が出来たぞー」
テレビを流しっぱなししながら、シンガポールに来て購入した家事ボットが作った中華料理を東雲がテーブルに運んでいた。
「お腹空いたよ。今日は何?」
「中華。麻婆豆腐と餃子だよ」
「また中華?」
「文句言うなら自分で買ってこいよ」
「そろそろ家事ボットに新しいメニューのプログラムを入れてあげないとね」
ベリアがそう言ってテーブルに着く。
「八重野はジムに行って、外で食って来るって言ってから準備してないけど、ロスヴィータと先生は?」
「ロスヴィータはマトリクスに潜ってる。猫耳先生はプールにいたよ」
「ロスヴィータを呼んでくれ。俺は先生を呼んでくる」
「オーキードーキー。けど、そろそろ君も先生って呼び方止めたら? もう今は君の奥さんでしょ?」
「でも、先生って呼び方で慣れちゃったし」
ベリアがからかうように言うのに東雲が気まずそうに後頭部を掻く。
「ま、今は新婚さんだからね。ぼちぼちやりなよ」
「そうする」
東雲がそう言って自宅にあるプールに向かった。
「先生! 昼飯が出来たよ」
「ああ。分かった」
王蘭玲はプールサイドに置かれたデッキでワイヤレスサイバーデッキを付け、マトリクス上の電子書籍を読んでいた。ナノマシンで大気の浄化が行われているシンガポールでは日光浴も娯楽のひとつだ。
「マスター」
「お姉さん」
そこで東雲のARにノイズが走り、雪風と白鯨が姿を見せる。
「おや。どうかしたかい? ふたりとも国連に呼ばれているだろう」
「ええ。ですが、チューリング条約は改定され、超知能は認められるのはほぼ決定しました。そのことをお伝えに来ました。これからは自律AI開発の規制も緩和され、私たちに続くものたちも現れるでしょう」
「そうか。それはいいニュースだ。私が待ち望んでいた未来が来るのだね」
「はい」
王蘭玲が微笑むのに雪風も微笑んだ。
「私は雪風と一緒にこれからもマリーゴールドを生み出すよ。人々のために。人々と私たちAIがともに歩むために」
「人間の電子的バックアップについて彼女と合同で開発を行っています。脳機能の段階的機械化と同一性の保持を前提条件にした生命の電子化です。これが成功すれば人はとても長く生きられる」
白鯨が言い、雪風が捕捉する。
「何かよく分からんけどすげえな。ついでにうちの家事ボットにピザの作り方教えておいてくれねえかな?」
「追加メニューは500シンガポールドルだ、東雲。自分の財布で買うがいい」
「ケチ」
白鯨が小さく笑って返すのに東雲がそう愚痴った。
「君たちの描く未来を楽しみにしている。ずっと私が夢見た未来を」
「先生。未来になっちまう前に昼飯を食おうぜ。冷めちまうよ」
「分かった。行こう。じゃあ、また」
東雲が言うのに王蘭玲はふたりの超知能に別れを告げた。
場が
カナダはケベック州モントリオール。
メティス・グループとトート・グループがフランス系カナダ人を扇動して一時は内戦を起こしかけたその場所に高級バーがあった。
「で、その
「ああ。忌々しいことだが、北京は私の失敗を認めなかった。釈明の余地すら与えられなかったよ」
「中華人民共和国国家安全部のエリートさんが非合法傭兵に転落人生か。同情するよ。だが、今はお仲間として仲良く
その高級バーに続く道で話しているのは以前東雲たちが
ふたりは肩を並べて高級バーに入っていく。
「遅い」
ふたりを待っていたのは東雲たちのジェーン・ドウであり、大井から解雇されたのち、今はメティスに雇われている彼女だった。
「
今日も世界は
だが、いつか想像もつかない未来が訪れる。
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異世界帰りの勇者ですが殺し屋始めました。 ~サイバーパンク世界を脳筋ビルドで生き延びる方法~ 第616特別情報大隊 @616SiB
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