第5話 投げ技のコツの掴めないアンジュと登り綱


 うぅぅ、な、何よ。


 結局、私だけ、相手のお腹に力を入れられたら、担いで投げることができないって事なの、何だか、癪だけど、……。


「ご、ごめん、ハァハァ、……、シュレ。 ハァハァ、……。 ちょっと、ハァ……、休 憩、……、させて」


 うーっ、ちょっと、……、全然、シュレの事、投げれなくなってしまったわ。


 どう言う事なのよぉ。


 あーっ、シュレったら、何で、そんな勝ち誇った顔をするの!


 本当に、ひどい。


 あ、シュレも、ジュネスの方に行った。


 ジュネスと何か話している。


 って、シュレったら、何か、解説している。


 ちょっと、何で、私には教えてくれないのよ。


 いいわ、その話、全部聞いて、私も、格闘技の原理を掴んでやるわ。




 何々、まず、腕を引っ張ることで、重心を前にするのね。


 ああ、理想は、つま先に重心を置くので、踵が上がる程度がいいのか。


 それで、反対の腕で、体を横にずらして、重心を片方にずらすのね。


 ああ、体を捻って背中に乗せるようにした時、引っ張った片方の腕の方の足に、重心が掛かるようにした方が、投げるのは楽になるのか。


 ふーん、大きな車輪に体を乗せてるように、車輪は自分って事なのね。


 想定された車輪の上に相手が乗っかっているから、車輪が回れば、車輪に乗った相手は、その車輪と一緒に回って、床に叩きつけられるって事なのね。


 面白い理屈だけど、何となく理解はできたかしら。




 あら、シュレったら、その時に必要な筋肉について解説しているわ。


 ああ、引き付ける力が必要なのね。


 それを強くするなら、……、え! 嘘でしょ。 そんな事をするの?


 じ、自分の体を、腕だけで引き上げるの?


 ロープのようなものを、腕だけで、登ればいい?


 う、嘘でしょ! そんな事できるの?


 って、ロープなんて、どこにも無いじゃないのよ。


 あ、ジュネスったら、今の話を聞いて、教官の方に行ったわ。


 ジュネスったら、教官に説明しているけど、あの様子だと、何だか、教官ったら、納得しているっぽいけど、……。


 何をする気なのかしら?


 そういえば、ジュネスは、人を投げるコツって、……。


 ああ、シュレとか、アリーシャとかと話しているのだから、ジュネスも原理を理解しているって事なら、教官との会話は、……、その訓練方法ということなのかしら。


 うーん、ジュネスが、教官と何を話していたのか知らないけど、ジュネスの課題は、まず、あのヒョロっとした体よね。


 身長180cm前後だろうけど、本当に細いわ。


 あれは、無いわね。


 きっと、体重60kg、あるかどうかよ。


 ヒョロヒョロの体を何とかしないと、格闘技なんて、まともに戦えないでしょ。


 ヤレヤレね。




 全くもう、ジュネスったら、休み時間に何だというのよ。


 格闘技室に、何の用事だっていうのよ。


 食堂は、混むから早めに行かないと、席が取れないでしょ。


 あ、あらー、格闘技室にロープが、天井から降りているわ。


 あっ! 教官だわ。


 へっ! あのロープって、最初の授業の時にジュネスが、教官に言っていたのは、この事だったのね。


 天井から、ロープを吊るして欲しいって事だったのね。


 ふーん、それにロープも太くて、天井まで、10m位あるわね。


 直径5cm位かしら、あれだと、……、ああ、握るのに丁度良い太さなのね。


 それを、のぼるのね。


 ああ、早速、ジュネスが登り始めたわ。


 そうよね、足で、ロープを抑えてじゃないと登れないわね。


 でも、登っているわ。


 あら、アリーシャと何か話している。


 え、嘘でしょ、腕だけで登る?


 そんなの無理でぇ〜って、アリーシャったら、ロープに手をかけたわ。


 ま、まさか、登る気なの?


 えーっ! 嘘でしょ! アリーシャったら、腕だけで登っている。


 何なの、あのスピードで、何で登れるのよ!


 ん、あ、アリーシャは、身長130cmだからなの?


 それともウサギ系の亜人だからなの?


 あれだけ、小さいから、腕で、支える力も少なくて済むって事なの?


 だからって、ちょっと、信じられないわ。


 あ、今度は、レオンが、……。


 うん、そうよね。


 足を使わないと登れないわよね。


 少し安心したわ。


 今度は、シュレが、って、おい、無理でしょ、……。


 あ〜ぁ、ほら、腕が伸びてきたわ。


 それで、落ちるのよ。


 ほーら、シュレったら、床に落ちて、尻餅ついているわ。


 でも、50cm位の高さからなら、痛くもないわよね。


 何? 今度は、カミュー?


 ああ、何とか、足を使って登っているけど、半分までね。


 あんなもんよね。


 全く、みんな面倒な事ばかり考えるわ。


 ……。


 え、何?


 何で、みんな、私を見るのよ。


 わ、わた、私も、登るの?


 聞いてないわよ。


 言ってないって、何でよ。


 え、ああ、私に教えたら、絶対に来ないだろうからって、だからって、……、え、何?


 ああ、何で、みんなで回り込むのよ。


 それじゃあ、逃げられないじゃないの。


 って、それが目的なの? あ、予算の関係で、1パーティー以上が、必要としないと、予算が降りなかったのね。


 って、事は、私も、これを登らなきゃいけないって事なのぉ。


 あああ、厄日だ。

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