第四十五話 最悪の状況②

(この場にあるものだけで、どうにかするしかない)


 とはいえ、この場にあるものなんてたかが知れている。

 オズが持っているものと、ミーシャが持っているものを合わせてもせいぜい——。


 護身用のナイフ。

 傷薬や包帯の類。

 鉄製の杖。

 ちょっとした食料。


(これでいったい何ができる?)


 何もできない。

 そんなのわかりきって——。


「っ!」


 と、オズは唐突に思い至る。

 大切なことを忘れていることに。

 それは。


(スキルだ! バカか俺は!?)


 オズにはスキルがある。

 そしてもちろん、ミーシャにも。


 ミーシャは言っていた。

 アリサの病を治すために、ヒール能力をひたすらに高めてきたと。


(でもそれは結局実らなかった)


 ヒール能力では、アリサの病気は治るものではなかったのだ。

 だがしかし。


(例えば俺のスキル『腹パン』で、ミーシャの能力を強化できたらどうだ?)


 理論的には可能なはずだ。

 スキルだって身体能力の一つ。


 であるなら、オズのスキル『腹パン』でミーシャを強化すれば——ミーシャのスキルであるヒールも強化されるに違いない。


 もちろん、それで本当にアリサを治せるかはわからない。

 しかし。


「やってみる価値はある!」

 

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攻撃した敵を強化するクソスキル『腹パン』のせいでパーティー追放された俺、いつのまにか最強サポーターとして超有名になっていたんだが アカバコウヨウ @kouyou21

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