第三話 盗賊たち

 太陽が輝き、強い日差しが木々の隙間から入り込んでいる。



 俺は森の中を歩いていた。



 相変わらずの多湿な気候と、木々の隙間から地面を照らす強い日差しが体力の温存を許さないようで、やはり体力の消費が著しい。

 昨夜の出来事から一夜明け、街を目指すことにした俺は昨日進んだ道と真逆の方向へ歩いていくことにした。闇雲に歩き回るのは得策ではないと思いつつも、考えたところで何を目印にすれば街に辿り着くのか分からなかった。幸い、昨日木につけた印のおかげで来た道が分かったため迷いなく進むことが出来ている。


 当然このまま歩いたところで街につく保障などない。むしろただの思考停止的な行動であると言える。



 確かに、少し自暴自棄になっているのかもしれない。

 その理由として食料と水分の不足があった。



 このよく分からない場所に飛ばされた際、食料も水も持っていなかった。というかバッグすらもっておらず、あるのはせいぜいスマホと財布だけという有り様だ。

 当然食料と水分の調達は考えた。

 ここまで歩いてくる道中に生っていた毒々しい色をした果物や、生理的嫌悪感を煽る見た目をした昆虫など様々なものを食料にできないかと考えた。

 しかしそれらは一舐めするだけで舌に痺れがはしったため、食べるとまずいことになると思い食料にはしなかった。

 すべて痺れ方が一様であり、その嫌悪感を煽る見た目も相まって恐らくこの森の可食物は何かの作用によって人間が食べれないようになっているのではないか、そう考えこの森での食料調達は諦めた。

 川がある気配もなく、植物も乾燥しているため水分の調達も難しい。

 そんな状況下ではただ歩く以外に選択肢が見つからなかった


 左足を見る。この膝の怪我も現状における頭痛の種だ。

 初めは痛みがなかったが、歩いていくうちに痛みが蓄積していき、今では少し足を引きずらなければならないほどになっている。

 あの化け物にやられた左腕は骨折したのかもう使い物にならない様子だ。



 食料も水もないうえにこの怪我か。笑えてくるな。


 まあただ諦めるのも性に合わない。体が動く間は歩き続けよう。


 そう決意し足に鞭を打った。




 ***




 どれほど歩いただろうか、もう日が沈みかけている。


 足は一度歩みを止めたら当分動かないであろうほど酷使しており、水分不足により視界は朦朧としている。


 それでもまだ街は見えない。

 この森に終わりはあるのだろうか。薄れゆく意識の中でそんなことを考える。


 その時、




「ぇ  」

「 ぉ  ぁ」





 人の声が聞こえた。


 薄れゆく意識が覚醒し、無意識のうちに声のした方へ向かっていった。




 近づいていくと、大柄な男性が3人、地面に座って何かを食べているのが見えた。





 深呼吸をし、意識を完全に覚醒させる。この出会い方で自分の生死が決まると言っても過言ではない。

 警戒心をもたせてはいけない、敵意を抱かせるなど論外だ。


 しかしせめて彼らが何者なのかだけは知りたい。加えて会話を盗み聞きして情報をもらえれば最高だ。

 俺はこの場所のことを知らなすぎる。下手なことを言って不信感を抱かせてしまえば助けてもらえないかもしれない。


 茂みに隠れながら男たちの会話が聞こえる位置に向かう。

 彼らはかなり大きな声で話しているようで、そこまで接近しなくても会話は十分に聞こえた。



「んで毎回こんなチンケな森で気持ち悪ぃやつらの相手しなきゃなんねんだよぉ」



「前は好きに殺しまくって女も金も攫い放題だったのにな」



「これも聖光騎士団と冒険者のせいだよなぁ」



「クソがぁ!聖光騎士団と冒険者の野郎!!ぶっ殺してやる!」




 何やら物騒な会話が聞こえてきた。かなり最悪なパターンだ。

 もっと普通なやつだったらよかったと思いつつ会話を聞きながら内容を整理していく。



 どうやら、彼らは盗賊のようなものであるようだ。

 今までは略奪や殺人など好き勝手やっていたが、聖光騎士団と冒険者という者たちが最近盗賊団を積極的に討伐しているらしく、目を付けられないために最近は好き勝手できていないらしい。それがなぜこの森に来ているのかというところまではわからなかったが、大体の情報は集まっただろう。



 盗賊に助けを求めるのは危険でしかないが、これを逃せば飢えて死ぬか干からびて死ぬかだ。


 覚悟を決めて盗賊たちの前に姿を見せる。




「んだテメェ?」




 3人から殺気を帯びた瞳で睨みつけられた。

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ここ、異世界? 江戸三郎 @EdoSaburou

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