異端を走る異能モノ

 現代日本において、異能の力を得た主人公の物語。
 まずこの作品において特筆すべきは、主人公が能力を私利私欲のために振るわないことでしょうか。使用する上での代償を把握し、己の器を顧みて、力に溺れることなく適切に慎重に用いる。異能の行使を物語の中心に置かない形で構成されてます。
 達観した姿勢を持つ主人公が、そうではないらしい他の能力者と、能力だけに頼らず対峙していく。正体の分からない敵対者を追い詰めていく過程、主人公の隠された素性など、ミステリ的な側面も持ちながら駆け抜けていく。
 短くも濃い内容でまとまった作品です。やはり異能に頼らない異能モノは良いですね。