第7話 トレーニングの効果とアンジュリーンの憂鬱


 全くもう、とうとう、私も、腕だけで綱を登れるようになってしまったわ。


 シュレも、足を使えば、綱の上まで登れるようになったし、腕の力は、メンバーの6人、全員に付いてきたみたいだわ。


 最近、ジュネスったら、綱を使うだけじゃなくて、壁で、逆立ちをしているのよね。


 ジュネスの後ろ姿を見ると、肩幅も広くなったし、本当に逆三角形の体だし、それに、あの二の腕は何なのよ。


 あれ、太ももと同じ位の太さがあるわよ。


 あ、また、逆立ちした。


 ……。


 え、なに?


 ちょっと、逆立ちしたと思ったら、その状態で、腕立て伏せしているわよ。


 え、何? 何なの? あの腕の太さになったら、腕だか足だか、わかったものじゃないわ。


 うっ、わぁーっ! もう、あれ、人なの?


 そう言えば、最近、格闘技の時、ジュネスに敵う人を見た事がないわ。


 あの腕の太さというより、腕の力が強くなったから、相手を、簡単に崩せるのね。


 そういえば、ジュネスと組むとジュネスって、肩や腕に力を入れないのよね。


 でも、こっちが力を加えようとすると、一瞬で、力を入れるから、上体を崩せないのよね。


 だから、体を入れても変な格好になってしまう。


 無理に体を回そうとすると、崩せないで、私が、変な格好になって、返されちゃうのよね。


 全くもう、ジュネスの格闘技は、全く、手がつけられないわ。




 でも、私も一緒にトレーニングしていたから、私自身も伸びているのかしら?


 女子の中では、アリアリーシャ位かしら、私が勝てない相手って、……。


 でも、アリーシャに負けもしないわね。


 互角なのかしら。


 シュレは、……、うん、そうね、負けたことはない、……、と、言うより、勝っているわ。


 それに、男子の半分には、勝っているわ。


 これって、喜んでいいのかわからないわ。


 男子にも格闘技で勝つ女子って、どうなのよ。


 可愛いの?


 いや、そんな事ない! って、言うより、可愛くないに決まっているじゃないの!


 私は、エルフなのよ。


 顔だって、……、そうよ、学校内でも、美形に入るのよ。


 絶対、上から数えた方が早いわよ!


 だけど、なんで、男子よりも強くなっちゃったのよ。


 まあ、ジュネスには、歯が立たないし、レオンにも、時々、投げられてしまうわよ。


 でも、それって、みんな、上位の男たちなのよ。


 格闘技は、クラスの中で、私って、上から数えたら、片手じゃないのよ!


 あー、これ、絶対、私の事、周りは可愛くないエルフだと思っているわ。


 なんで、こうなっちゃったのよ。




 いや、いや、悪い事だけを考えるから悪いのよ。


 いいこともあったわ。


 そうよ、私とカミューだけが、誰も引くことができなかった弓を引けたのよ。


 それも、凄い威力だったわ。


 板の的なんて、勢いが強すぎて、簡単に割れてしまった位よ。


 どうよ、弓のエルフなのだから、弓の威力が増したのは、儲けものよ。


 周りからも、凄いと思われて、見られていた、……、わ。


 そう、見られていたけど、……、あれは、尊敬の眼差しじゃなくて、引かれていたわ。


 あー、なんで、私は、こんな体になってしまったの。


 凹むわー。




 あ、でも、悪い事だけじゃないわ。


 時々、痩せたわねって、言われるのよ。


 でも、体重は増えているんだけど!


 まあ、それもわかっているのよ。


 鍛えることで、体脂肪率が下がって、頬が痩けるのよね。


 体は、服を着ているから分からないかもしれないけど、顔だけは、表に出ているから、頬が痩けているのが目立つみたいなのよね。


 でも、お風呂に入った時、体重は増えているし、胸も背中も筋肉がついているし、お腹だって、六つに割れているし、足だって、力を入れたら、ピクピク動くし、筋肉ダルマになってしまったみたいなのよぉ!


 あー、もう、肌を出す服は着ることができなくなってしまったわ。


 肩から腕を出した服を着たら、筋肉が動くわ。


 ……。


 どうするのよ。


 それに、体脂肪率が減ったせいなの?


 私の胸は、柔らかくないのよ。


 もう、胸筋が私の胸に変わってしまったみたいなのよ。


 胸が大きく見えるかもしれないけど、これ、ほとんど、筋肉なのよ。


 なんで、筋肉の胸ができなきゃいけないのよ!


 まあ、垂れてこないのはいいけど、触ったら、硬いのよ。


 少しは、脂肪が有るけど、すぐ下は、筋肉に変わってしまうのよ!


 うん、この事は、秘密にしよう。


 そうよ、秘密にするの!


 これは、筋肉も含めて、私の胸なのよ。


 だから、どんなに筋肉があったとしても、これは、私の胸なの。


 筋肉の上に乗った脂肪も含めて、私の胸なの。


 だから、胸も大きく見え、えぇ〜っ!


 うわ、だれ! 私の胸を鷲掴みにするのは!


 あ、シュレ!


 なんで、私の後ろから、手を回して、私の胸を鷲掴みにするのよ!


 ……。


 あ、そうね。


 シュレったら、胸の筋肉も付いてないから、見た目は私の方が、大きく見えるから、また、自分の大きさと私の大きさを確認しているのね。


 私の胸の秘密は、シュレにはバレているのね。


 ああー、なんて私は不幸なのかしら。


 仕方がないわ。


 これからは、肌のでない服にして、デザインも可愛い系じゃなくて、スーツ系の服を選んで、カッコイイ系の方向にシフトするしかないわね。


 そうね。


 それが、いいわ。


 ……。

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