第24話悪魔VS悪魔

 人に仇なす者の王は無詠唱で魔法が使えるようであった。

 どうするファースト!!


「考えろ、考えろ僕。詠唱速度の差を何とかしなきゃ、えーっと僕は魔力はあるけど魔法を使うには力のある言葉が必要で……それで詩の一節で魔法を使えるようになったのだけれど……今まで読んできた本ではどうだった?無詠唱……詠唱破棄……短縮詠唱……短縮詠唱!!読んできた小説だと長いから短くても力のある詩、それも詩の一節で魔法が使えたんだから例えば……試してみるしかないか……」


 また無詠唱で王の魔法が飛んでくるが、それをかわしてタイミングを見計らう。


「短縮詠唱【タイトル】」


『ガチョウおばさんの歌!!』


 魔力の矢や、重力波、内部破壊など複数の魔力が1度に王を襲う。王が怯んだ。


「成功だ!!詩の題名でも魔法が使えた!!短い力のある言葉、詠唱速度も上がったけれど威力も増してる!!呪文を詩の一節ではなくタイトルにする事でその詩の全てを魔力を放出する為の魔法に変えられている!!」


「王さまここからが本番ですよ!!喰らえ!!『汚れちまった悲しみに』」


 ここからは王とファーストの魔力と魔力のぶつかり合いであった。


 ☆☆☆


「どうだいモモぉ?ファーストくんは勝ってるかい?遠視の魔法が使える君だけが頼りだよォ」


「あっあら〜あれは……あっ悪魔……」


「おや〜敵は悪魔なのかな?ファーストくん大丈夫だろうかな〜?」


「あっあら〜あ、悪魔が2人……かしら〜」


 モモが地面にへたり込む、座り込んだ地面が水分で変色していく。


「いつも冷静なモモが……しっき……んとはァ、よほど恐ろしい光景を見たようだねェ、ファーストくんキミは一体何者なんだ……」



 ☆☆☆


 ファーストの魔法が徐々に王の体を傷付けはじめた。

 ここぞとばかりに畳み掛ける!!


『惡の華!!』


『悪魔にもマケズ!!』


 強大な魔法の連射に王の体が崩れ始める。

 しかしなお王は崩れた体で動き、無詠唱で魔法を放ち続ける。


「体は魔物であっても魂は悪魔に乗っ取られている、云わばアンデッドの様なものなのかもしれませんね。なら魂ごと悪魔ごと消滅してもらうしかありませんね」


「詩の力に優劣がある訳では無い、僕が魔法を使うためにイメージを膨らませやすい詩、壮大なイメージを抱く詩、キテラ様に禁じられた魔法それを王さまにぶつける!!」


「短縮詠唱【タイトル】」


『神曲-地獄篇-!!」


『神曲-煉獄篇-!!」


『神曲-天国篇-!!」


 とてつもない魔力が王を襲った。


 王の体が消滅していき、中から黒い影の様なものが現れるがその影、悪魔をもファーストの……メフィストの魔力は消滅させた。


「やった!?……んですかね?ははっ体力も魔力も♾のはずなのになんか疲れました」


 その場に倒れ込むファーストだが。


「みんなの所へ帰らなくちゃ、もう心配はない安心してってリタやクリスに報告しなくちゃ……」


 なんとか立ち上がったファーストの体が突然拘束される。


「えっ!?なに?あなた達はヴォルフガング兵!?どういう事ですか!?」


「ファースト!!お前からは邪悪な力が感じ取れるこのまま自由にさせておく訳にはいかなくなった」


「ヴァレンティン義兄さん!?」


 その時王都近くで悲鳴が上がった。


「キャー!!」


「うわぁ〜!!」


 遠くからも見えたそれはワイバーンのようであった。


「まだ生き残りの魔物が居たんですね!ヴァレンティン義兄さん早くこの拘束を解いてください!魔物をやっつけなきゃ!」


「ワイバーンの1匹くらい我が兵たちでもなんとか出来るファースト、お前は大人しくしていろ!ほらもうワイバーンが逃げていくではないか」


 ファーストの超人的な視力が捉えたものは、ワイバーンの脚に捕えられたリタとクリスであった。


「あれは!!離せ!!離してください!!リタとクリスが!!」


「抵抗するのか!?やはり貴様は邪悪なる存在!」


「違うんです!ワイバーンにリタとクリスが拐われた!!」


 押し問答している間にワイバーンは見えなくなるほど遠くへ飛び去ってしまった。


「リタァ!!クリスゥ!!ヴァレンティン義兄さん!!貴方は何がしたいのですか!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る