今日よりも、昨日よりも

こと。

第1話

「やあやあ! わたしは三木川加奈。こっちが弟の三木川哲之だよ!」

「姉さんうるさい、静かにし……ってあー! 死んだんだけど!…………で、何。」


 弟はゲームを放り投げると、冷たい目でわたしに言う。ええー


 今紹介した弟は、ゲームが趣味の小学6年生。双子の弟である。誕生日にゲームを買ってもらってからはいつもこんな感じで、帰宅するとゲームばかりやっている。最近、話しかけてもすぐ拗ねるんだよね。ツンデレかな


 そんなわたしは、おしゃれ大好き小学6年生! ピンクでフリフリのワンピース着て歩いてたら、「真のロリータファッション」って言われたよ。どういう意味だろ? 


 まあそんなことより。ついさっき大事件が起きたんだ。

 巷で話題のGが、ついに我が家に現れたらしい。こうなったら、駆逐するしかない!


「てつ! 母さんがGが出たって言って、部屋に籠ってるんだ。狩りに行こうよ!」

「ええ……めんどくさい。そもそもゴキブリって、汚いんじゃないの?」

「いいからいいから、行くよ!」


 わたしは弟を引っ張って台所に連れて行くと、ハエ叩きを持たせた。どうやらGは、台所の壁に貼り付いているらしい。


「てつ、奴は台所の壁にいるとの報告があった。直ちに探し出して、駆逐せよ!」

「ゲームやりたいんだけど」


 二人で手分けして探していると、ダンッ! という音が聞こえた。


「弟、何があった!?」

「……そのキャラいつまで続けるの? 今、ゴキブリを発見して叩いたんだけど、逃げられた」


 弟の視線を追っても、そこには何もいない。奴は既に去った後のようだ。


 それからしばらく探しても、ゴキブリが見つかることはなかった。それを母に話すと、よくやった! とばかりに二人とも頭を撫でられた。背が縮むんだけど……


「ぎゃーーー!!」


 数分後、トイレから母の悲鳴が聞こえる。どうやったのか、奴はトイレに侵入していたようだ。


 母が去り、二人でトイレの扉を開くとそこには何も見当たらない。


「そういえば姉さん、ゴキブリが一匹見つかると100匹はいるって話……聞いたことある?」

「うん。繁殖力がすごいからだってね。ということは……」


 二人は顔を青ざめさせ、トイレに視線が引き寄せられた。


『今日よりも、昨日よりも……』


——闘いはまだ、始まったばかりだ

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今日よりも、昨日よりも こと。 @sirokikoto

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