跋
いろいろな話をした昨日の今日で、古川は墓に顔を出した。月命日にも来ていたのだが、やっぱり会いたくなってしまったのだ。
「かなちゃん、お願いがあるんだけど……」
いつものように掃除をし、手を合わせたあとでのおずおずとした日菜乃の申し出に、古川は「どうした?」と問うた。
「お母さんのお墓、かなちゃんのお墓の端に作りたいんだけど……、いいかな?」
「もちろん俺はいいけど、そこは住職さんに聞いてみないと解らないな」
【あやかし】を引き連れて住職に挨拶をする傍ら、了解を得た日菜乃は小さな木の枝を拾って土に挿した。とても簡易であるのだが、母の墓を作れなかった日菜乃にとっては十分である。要は、弔う気持ちが大切なのだ。数秒間の沈黙のあと、彼女は「よし、帰ろう!」と立ち上がる。
「お母さんに報告したよ。――わたしは大丈夫だよって」
「届いているといいな」
「届いていることだろうよ」
「そうだろうな」
古川の言葉に同意した言葉を紡いだ【あやかし】たちに、「今日はなにが食べたいんだ?」と訪ねる。
「ちらし寿司! おいしかったからまた食べたいっ」
「ありがとう。日咲に雅盛は、それでいいか?」
「稚児が作るのならなんでもこいだ!」
「おう」と答える古川の手を取りながら、【あやかし】たちは笑みをこぼす。
寒空のしたでも、元気よくはしゃぎながら。
(終わり)
【 あとがき 】
最後までお付き合いありがとうございました。
感想や評価をいただけると嬉しいです。
また、連載中のブックマークや評価は大変励みになりましたので、この場を借りてお礼申し上げます。
▼ 以下捕捉です ▼
【 第二幕の補足 】
友達の猫イコール友猫。造語です
【 第三幕の補足 】
[こう【恋う】の意味]
特定の異性に心ひかれて、その人を思い慕う。また、特別な人物や場所などを強く慕う。恋する。
(goo国語辞書より)
◆ 執筆時期 ◆
執筆開始 : 2015.10.04 - 執筆終了 : 2018.04.04
※あとがきも小説家になろうからの再掲になります。
小説家になろうでは完結設定にしているのでこちらでも完結設定にしますが、第2幕、第3幕はぼんやりとした形があったりします。書き上がるかは未定なのですが…
花野町八丁目の拝み屋 白千ロク @kuro_bun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます