第4話 問題と対策


 へー、格闘技って、意外に面白いわね。


 自分の力だけで投げるのではなくて、相手のバランスを崩して、自分の力が少なくても投げられるように工夫されているのね。


 技も、色々、有るみたいだわ。


 ふーん。


 じゃあ、もっと、色々覚えたら、組んだ時とかのシチュエーションで、使う技も変えていったら、有利に戦えるってことなのかしら。




 それにしても、シュレったら、下手くそね。


 全く、崩せてないわ。


 まぁ、魔法職なのだから、筋力なんて、杖を持つ程度だけだろうから、腕とか胸とかを持って、相手の上半身を動かして重心を移動させられてないわ。


 ふーん、上半身の力っていうか、筋力が無いのか。


 ああ、そうよね、私は、弓を使うから、弦を引く時の筋力が強いのか。


 そうね、私の二の腕、そういえば、シュレの二の腕と太さが、全然違うし、それに、シュレの胸板って、本当に薄いわね。


 ん、あ、私、前後に太いのか。


 隣に並んでも、胸まわりは、横に広くは無いけど、横から見たら、私もだけど、アリーシャも、あの身長にしたら、厚いわね。


 あれが、格闘技には、必要な筋力なのかしら。




 あれ、アリーシャ。


 うん、お腹に力を入れればいいのね。


 でも、肩や腕には、力は入れないで、お腹をギュッと力を入れるのか。


 その状態で、シュレが、投げる。


 ん?


 あら、シュレったら、私の体を崩せないでいる。


 これだと、シュレは、私を担ぐ事ができないわ。


 仕方が無いわ、ちょっと、引っ張られてあげようかしら、そうじゃないと、シュレの練習にならないだろうしね。


 うん。 シュレも投げる事ができたわ。


 ……。


 あれ、アリーシャったら、なんで、そんな目で私を見るの? 私、何かしたのかしら?


 ……。


 ああ、負荷をかけないと、シュレの筋力が付かないから、その対策だったのね。


 なるほど、……。


 え、でも、なんで、アリーシャったら、そんな事まで理解できちゃうのよ。


 あんた、何者なのよ。




 いずれにしても、格闘技は、初動動作で相手を崩せないと、技は決まらないのね。


 なんだか、シュレに悪いような気がするぅ〜って、ちょっと、なんで、ジュネスが、横にいるのよ。


 シュレの事を気にしていたら、ジュネスが来ていることに気が付かなかったわ。


 ジュネスったら、シュレの様子をジーッと見ている。


 あ、ん、何かしたかって?


「アリーシャに言われて、お腹に力を入れているだけ、肩と腕は、シュレの思うがままにさせているだけよ」


 うわー、私、何だか、格闘技の解説をしているわ。


 へへ、何だか、できる女みたい。


 ん、って、ジュネスったら、もう、アリーシャと、話し始めたわ。


 何よ、私には、一言聞いただけなの、……、もう少し、話をしてくれてもいいのに。


 あー、そうよね、お腹に力を入れるって事も、アリーシャが言ったことだから、ジュネスったら、その理由を聞いているのか。


 えっ! あっ! 投げられてしまった。


 ……。


 シュレったら、頭の上で、私を見下ろしている。


 しかも、目がニヤけているし、口元が少し吊り上がっているわ。


 あー、何だか、してやった感を感じるわ、ちょっと、面白くないかも。


 そうよ、今のは、ジュネスが気になったから、油断したのよ。


 だから、投げられたのよ。


 そうよね、それだけよね。


 でも、ここからは、ジュネスも見ているから、簡単には、投げられないわよ。


 えっ!


 あれ、どういう事? 簡単に投げられてしまったわ。


 あー、また、シュレったら、愉悦に満ちた顔をしているわ。


 でも、なんでなの?


 まぁ、いいわ。


 でも、また、今まで通り、お腹に力を入れ〜〜〜って、えっ!


 あ、ジュネスとアリーシャったら、シュレに声をかけている。


 えっ! シュレったら、コツを掴んだの?


 シュレったら、何? 偉そうに突っ立っている。


 あー、シュレも、格闘技のコツを掴んだって事なのね。


 ふーん、……?


 あれ、アリーシャでしょ、それにシュレでしょ。


 ……。


 何、格闘技のコツを掴んで無いのは、私だけ?


「ちょっと、シュレ。 今度は私が投げる番よ。 さっき、アリーシャに言われたように、お腹にだけ、力を入れて、受けてね」


 ふん! 私だって、シュレ位にできるわよ。


 ……。


 ちょっと、力の入れ方を失敗したみたいだわ。


 うん、それだけよ。


 だから、気を取り直して、もう一度、……。


 ふぬん、ぬん、ぬぁー、あああ、ふんぎゃーぁあ、ああ。


 な、なん、なんで、なのよ。


 なんで、シュレを投げれないの?


 どういう事なのよ。


 まっ! 何よ、シュレったら、また、その愉悦に満ちた顔は! なんなのよ!


 あれ、私にはできないのかって、言っているみたい!


 キーッ! 悔し〜ぃ! なんで、シュレに出来て、私に出来ないのよ!


 え! シュレ!


 なんなのよ。


 私が、シュレの技を受けている時、何も考えてなかったから、投げられないぃ〜っ!


 お腹に力を入れてたわよって、それは、アリーシャに言われて、やった事だわ。


 ……。


 あ、そうね、それだけだったわ。


 私、シュレが、どんな風に、私の体を崩していたかなんて、考えてなかったわ。


 あー、そうなのか、受ける時にも相手の動きを観察していたら、それを参考にできたって事なのね。


 ちょっと、ショックだわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る