第25話旅立ち

 僕がヴァレンティンに拘束されている間に、リタとクリスが拐われてしまった。

 早く助けに行きたいのに、何がしたいんだヴァレンティン!!


「ファースト、お前の戦いを見ていた我が兵からの報告によると、魔物と魔物の仲違いのように見えたそうだ。お前は何者だ?魔物の仲間なのではないか?王都を襲わせて、自作自演で手柄をたてて何を企んでいる?リタとクリスは何処にいる?知っているんだろう?」


「あぁヴァレンティン、何もかもが憶測に過ぎない、ただの邪推です」


「ふんっまあそう言うだろうな、お前をこれから大聖堂に連れて行く。そこで神官長にお前の本質を見極めてもらう。口先だけではない中身をな」


 僕は大聖堂に連れていかれた、そこで神官長に引き合わされた。

 神官長は僕からすれば少し歳をとっているように見えるが、一般的に見ればまだ若く美しい女性であった。


「神官長、ファーストを連行してきました。貴方の真実を見抜く目でこやつの本性を暴いてやってください!」


「初めましてファースト、私が神官長です。確かにヴァレンティンの言うように貴方からはとてつもく強大で邪悪なる力が感じ取れます」


「やはり!」


「しかし同時にとてつもなく大きな聖なる力も内包しているようですね」


 ……強大で邪悪なる力はメフィストの魔力だろうけど、聖なる力なんて僕にあるのだろうか?あっ僕が転生の触媒に使ったママの形見のロザリオ、それが僕の中にあるんじゃないのか?それでクリスも神聖魔法が使えるのかも……


「神官長様、邪悪な力と聖なる力両方あるにしても、こやつは邪悪なる力に傾いているようですが!」


「ヴァレンティン、人は誰でも邪悪な気と聖なる気を持ち合わせているものです貴方も例外ではありません。戦いの中で邪悪な力を使ったとしても、今マルガレーテとクリスティーナを心配しているファーストからは聖なる気を感じます」


「ではこやつはお咎めなしで放置するというのですか?この危険人物を!」


「ファーストは期限付きの国外退去処分とさせていただきます」


「国外退去処分!?」


「さすが神官長です。してその期限とは?」


「期限はファーストがマルガレーテとクリスティーナを助け出すまで!それまでこの国に戻ることは許しません」


「それでは無罪放免と変わらないではないですか!!」


「我が国を救ってくれた英雄に、これ以上何を求めると言うのですかヴァレンティン?私の真実を見る目が信じられませんか?」


「神官長がそこまで仰られるなら……衛兵よファーストの拘束を解け!」


「神官長!ありがとうございます!ついでにヴァレンティンも、必ずリタとクリスを取り戻して来ます!」


 こうして僕、不破明日斗は旅立ったのであった。

 リタとクリスを探す旅に。


 右手の指で左手をスワイプすると、スマホが現れる。

 メフィストチャンネルを開いてみると、最初は真っ暗な画面が映し出されたが、映像が移動していき微かな光が見え始めた。

 神聖結界の光のようである。

 さらに画面が光に近づく。

 神聖結界の中で横たわって眠るリタ。

 その横でリタを護るように座り込んでいるクリス。

 とりあえずまだ2人は無事なようである、ほっとする僕。


「待っててくださいねリタ、クリス必ず僕が助けに行きますからそれまでどうか無事でいてください!」



 第1部~完~

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1st〜異世界転生余命半年だった僕が悪魔の力で無双します〜 橘 英樹 @t_hideki

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