第3話 格闘技を練習する女子3人


 ジュネスったら、今の教官の話を食い入るように見てたわ。


 2人とも、立ち上がったから、とりあえず、ジュネスとレオンも、なんとか動ける程度まで、回復したみたいね。


 さっき、レオンと何か話していたみたいだけど、どうも、今の教官の話の内容を実践するみたいね。


 相手を投げるための方法よね。


 確か、崩しとかって言ってたあれよね。


 殴った時の体重移動だったかしら、前に出た足に乗せた体重の重心を前に移動させるから、殴ってきた腕を、更に、引くと、重心が、つま先より先の方になるから、それで相手を投げるとかって、あっ、ジュネスったら、レオンを、そのまま、投げつけたわ。


 レオンが、何か言っているわ。


 それに、ジュネスが謝っているから、きっと、レオンが、投げられるとは思ってなかったから、クレームをつけているのね。


 全く、男って奴は、雑なんだから! 行動する前に、事前打ち合わせをしていたら、そんなことにはならないでしょ。


 もう少し上手くやりなさいよ!




 あ、アリーシャが、目の前で、私を見上げているわ。


 ちょっと、ジュネス達の方を見ていたら、視界に入らなかったわって、これを言ったら、アリーシャ、絶対、怒るわよね。


 ……。


 えっ! 何? 付き合う? どういう事?


 ……。


 ああ、教官の言っていたこと、そう、人を投げる時の、体の崩しの事か、教官の説明の事を、2人でやろうというのね。


 確かに、格闘技なのだから、相手がいないとよく分からないので、相手が必要だけど、アリーシャは、130cmしか無いし、私は、162cmだから、身長差32cmって、……、この身長差って、格闘技では、大きすぎるんじゃないのかしら?


 ん? あ! そうか、アリーシャと同じ位の身長の生徒なんて居なかったわ。


 だから、私に声をかけてきたのか。


 それは、分かるけど、でも、身長差がありすぎなんじゃないの?


 ん?


 あ、右腕を持った、……、うん、うん、そうそう、そうやって、引っ張って、右足のつま先の方に重心を置くのよね。


 さすが、アリーシャだわ、教官の言った事を、忠実に再現しているわ。


 うん、うん、なるほど、腕を引いたりして、私の重心を移動させているのね。


 すごい、あれだけの説明で、倒すための重心位置の移動について理解してしまったみたい。


 あ、今度は、右手で胸を掴んだわ。


 左手は、私の腕を掴んで、前に引っ張るのよね。


 そうそう、それで、私の右足に重心が移動し、てぇ〜〜〜っ。


 えっ!


 なんで、アリーシャの顔が、私の上に? なんだか、フワーっとしたと思ったら、……、え? 天井よね。


 アリーシャが、頭の上に、立っている?


 って、え! 私、アリーシャに投げられたの?


 アリーシャが、私を心配そうにみているわ。


 ……。


 ど、どういうことなのよ! 30cm以上の身長差があるのに、なんで私が投げられているのよ!


 あ、シュレだ。


 2人が、手を出してきた。


 ありがとう。


 遠慮なく、引っ張り上げてもらおうかしら。


 しかし、驚いたわ。


 あの教官の話って、理に叶っていたって事ね。


 30cm位の身長差なら、教官の言った通りにしたら、簡単に投げられるって事なのね。


 でも、何の役に立つのかしら? 


 あ、シュレとアリーシャが、何か話している。


 アリーシャ、私を投げ飛ばせるなら、シュレも投げ飛ばせるわよね。


 シュレなら、私より少し小さいって言っても、ほとんど変わらないから、身長差30cmってところよ。


 だったら、シュレだって、平気で投げ飛ばせるわ。


 ん? あ、アリーシャの後ろにシュレが立った。


 今、2人で何か話していたみたいだけど、……、あ、シュレが、肩から腕を回してぇ〜っ、な、何? アリーシャの、む、胸を掴んだ。


 あっ! あら〜〜〜! 投げられた。


 なるほど、アリーシャとの身長差なら、肩から腕を回されて、胸を掴まれることもあるのか。


 まあ、他の国には、亜人奴隷を認めている国も有るっていうから、誘拐されるってこともあるのか。


 だったら、格闘技も、捨てたものじゃないってことなのね。


 あ、そうか、私もエルフだから、誘拐の可能性があるのか。


 だったら、私にも格闘技は、必要なのか。


 でも、アリーシャって、なんだか、器用なのね。


 説明を聞いただけで、直ぐに実践できているなんて、ちょっと、驚いたわ。


 じゃあ、私も、一緒に混ざって、格闘技の練習をするか。




 えっ! 私とシュレで投げ方を練習するの?


 アリーシャったら、私の事、さっき投げたのに、今度は、投げられるのが嫌だから、シュレと組めって事なの?


 えっ! 違う?


 今の技だと、身長が高い人が低い人を投げるのは、不向き?


 えっ! どういうこと? ……。


 ああ、人を投げるって、人を担ぐことになるって事なのか。


 なるほど、それだと、身長が低い方が有利なのか。


 私たちが、アリーシャの低い身長に合わせるように、膝を曲げないと、担ぐ事ができないから、私とシュレなら、身長差もほとんど無いから、技のコツを掴みやすいって事なのね。


 それで、私とシュレで、お互いに投げてみるといいって事なのね。


 アリーシャって、何で、そんなことまで分かっているのかしら、ちょっと、不思議な人だわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る