第四十四話 最悪の状況

 結論から言うと、状況は最悪だった。

 オズとミーシャがついた時には、アリサは既に意識不明状態。

 顔は真っ青で息は驚くほどに静か——まるでもうすぐ死んでしまうといった様子だった。


 そして現在。

 オズとミーシャは病室の外——その廊下にいるのだが。


「……」


 と、ミーシャはオズの隣で膝を抱えるように座り、俯いてしまっている。

 無理はない。


 ミーシャにとって、アリサは大切な妹なのだ。

 しかも、オズは知っている——ミーシャが彼女のことをどれほど大切にしているかを。


(にしてもどうする……っ)


 アリサの状況が相当やばいのは、全く知識がないオズにも容易にわかる。

 そうなると。


(ダンジョンを速攻で踏破して、アリサの体を治せるか薬の素材を取る……それがベストなんだろうが)


 不可能だ。

 アリサは正直、今日明日持つか持たないかといった様子。

 とてもではないが、ダンジョン踏破をできる余裕などない。


(目的の階層に行くのに、最短でも一週間はかかる)


 じゃあ、素材をマーケットやオークションで買うのは?

 これも論外だ。


(目的の素材はレアドロップだ。そう簡単に市場に出回るものじゃない)


 そして仮に出回ったとしても、とても買える値段でない可能性が非常に高い。

 かといって、アリサの命を諦めるのは一番論外だ。

 ならば。


(この場にあるものだけで、どうにかするしかない)

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