今日しかない生き方をしたとき、最初に何が見えるだろう

教訓めいたファンタジーである。
思春期の人たちのみならず、大人も充分味わえる作品。

恨みを抱く気持ちはわからなくはない。
だが、向けるべきは「病気はすっかり治ってしまうが、もう死ぬことはできない」と希望をすすめてきた医者にだと思われる。
「とくべつな処理」をすれば、人魚の呪いにかからず、長寿の薬として効果があるらしい。
曾祖母の妹が食べた人魚の肉に、どうして「とくべつな処理」は施されていなかったのだろうか。
人魚の「現在の性に別れを告げ、次の生へつなぐはじめの歌を」聞いたことで、主人公も生まれ変わったのだと推測する。

生まれ変わるとき、毒に包まれるのが面白い。
善悪や裏も表も知りつくし、毒さえ飲み干さなければ大人にはなれないことを暗示しているやもしれない。