第5話『煩悶する夜』
夜、食事も終え風呂に入り、自分の部屋に戻って一人になった。パパさんママさんから色んな思い出話を聞いて、『国府宮あかり』の人物像がある程度分かってきたぞ。
そして明日は、いよいよ学校へ行く訳だ。中身は44才の俺が、今更小学校に通う事になるとはなぁ~。
ベッドに寝転んで天井を仰ぐ……。小さくなった自分の手を見る……。部屋を見渡す……。マジでこれ、現実なのかよ……。
とにかく俺は、『国府宮あかり』になっちまったんだ。もう元の生活には戻れないし、体も火葬されちまったんだからしょうがない。
こうなったらやるしかないだろう。女子小学生になりきってやろうじゃないか。
パパさんからもらった、真新しいスマホをいじってみる。元々使っていたものは『あかり』が事故に遭った時に壊れたそうで、データを新品のスマホに移したんだそうだ。
連絡先の登録数はそれ程多くないな……。友達は少ないのか?イヤ、パパさんはひかりちゃんっていう友達がいると言っていたな。うん、連絡先は登録されているぞ。
……思い切って電話してみるか?イヤイヤ、う~~~ん……、何て話せば良いんだろう?普段どんな言葉使いをしていたのか、何を話題にしていたのか、まだ何も分からないからなぁ~。
このひかりちゃんって子と、どの程度仲が良かったのかも分からんし、イキナリ電話するのは無謀かもしれない……。
そうだ、LINEの履歴とか残っていないのか?と思ったが、アプリを起動しても初期画面になるだけで、ログインパスワードも分からない。
それならメールはどうだ?と確認すると、メールボックスは空っぽだった。
……お手上げだな。他に何か手がかりはないものか?机の引き出しやら本棚やら、部屋中探してみたが、パスワードのメモとか日記とかは見つからなかった。
う~~~ん……、俺ちょっと焦り過ぎかなぁ?早く『国府宮あかり』になりきらないといけないって気持ちが強くなってきたけど、別にそれ程急がなくていいのかもしれないなぁ~。
一応、記憶喪失を起こしているって言い訳もある事だし、もっとのんびりして良いのかもしれないよなぁ……。
焦らなくても、明日になれば学校で『あかり』を知る人物には会える訳だし、直接話を聞けば良いんじゃないのだろうか?
よし、今日はもう寝よう。あれこれ考えを巡らせても、分からんものは分からん。何だか考え過ぎて頭が痛くなってきたし、早目に寝るとしよう。
しかし、また小学校に通う事になるとはねぇ~。まぁ、勉強は余裕だろう。全教科百点取れるんじゃないのか?
体育はどうだろう?この体はどの程度運動出来るのだろうか?一応、病み上がりって事になるんだから、そんなに張り切る必要は無いだろう。
やっぱ、一番の問題は人間関係だよなぁ~。俺の演技力で上手く誤魔化せれば良いのだが、これは明日になるまで分からないな。
こうなったら爺さんが言う通り、二度目の人生を楽しもうじゃないか。さぁ、寝よ寝よ……。
…………眠れない。病院では毎日爺さん達と夜遅く迄麻雀を打っていたし、俺元々夜更かしをする事が多かったからなぁ~。スマホを見ると、午後十時前。こんな時間に眠れやしねぇよ。
明日から学校に行くって事もあるし、気分が
ベッドで寝転んだまま、スマホを弄ってみる。これ、スペック的にはゲームも遊べそうだが、何かアプリを落としてみるかな?
あ、そういやぁ俺が遊んでいたゲームのアカウント、そのまま残っているんじゃないのか?早速ストアからアプリをダウンロードしてみる。
俺はあの事故で死んだ事になっている訳だが、住んでいたアパートやら携帯やらは、家族が解約してくれたのだろうか?
だが、SNSのアカウントなんかは家族も知らんだろうし、SNSにサービス連携しているゲームは多分今でも使えるんじゃないのか……?
予想的中!本田宗一時代に使っていたアカウントはそのまま残っていた!これで今迄費やしていた時間と課金が無駄にならずに済んだぞ!
良かった~、何かホッとしたわ。とりあえずデイリーミッション、一通り消化しておこう。
こうして夜は、更けていく……。
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