第2話『夜の病院で……』
何でこんな事になっちまったんだろうなぁ~?夜遅く、俺は爺さんとナースを相手に雀卓を囲んでいる。今時病院内は全面禁煙の筈だが、院長室だけは喫煙可らしい。
「爺さん、俺にもタバコくれよ。あ、それポンな」
そう言ってやったが、爺さんもナースも自分達だけタバコを吸っていて、
「ダメじゃ。君の体は9才の子供になっておるんじゃぞ?それに、いつ迄も爺さん呼ばわりは止めんか。私には
なんて言われた。何だよケチくせぇなぁ~。でもまぁ、今の俺は既に44才の本田宗一ではなく、9才の国府宮あかりになっているんだからなぁ~。認めたくはないが、これが現実だ。
「じゃあ伊能先生、俺はいつ退院出来るんだ?」
そう聞くと、爺さんは顎をさすりながら、
「そうじゃのう……、まだ無理はさせられんし、何より君のその言葉使いや行儀の悪さを何とかせにゃ、退院はさせられんなぁ~。あぁちなみに、脳移植手術の事は黙っとれよ。君はあくまで『国府宮あかり』なんじゃからな?おぅ、ツモじゃ!」
そう言った。
はぁ?この爺さん、一体何を言っているんだ?
「黙っとれって、何でだよ?俺の体は死んで国府宮あかりの脳も死んでいた、だから脳移植しましたって話じゃないのか?」
爺さんの意図が分からない。何を秘密にする必要があるんだ?
「まぁそうなんじゃがのぅ~。アレじゃ、脳移植したのがバレると色々面倒な事になるからのぅ。国府宮あかりの両親には、脳死状態から私の治療で奇跡的に回復させた、という風に言ってあるんじゃよ。じゃから、脳が別人になっているなんて絶対言うなよ」
はぁぁぁ~~~!?何を言っているんだ、この爺さん!?訳が分からない。
「イヤ、ちょっと待てよ、何でそんな面倒な事になっているんだ?普通にありのまま説明するんじゃダメなのか?」
何の意味があってそんな事をするのか、全く分からないんだが。すると爺さん、面倒くさそうな顔をして、
「言わんでも分かるじゃろ。脳死で植物状態になっていた自分の娘が奇跡的に回復したと思ったら、脳はどこの馬の骨とも知れん
牌を混ぜながら、そう言った。イヤまぁ、確かにそうかもしれんが……、何か納得いかねぇなぁ……。
「だけど俺がこの体、『国府宮あかり』になりきるのも無理ゲー過ぎねぇか?俺、44のオッサンだぞ?こんな小さい女の子の気持ちなんて分からないし、今時の小学生の事も全然分からねぇぞ?」
全然知らない赤の他人に、しかも女子小学生になれなんて、難易度高過ぎだろ。この爺さん、頭イカレてんのか?
でもまぁ、脳移植手術なんて出来るんだから、医者としては凄い人なのかもしれないけどさ。
「まぁ、私も『国府宮あかり』の個人情報はほとんど知らん。じゃから、君は
サラッとそう言われた。
う~~~ん……、それで誤魔化せるのだろうか?何か、これから先の事を考えたら頭が痛くなってきた……。
「とにかく、君はもう『国府宮あかり』なんじゃからな?今更元の体には戻せんし、他の体を用意する事も出来ん。一度死んで生まれ変わったと思って、新しい人生を謳歌するが良い」
そう言いながら、牌を並べている。何か、納得いかないけど納得するしかない状況に追い込まれたな……。
俺も牌を並べながら考えたが、マジでこれからどうなっちゃうんだろう……?
「あ、ツモ。
本田宗一として生きていた44年間、色んなヤツと数えきれない程麻雀を打ったが、天和でアガるなんて生まれて初めてだぞ。体が変わって、少しは運が良くなってきたのだろうか……?
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