第10話

 残った人間で城門の防衛している。幸い魔物たちはあいかわらず砦を無視して通り過ぎていく。

 あるいは砦を脱出した人間たちを追いかけているのかもしれない。とにかくしばらくは安全だ。


「秘密の脱出ルートがあるんだ、一口のるかい?」

 砦に唯一人残った兵士がそういった。

 

 俺のとなりにいたレインは疑わしそうな目を向ける。

「そんなものがあるの?」

「もちろんさ、そうでなければここに残ったりしねぇよ。俺たちを助けてくれた聖女様を死なせるわけにはいかねぇからな。まかしてくれ」

 

 兵士の話では川に面した絶壁に秘密の降り口があり、そこに船がいくつか繋がれているらしい。

 砦に残った人数ならなんとか全員乗り込むことができる。


「なんで砦の指揮官たちはこれを使わなかったんだ?」

「知らなかったのさ。やつらここにきたばかりだったからな。俺たちもわざわざ教えてやる義理もないさ」

 兵士は面白そうに笑った。




 俺たちは無事砦の脱出に成功し、村へ帰り着いた。

 村は幸い無事だった。運良く魔物がそれてくれたらしい。


 村に逃げ延びてきた人の話を聞くと、どうやら王都は陥落をまぬがれたらしい。

 一人残った第一王子が防衛を指揮して魔物を退けたようだ。その後の魔物の討伐も順調だという。

 

 ちなみに王と第二王子は、王都を見捨てて脱出したところを魔物に襲われて死んだらしい。

 自業自得でいい気味だ。


 聖女レインは王国を守るため砦で命を落としたとされているらしい。

 レインのことを美談にして、魔物の氾濫でダメージを追った国をまとめようとする思惑が透けて見えるが、それはそれで好都合だ。

 聖女レインは死んだのだ、たとえ村にそっくりな人間がいようともそれは別人である。



 俺たちは約束通り村で結婚式をあげた。神官様や村のみんなは心から祝ってくれた。


 村に帰ってきて1年以上たったある日、レインは女の子を産んだ。もちろん俺の子だ。

 この子にはレインの治癒の力は受け継がれずごく普通の子供だった。そのことにレインはものすごく喜んだ。

 

 俺たちはこの村でゆっくりと暮らしていくのだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

以上で完結です。


お読みいただきありがとうございます。


よろしければ次回作でお会いいたしましょう。(`・ω・´)ゞ

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死んだ聖女と幼馴染の物語 三又 @sansaga

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