罪海 しんかい

@usokawatoyu

罪海

俺は死んだ、自殺だ。

兄と兄の元カノに苦しめられ生きるのが辛くなって、家をでて旅をした。死に場所探しの旅。海外なんて行くお金はなかったから日本で一番きれいな場所、いや、日本で一番綺麗な海。

船に乗り病院でもらった精神安定剤と眠剤を大量に飲んで海にダイブして僕は死んだ。

目を開くとそこは深海だった。

おかしい事だらけだ、僕は死ねていない、それに水圧でぺしゃんこにもなってない、おまけに息もできるときた。苦しい、ただただ深海に浮かんで辛い苦しいこの心だけが浮かんでる。

なんでこんなことに、あいつらのせいだ、僕は悪くない、あいつらが僕を……僕だった『物』を壊したんだ悪いのは裏切ったあいつだ……元凶はあいつだ……許さない…………

『もう何もできないのにかい?』声がした方を見るとそこには何か、『黒い何か』が僕に問いかけていた。

沈みゆくこの負の塊をただ見ていた、顔も真っ暗で目なんかついているかもわからないがこちらを見ていることだけはただわかる。

「何もできない……笑わせるな……呪い殺してやる」

『おいおい、いつからオカルトなんか信じるようになった、お前怖いの苦手だろ』

「五月蠅い!オカルトならまさにこの状況だろ、お前は誰だ、なんで…………なんで俺は……生きてる?」

苦しい、なんで苦しいかもわからない、ただ、ただただ苦しいことが苦しい。わけがわからない、それがまた苦しい。

『死んでるよ、お前はとっくの昔に』黒い‶何〟かは寂しげに言った、俺は死ねているらしい。

『てか薬がぶ飲みなんかしなくてもとっくに死んでたよ、心はな…………お前さんヒーローになりたかったんだろ?むかしの親の離婚の時もメンヘラちゃんの自殺の時も、お前は何もできなかったお前は誰も救えない、今回もそうだったんだろ結果関係ないお前が苦しんで二人がお前を苦しめたなんて難くせつけて自殺……お前さんはずいぶんとかってな人間だな」

『そうだ俺はなにも救えない」「五月蠅い!!」『無力で弱い」「五月蠅い!!」『何もできない、無能」「五月蠅い!!ちょっと黙ってくれよ!!」『変われた気になって手お差し伸べておいて自分が潰れてほんと、何がしたいんだ??俺は」「五月蠅い!!五月蠅い!!うるさい!!!!!黙れ,、黙れ黙れ黙れぇ!!!」

『死んで、逃げて、恨んで、お前はなんだ?何を救った?自分1人救えない人間が!何を!誰を!救えるってんだ!!」

そうだ俺は…………

この暗い、暗い深海は俺の罪だ、誰かを救いたくて救えなくて、挙句逃げ出した俺が作った罪の海。

兄は、クズだった。高校三年間付き合っていた女を裏切り、浮気をし彼女の貞操やら金やらを奪い弄び最後は味のしなくなるガム道に吐き捨てように、あっさりと別れを告げた。

俺は兄の彼女を姉のように慕っていた、優しくてかわいい声のその人、いつも俺を弟のように可愛がってくれて気にかけてくれた人。

ある日の昼にかかってきた一件の電話が俺の全てを変えた、事の全てを知った俺は兄にひどく軽蔑し、元カノになったこの人を救いたいと思ったんだ。

『誰も救えないのにか」「そうだよ、今度こそ救えると思ったんだ、周りに褒められ応援され、強くなった気でいた」

結果は散々、から回って人一倍、人二倍悩んで苦しくなって、そのたびあの泣き声が耳に響いて頑張らなくちゃと思って…………

『壊れたんだ、俺は………………俺たちは」

そうなんだろ?おれ。

ずっと助けようとしてくれてたんだよな、俺の事。

どうすれば、何をするのが正解だったんだろうか?

『何もしないのが正解だった、これはお前の手の届かない問題なんだお前にははなからどうすることできん話さ』

「でも、何もできないのは、泣いてる女の子に何もできないのは辛いや」

『それはお前が壊れてもか?』

「そう思えるのかもしれない、僕は……自分のために動くくらいなら泣いて苦しむ人を一人でも多く救いたい、偽善でもいいこれはあの日と今命を捨てた俺の贖罪だよ」

『ひどい自己犠牲だな』

「それが俺だろ?」

『違いない、ならそろそろ行こうか俺たちの救いたい人たちが待ってる。」

『自己犠牲の塊が織り成す悲劇きげきをたのしもうぜ」

目が覚めると、そこはいつもの布団だった、寝汗をぐっしょりとかいていて服が肌に張り付いていた。

『おはよう世界、さぁ物語を始めようか!」



 罪海fin

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