武装JKと◯◯◯

モトノ助

武装JKと学園の怪異。~月岡天音の災難~

 月岡天音は図書委員の仕事をしていた。

 先週、友だちの紹介で付き合ってたT君にフラれた。

 はじめての事で、ショックを受けて一日中家で泣いていた。でも、学校を休むことはなかった。

 むしろ、こうやって図書委員の仕事をすることで、T君のコトを忘れられるんじゃないか?そう思った。


「あ、もうこんな時間だ。……早く帰らないと!」


 天音は図書委員の仕事をやめ、帰宅の準備をする。図書室を出ると校内に生徒の姿はなかった。


『この時間なら、誰かいそうなモノだけど……』


 そう愚痴りながら天音は、足早に昇降口へ向かう。


『確か校門は閉まってるから裏口から出ないと!……それにしても、誰もいないと怖く感じるな~!』


 天音はゾクっと背筋に悪寒を感じる。


『やな予感。そう言えば、朝のニュースで今日は日が悪いって言ってたっけ。』


 外を見ると、朔月だった。……ヤツラが出る条件が揃ってる。


『あ~。だから皆んな帰っちゃたんだ。』


 天音はカバンから通販で買った自動拳銃グロック18Cを取り出してマガジンを差し込み、9ミリ弾を装填する。

 フルオートで毎分1200発。ではコントロールはムリなので、オプションのストックを取り付けて3点バーストにセット。……これなら、コントロール出来る。

 天音は自動拳銃グロック18Cを構え、周囲を警戒する。


「戦闘準備完了!来るなら来い……返り討ちにしてやる!!!」


 天音は、自分を勇気づける様に、虚空に向かって叫んだ。

 すると目の前に黒いヒトガタ――が現れ、これ見よがしに禍々しい爪を誇示する。

 全身が立体感の無い、真っ黒なカラダなのに爪だけが異様な存在ぬめり感――悪意に満ちたカタチ――を示している。天音は躊躇なく引き金を引いた。


 パララ!パララ!


 3点射の銃声が2回、鳴り響くとは黒い粒子となって消えた。


「よしっ!」


 天音はが消滅するのを確認すると、ガッツポーズをする。

 再び自動拳銃グロック18Cを構えながら慎重に昇降口をめざす。

 次々とが邪魔するようにあられる。


パララ!パララ!


『あともう少しなのにぃー!!』


 天音はの爪を躱しながら、素早く引き金を引いた。


パララ!パララ!


パララ!パララ!


 弾丸が命中するたびには消滅していく。


『しつこいィ~』


 天音は、慣れた手つきでマガジンチェンジをしながら愚痴り散らす。


『やっと着いた……けど……え?』


 目の前にが現れた。

 はニヤッと笑う。

 天音はそれを見て鳥肌が立ち、急いで昇降口に行こうとしたが間に合わず、 Tの爪が襲い掛かる。


「うぐっ……」


 の爪によって天音の制服は下着ごと引き裂かれ、白い玉の肌に3本の朱が走る。

 突然、がボソボソっとしゃべりだした。


「なんで逃げるの?――僕に殺させてよ。……だから、陰キャはダメなんだ。空気が読めないから……。」


プッツン!


 天音のナニかがキレた。


「ふ・ざ・け・ん・な~!!」


 天音は、自動拳銃グロック18Cをフルオートに切り替えると、T君に叩き込みながら絶叫する。


バララッバララッバラララッ!!


「なにが、空気読めだ!。なにが、フィーリングが合わないだ!。挙げ句の果てはヤリ捨てに限るだ!」


「最後は言ってないよ?」


 がツッコミをいれた。


「だ・ま・れ!」


 天音は全弾をT君に叩き込む。それでも怒りの収まらない天音は、マガジンチェンジして追い打ちをかける。


バララッラララララッ!!


 スライド・ストップに天音は気づかず、トリガーを引き続ける。

 に化けたが、黒い粒子になって消えて、正気に戻った天音はトリガーから指を離す。


「ざまぁみろ!」


 天音はの後に残った数多の弾痕を見て、スッキリしたのか清々しい笑顔になっていた。


 しかし、天音災難はまだ続いた。


「うそ!」


  いつの間にかの群れが昇降口を塞いでいたのだ。……その数12体。

  天音は慌ててカバンから予備マガジンを取り出そうをするが、1個もない!!


『さっきで全部使いきっちゃた///。』


 天音最大のピンチだ!


 その時、背後に殺気を感じた天音は、反射的に頭を抱えて伏せる。

 すると頭上に一陣の風が通り抜けた。


 ザシュッシュ!!


 昇降口を塞いでいたの群れが一瞬で消滅する。

 天音は後ろをみると、そこには業物の小太刀を構えた、妙齢の美女が仁王立ちしていた。


「お姉ちゃん!」


「お姉ちゃん!じゃなくて、月岡先生。」


「はい。すみません――じゃなくて!技を出すときは、いつも教えてって言ってるじゃん。」


 天音は姉であり、クラス担任でもある月岡朱音(2×歳)に抗議の声を上げる。


「月岡の者がこの程度の斬撃を躱せないとは云わせません!」


 学園最強と謳われる朱音は、愛刀『明王吉光』を鞘に戻しながら平然と言い放つ。


『お姉ちゃんはいつも無茶をいう……。だから、彼氏に逃げられるんだ。』


 天音は朱音に聞こえないように呟くが、朱音にっと睨まれて首をすくめる

 

「……しつこいですね。」


 天音は剣呑な空気を感じて、朱音が注視する方向をみて息をのむ。


「T君!?。死んでなかったの??」


 天音と朱音の眼前に黒い粒子が集まりを形作っていたのだ。


 朱音はを恐れることなく睨みつけると、腰を落とし居合の構えを取る。


「ズッ、ズー、ハーッ!」


「ズッ、ズー、ハーッ!」


 朱音の口から、独特の呼吸音が聞こえる。


『あっ、お姉ちゃん。本気出した……。』


 天音は巻き込まれないように、朱音の後ろに隠れた。


―― 無手勝流奥義『滅殺』――

 飛鳥の世より月岡家に伝わる『破邪の技』は、文字通り邪なる存在を滅するとされるが、……しかし『滅殺』の使い手は創始以来5人しかおらず、天才剣士『朱音』は小学3年生の時に会得し、歴史上最年少で免許皆伝を許されたのである。


 朱音の呼吸音と共に、空気が張り詰めていくのを天音は感じた。


「っしゃぁ!」


 朱音の裂ぱくの気合が剣風となって、張り詰めた空気を次元ごと切り裂きを襲った。


 スパッ!!!


 何とも言えない爽快な音と共には黒い粒子となって散っていった。

 朱音は残身で呼吸を整えると、『明王吉光』を鞘に戻して天音を見る。


「帰りますよ。」


 朱音は短く伝えるとそのまま校門に歩いていく、やや遅れて天音もお姉ちゃんの後をついていく。


『あ、明日の制服どうしよう……。』


 天音は、ボロボロになった制服に気付き途方に暮れる。


 今日は天音にとって最悪の一日となった。

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