第6話『初登校!』

 昨夜は遅く迄スマホでゲームを遊んでしまい、完全に寝不足になってしまった。何かまだ、眠気が取れないな……。

 だがいよいよ、『国府宮あかり』として学校へ行く訳だ。ランドセル背負うのなんて何年ぶりだろうな?しかも今度は女子小学生として、だからなぁ~。何か緊張してきたぞ。

 とにかく今の俺は9才の女の子、『国府宮あかり』なんだからな。周りのヤツに絶対正体を知られる訳にはいかないし、完璧な演技を求められている訳だ。充分気を付けて行こう。

 しかし……、分かっちゃいたが、このヒラヒラしたスカートの何と頼りない事よ……。脚元スッカスカじゃねぇか……。

 部屋のクローゼットの中は一通り確認したが、ジーンズみたいにラフな洋服は1着も無いんでやんの。

 どれもこれも、ヒラヒラフリフリしたスカートばっかり。金持ちのお嬢様って、みんなこんな服しか着ないのか?

 今日着ていく服に迷っていたら、ママさんがコーディネートしてくれたのだが、まぁ、客観的に見て可愛いのだろうが、ハッキリ言って自分で着るのは落ち着かない。

 『国府宮あかり』として生きていく以上、これは慣れるしかないのだろうなぁ~……。何か気が滅入る……。



 今日は退院後の初登校という事で、学校迄はリムジンで送ってもらった。そのまま教室には行かず、ママさんと一緒に職員室へ。

 パパさんも学校側には伝えていると言っていたが、担任の先生に、ママさんが俺(あかり)の回復具合について改めて説明してくれた。

 事故で負ったケガは既に完治しているのだが、一部記憶喪失になっているという風に。

「そうなんですか~。国府宮さん、大変でしたねぇ~。でも、きっと記憶は戻ると思いますよ~。クラスのみんなと一緒に頑張りましょうねぇ~」

 そう言われたのだが、何かこの先生随分おっとりとしているな。まだ結構若いみたいだし、ちょっと頼りない感じがする。

 まぁ女性としての見た目は好みだが、『国府宮あかり』になってしまった今の俺には、単なる担任の先生でしかない。何か悲しいな……。

 しかし、最近では小学校の先生もネックストラップにIDカードみたいなの入れているんだな。

 まぁ、誰が何先生なのか分かりやすくて良いと思う。 館林たてばやし 小春こはる先生か。覚えておこう。

 職員室を見渡すと、みんな普通にPCを使っているのも何か新鮮だ。俺が小学生の頃は、まだ全然PCが普及していなかったんだよなぁ~。これも時代の流れってヤツか。


 職員室でママさんとは別れて、館林先生と一緒に教室へ向かう。いよいよ俺の、二度目の小学生デビューが迫って来たか……。

 でもまぁ、相手をするのは9才のガキばかりなんだ。こっちもガキになりきってやれば何とかなるだろう。

 俺はもう本田宗一じゃない、9才の『国府宮あかり』なんだ。そう自分に言い聞かせる。

 しつこいぐらいに、心の中で繰り返す。大丈夫だ大丈夫だ、ちゃんと演じればバレやしない。何か頭が痛くなってきたな……。


 教室に入り館林先生から、俺(あかり)の現状について易しく噛み砕いて説明される。

 お前ら、ちょっとは俺に気を遣えよ?俺はお前らの事なんかサッパリ分からないんだからな?

「クラス委員の 甲斐荘かいしょうさん、国府宮さんは色々分からない事があると思いますから、サポートしてあげて下さいね~」

 館林先生にそう言われて、一人の女の子が起立した。

「はい、先生。国府宮さん、退院おめでとうございます。また一緒にお勉強しましょうね」

 そう言って満面の笑みを浮かべた。この子が写真で見たひかりちゃんだな。おさげ髪でメガネをかけた可愛い子だ。

 甲斐荘ひかりって言うのか。休み時間にでも話をしておこう。

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