私があなたを見つけたから!!
「――おい、お前、そんなに車道に出ると危ないぞ!!」
「……なんて、驚いたかな?」
「でも駄目だよ。そんなに車道にはみ出て、辺りを見回して、万が一にでも車に轢かれたら、萌衣……」
「お兄ちゃんに逢うためにはるばる……」
「
「……あれっ、笑わないんだ? せっかく階層移動の
「……」
「駄目だよ」
「なんでお兄ちゃんが先に泣くの」
「……それだと萌衣まで泣いちゃうよ」
「ふふっ、何だかあべこべだね。初めて会ったこの場所で泣いていたのは私だったのに」
『危なかったな、もう大丈夫だから泣くなよ。いつまでも泣くやつは好きじゃないから』
「そう言ってくれたお兄ちゃんが今回は泣くなんて……」
「……」
「はい!! 涙を拭いて。ハンカチだけじゃないよ、包みを開けてみて」
「お兄ちゃんのサイズに合うといいな」
「私のハンドメイド。セーターとマフラーだよ。お兄ちゃんの階層も冷え込むから、良かったら使って」
「ああっ!? 今すぐ着なくてもいいよぉ!! えっ、萌衣が作ったセーターを、すぐに着てみたいって……」
「……お兄ちゃん、恥ずかしいよ、周りの人が見てるから。それでなくても今日は、街に人が溢れてるんだから」
「みんなに見せつけてやろうって!? お兄ちゃん、悪乗りしすぎだよ。馬鹿なカップルみたい」
「ええっ、お兄ちゃん!? か、顔が近すぎ!! あっ、何だ、マフラーを萌衣の肩に掛けてくれたんだね」
「……ありがとう、自分で言うのも何だけどこのマフラーあたたかいね。二人分で、ちょうどいい長さだ」
「お兄ちゃんのぬくもりを感じるのは何年ぶりかな……」
「記念すべき第一歩が、私の誕生日と同じ日なんて!!」
「あれっ!? お兄ちゃんは知らないの、今日が何の日か」
「萌衣の誕生日は知っていて当たり前だよ!!」
「信じられない!? 国連の担当者さん、本当にサプライズで内緒にしていてくれたんだ……」
「どうやってこっちの階層に来ることが出来たのかって」
「それは階層をかける……」
「もうっ!! いつもの茶番劇をやっている場合じゃないの」
「ええっ!! VRレターも何本かは届いていたんだ。じゃあ、ある程度は知っているね」
「順番に説明をするけど、私は階層の高校生平和大使になれたの。部活もその
「この場所に来られたのは、階層間の和平交渉の為なんだ。その記念すべき日」
「二人の思い出の場所に」
「お兄ちゃんがこの場所に来たということは……」
「私の手紙、ちゃんと届いたんだ!! 信じていたけど本当に嬉しいよ」
「……今度は私が泣いてもいいよね。もう涙はやめるって約束したけど」
「これは嬉し泣きだから」
「ねえ、お兄ちゃん、あの懐中時計持ってきた?」
「そう、それだ、凄いよ。奇跡は本当に起こったんだ!!」
「ちゃんと動くかな、お兄ちゃん
「ちょっと借りるね。うん!! 大丈夫だ、針は動いている。あれっ!? でもお兄ちゃん、蓋は開けてないって言ってたよね」
「……不思議だ、やっぱり魔法みたい」
「蓋の内側に貼ってあったはずの女性の写真が消えてる!! あの映画と同じだ。百年前の名も知れぬ恋人たちが奇跡を起こす手伝いをしてくれたんだ……」
「……ありがとう、私に勇気を与えてくれて」
「萌衣ね、絶対にやりたいことがあったの。だけど、それは将来のために残しておいていい?」
「青色のミュージックプレーヤーのことが、何で分かるの!?」
「萌衣に関する試験があったら楽勝で合格出来る自信があるって!?」
「……嬉しいな、そんなことまで覚えていてくれたんだ」
「お兄ちゃんに逢えたら一緒に聴きたかったけど、それはもう少し未来にする」
「お兄ちゃんとの結婚式で流すんだ。妄想の話じゃないよ。私の友達やお兄ちゃんの友達も大勢呼んで親友の真奈ちゃんが友人代表なの」
「平和な結婚式の出来るそんな争いのない未来で、この青色のミュージックプレーヤーから流れる曲は……」
「そう、ごくありふれたラブソング」
「だけど輝きを放つ、何千年前からも変わらない想い」
「やっと届いたよ!! 私のこの想い……」
「……もう、お兄ちゃんって呼ばない」
「萌衣は、あなたのことが大好き!!」
【Continue to the future】
あなたと私の近くて遠い恋の距離感……。この想いは届きますか?「G’sこえけん」音声化短編コンテスト作品 kazuchi @kazuchi
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