【無料版】二度目の人生、女子小学生
ひま☆やん
第1話『俺、転生!?』
ある日、病院のベッドで目を覚ましたら、俺は女子小学生になっていた。しかも、とびきり可愛い女子小学生だ。
一体何がどうなって、こうなったんだ!?さっぱり訳が分からない……。
俺は本田宗一44才、独身彼女無し、至って普通のサラリーマン、少々ヲタ趣味を嗜む紳士で人畜無害、数は少ないが友人もいる。
誰かが仕組んだ壮大なドッキリ?イヤイヤ、俺の体は完全に女の子になっているし。何だよこれ?訳が分からない……。
ある週末の夜、俺はバイクで峠を攻めていた。峠を攻めるとは言っても、別に走り屋って訳じゃないし、レーサーを目指している訳でもない。
バイクは16才で免許を取って以来乗り続けているが、ただ単に、最近読んだ漫画の影響で峠を走りたくなっただけの、素人に毛が生えた程度のライダーだ。いい年こいて、何をやっているんだろうなぁ~?
右に左にとコーナーを抜けるのは楽しかったが、タイトなヘアピンにオーバースピードで突っ込んでしまい、制御不能でガードレールに激突!!愛車共々崖下に転落した……のは覚えている。その後の記憶は無いのだが、誰かが救急車を呼んでくれたのだろう。
病院のオペ室で薄っすらと意識を取り戻したものの、全身麻酔を受けたのか、体の感覚は曖昧で、意識もハッキリしない。
俺、このまま死ぬんじゃないのか?良くて身体障碍者コースなんじゃね?そんな事をボンヤリ考えたが、またすぐ意識を失った。
どれだけ眠っていたのか分からないが、次にまた薄っすらと意識を取り戻した時には、知らない人達にベッドを囲まれていた。
そして医者らしき人が、周囲の人達に何か話しているのが聞こえる。
「えぇ、手術は無事に成功しております。私の手術は完璧ですじゃ。今はまだ、ゆっくりと眠らせておあげなさい」
そんな事を言っていた。そうか、手術は成功したんだな……、俺助かったんだな……。そう思ったら、安心してまた眠たくなってきた。
体の感覚も何だか違和感あるが、どうやら五体満足で助かったらしい。俺はまた、深い眠りに入る……。
その後どれぐらい眠っていたのだろう?夜中に目を覚ましてしまったのだが、おかしな事に気が付いた。
あれだけの事故に遭ったというのに、体の痛みは全く無く、激しい頭痛があるって程度だけなのは明らかに変だ。
何か体の違和感があるのだが、何とかベッドの上で起き上がる事も出来た。
それに俺はド近眼なのだが、何故かメガネ無しでも周りがハッキリクッキリと見える。
一体どうなっているんだ?あの医者らしき人物は、手術は完璧だと言っていたが、それにしたってバイク事故の大怪我が魔法の様に治せる訳があるまい。
……何だよこれ?俺の手が、まるで子供みたいに小さい手になっているぞ!?布団を捲ってみると、手だけじゃなく、体全体が子供になっている!?
そうだ、鏡は無いのか?焦りながらサイドテーブルに置かれていた手鏡で自分の顔を見ると、そこには見慣れたオッサン顔の自分ではなく、頭に包帯を巻いた、見た事も無い美少女の顔が映っていた……。
はぁぁぁ〜〜〜!?何これ!?これが俺の顔だって!?
触ってみると、頬っぺたはプニプニと弾力があるし、肌もスベスベしている。
頬っぺたをつねってみたが、普通に痛みを感じる……。
イヤイヤイヤイヤ、ちょっと待て、ちょっと待て、これ現実なのかよ!?夢じゃなくて!?
一体全体何なんだ、これは!?激しく動揺する。そうだ、ナースコールだ!慌てて枕元にある呼び出しボタンを連打する。
早く来い!早く来てくれ!誰でもいいから、この状況を説明してくれ!!
そしてナースと共に現れたのは、例の手術は完璧だと言っていた医者だった。
「おやおや、思ったより早く意識が戻ったようじゃねぇ」
そう言って薄ら笑いを浮かべている。何だか気味が悪い爺さんだ。
「お、俺の体、これ、子供!?女の子!?何で!?」
軽くパニックになって、思わず片言になっちまったが、とにかく情報が欲しい。この爺さんが医者で、俺の体を手術したのなら、何でこんな事になったのか知っている筈だ。
すると爺さん、
「まぁまぁ、落ち着きなさい。混乱するのも分かるが、今説明しよう。君はバイク事故で死にかけたのは覚えているかね?ハッキリ言うと、君の体は治療不可能な状態になっていたんじゃよ。もうグッチャグチャのボロ雑巾状態にな」
……え?イヤイヤ、手術は完璧だったんじゃなかったのか!?だが、俺の疑問には構わず、爺さんは話を続ける。
「唯一無事じゃったのは頭。ヘルメットを被っていたお陰で、君の脳は無事じゃった」
そう言って爺さんは、自分の頭をツンツンと指差してみせた。頭……、脳は無事だった……?
「コリャ良い巡り合わせもあるもんじゃと思ったわい。丁度脳死で植物状態の患者がおったでなぁ。生きている部分を組み合わせて、ハイ一丁上がり!ってなもんじゃよ。ハァッハッハッハッハッ」
爺さんはそう言って、自慢げに不気味な顔で高笑いした……。
……つまり、脳を移植したって事か!?嘘だろぉぉぉ~~~!?
「生きている部分を組み合わせてって、俺の体は!?もう死んじゃったのか!?」
激しく動揺する。頭がガンガン痛い。
「さっき言ったじゃろ。グッチャグチャのボロ雑巾状態になっておったとな。君が麻酔で眠っていた間に、もう火葬されておるじゃろう。君の元の体、つまり本田宗一という人間は死んだ事になっておるよ」
はぁぁぁ~~~!?か、火葬!?お、俺の体、火葬されたのか!?そして、俺は死んだ事になっているだってぇぇぇ~~~!?
「もう済んだ事じゃ。今更どうにも出来んわい。そんな事より、新しい体はどうかね?君は文字通り、生まれ変わったんじゃぞ?」
そう聞かれたが、どうもこうも無い。自分の体が火葬されたと聞いて、ショックの余り放心状態になった。俺、死んだのか……。
幸福な人生を歩んでいたとは言い難いが、そりゃぁ44年生きて来たんだ、自分の体に愛着もあったし、生活環境も人間関係も失うにはデカ過ぎる。それを全て失ったのか……。
すっかり放心状態の俺だが、爺さんは全く意に介さず話を続ける。
「まぁ過去の事は忘れて、新しい自分と向き合うが良い。元の体からグッと若返ったんじゃぞ?性別は変わってしまったがのぅ」
爺さんにそう言われてハッと気付いたが、そうだよ、俺全然知らない女の子になっているじゃないか。
これからは、この体で生きていかなきゃならないって事なのか?この体は、一体どこの誰なんだ?
「さっき脳死で植物状態の患者って言っていたけど、この体はどこの誰なんだ?俺はこれから、この体の……、この女の子として生きていかなきゃならないって事なのか?」
そう聞くと、爺さんは真面目な顔をして、
「そうじゃ。その体は
そう言った。
はぁ……、何というか、とんでもない事態になっちまったなぁ……。バイクで事故って死にかけて、助かったと思ったら女子小学生になっていたとか……。
悪い夢なら覚めて欲しいが、どうやら現実らしい……。マジで俺、これからどうなっちゃうんだ……!?
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