(The missing fragment of time)

 ——いいかい、ルナ。


 大きくて温かい手が、肩に触れた。

 私の隣に膝をついて空を遠くを指さすその先を、ただぼんやりと瞳に映す。

 

 ——この空は紅碧べにみどり。向こうに見える木々は常盤ときわ。鴨の泳ぐ水面は秘色ひそく。ルナの髪は亜麻色。どれも……ルナみたいに優しい色だ。


「でもお人形みたいな碧い目じゃないよ」


 ごく自然にそう言うと、悲しそうに目を細めて私を抱きしめた。


 ——ルナの瞳は琥珀色。夕暮れの太陽が雲に染み込んだお花の蜜。瑠璃色の夜を照らす光。積み重ねた大切な時の色。ルナの大好きな、甘い甘い飴の色だ。——You are my treasure. I love you.


 肩越しに見る世界が瞬く間に色づいた。


 お人形のような金髪と碧い瞳。

 馬鹿みたいにそればかり繰り返していたあの女が。

 そうでなければ価値がないと信じていた自分自身が。


 酷く滑稽に思われた。

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フラグメント 日比 樹 @hibikitsuki

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