その時ナオミがいた。 ~Naomi war damals dort.~
飯田太朗
~Naomi war damals dort.~
ドイツではこんなことなかった。父の仕事を死ぬほど恨む。
そもそも異常な競争率のギムナジウムに通ったのだからそのままドイツで教育課程を過ごさせてくれればよかったのだ。それを何だ。「自分たちのルーツがある国だから」なんて理由をつけて、無理矢理こんな島国に連れてきて。
まぁでも実際、私の方としてもメリットはあった。スタジオジブリの映画を見て日本の神様文化に興味があったのだ。だから父の甘言にほいほいついて行った。その非は認める。でも何で、こんな……。
日本には十一の頃から住んでいる。かれこれ六年目。大人からすれば短いのだろうがこちとら青春時代の六十%を捧げている(青春を十三歳から、とすればだけど)。高校の修学旅行なんていうのはその集大成に近い。なのに、なのに。
神聖な場所に向かっているはずなのに怒りしかない。深呼吸をして気持ちを落ち着ける。森の中の鹿とか雪原を跳ねるうさぎとか、柔らかな印象のものを考える。以前何かの記事で見た「怒りのコントロール法」のひとつだ。何度か大きく息を吸って吐いてを繰り返すと胸の奥がすっと整う感触があった。鳩尾の辺りに指を当てる。とんとん、と心臓を叩く。大丈夫。大丈夫。
ただ、指先に触れた下着の感触がまたちくりと胸に何かを刺した。
別に何ということはない。
寝泊まりするイベントである修学旅行では、普段人に見せないような一面を見せることになる。パジャマや下着なんていうのはその最たるもので、私はこの修学旅行のためにわざわざ新しいパジャマと下着を二着買って持ってきた。今つけてるのだって新しいやつだ。
そしてそれは、ナオミと一緒に選んだものだった。
ナオミとは親友だった。何でも話したし何でも一緒だった。いつから親友だったか、というと全く覚えていないが、少なくともこの高校に入ってすぐ、私たちは意気投合していて……授業中にこっそりやり取りするメッセージみたいな下らないこと、テストに向けた勉強やレポートの作成といった真面目なこと、全部一緒だった。
修学旅行に当たって私服がやばいという話は、真っ先にナオミとした。
「アユミの私服初めてかも。萌え」
定期試験が終わって、修学旅行の説明会があった日の帰り。
濃い夕暮れ、空が紫色に染まり始めた頃、ナオミは私に萌えと言った。
「何萌えって」
私が返すとナオミがほうっと息を吐きながら答える。
「ジャパニーズカルチャー」
「ちょっと。外国人扱いしないでよ。ってか『萌えそのもの』じゃなくて『何で萌えなのか』を訊いてるんだし」
「えー、何かよくない? だってさ、パジャマや寝起きの姿とか、男子は絶対知り得ないものを私は知れるんだし」
私は横目でナオミを見ながらつぶやく。
「私の私服なんて誰も興味ないよ。それよりナオミの方がまずいんじゃない? そのスタイルでダサい格好してたら浮くよ」
ナオミはスタイルがいい。手足が長くて、しかも曲線は優雅で、ほんと、うちのダサい制服じゃなければ、今頃きっと、街中のスタジオなんかで、おしゃれな服着てモデルでもやっていそうな、そんな女の子だった。正直ちょっとうらやましい反面、私は美少女ナオミの、結構あられもない姿……トイレの鏡で白目剝いて眉毛抜いてるところとか……を見られていることに優越感はあった。どうだ男子。参ったか。みたいな。
「大丈夫。私の隣にドイツ仕込みのおしゃれさんがいるから」
ナオミがこしょこしょと私の二の腕をくすぐる。それから訊いてくる。
「……太った?」
「しばくぞ」
「えー、この後駅でアイス食べようって誘おうと思ってたけどやめとくー?」
「あんたみたいに食べても食べても体型に出ない人と違ってこちとら育ち盛りでぶくぶく……」
「アユミってドイツ出身の割に日本語達者だよね」
「家の中じゃ日本語だもん」
「でもドイツ語しゃべれる」
「selbstverständlich(もちろん)」
「え? なんて?」
「selbstverständlich」
「何かこわ……」
私はナオミの肩をこつんと小突く。
「そんなこと言ってると服選んでやらないぞ」
「えー、何でよ。アユミはいたいけな私がダサい格好して笑いものになってもいいっていうの?」
「それはそれで私だけの楽しみ」
「いやー、アユミに弄ばれるぅー」
「すっげーダサい下着買わせて風呂で女子たちのネタにしてやる」
「どういうやつ? すけすけ?」
私は息を呑む。
「あんた何でそういう……」
「あ、アユミ『すけすけ』って日本語がいやらしい意味だって知ってるんだー。へー。何で知ってるのかなー」
「こいつ……!」
とまぁ、そんなこんなで、私たちは学校最寄りの駅でアイスを食べて、それから一駅先にあるターミナル駅に行ってデパートで私服や小物なんかを買い揃え、それが修学旅行の一週間前で……そして当日。この有様。自由行動で一緒に回るはずだったナオミは私の隣にはおらず、代わりに怒りに煮えたぎる私が神聖な神社の雰囲気を荒らし……。
しかしそもそものきっかけは私にあった。
私は、キョウヤという男の子が好きだった。
何故好きか、は名状しがたい。好きなものは好きだし、美しいものは美しい。多分その辺りの感情起伏の鈍さはドイツ由来だと思う。あっちの言葉には日本ほど感情を表す表現がない。
ただ言わせてもらえば、キョウヤと私には奇妙な運命があった。
キョウヤも私も転校生。しかも、私が転校してきたきっかり一か月後にキョウヤが私と同じ小学校にやってきた。
キョウヤが越してきた家は、何と私の向かいの家。たまたま同じ建設会社が建てた家だから屋根の色も壁の色も一緒。何なら家の造りも鏡映し。
キョウヤと私は小学校最後の二年間、それから中二中三の二年間、そして高二の今……ということは高三もなのだが……クラスが一緒。
キョウヤと私は吹奏楽部。あいつはトランペット、私はサックス。高一の頃定期演奏会でやった『Sing Sing Sing With Swing』なんかではキョウヤの高音から私の低音への連携がとても綺麗だと褒められたこともある。
キョウヤと私は苗字がア行とカ行だから新学年始まっての出席番号順の席では大体席が隣になる。
私みたいな年頃の……自分で言うのも何だが……女の子が、こうした奇妙な巡り合わせに何かを感じないでいられる方がおかしいのだ。私とキョウヤは絶対何かある。そう思っていた。そう思っていたのに……。
「キョウヤが好きなんだ」
いつだっただろう。でも大分前だ。それこそ修学旅行前に服を買いに行った時のように、学校の最寄り駅から一駅離れたターミナル駅の繁華街、お洒落なカフェで一服しながら、私とナオミはしゃべっていたと思う。そして多分、その時に話した。キョウヤのこと。運命のこと。
「運命ねぇ」
ナオミは心底つまらなそうに聞いていた。思えばこれも不思議と言えば不思議で、普段は私と日本の神様や民話みたいなオカルトめいた話をするのが大好きだったナオミが、私がキョウヤとの運命の話をするとどうにも感触が鈍くなったのだ。まぁ、もしかしたら、親友が男にとられるのが不愉快だったのかもしれない。
でも、でも、だからといって、あんな、裏切りというか、寝返りというか、こちらの信用を傷つけるようなことをしなくても、いいと思う。
修学旅行前日。私が、ナオミと一緒に買った服をバッグに詰め込んでいる最中、ナオミが急に、連絡を寄越した。
メッセージじゃない。通話だった。
「もしもし?」
私が出ると、しかしナオミは、黙っていた。
「もしもし?」
「ねぇ、アユミ」
深刻なトーンだった。
「私のこと、嫌いにならないよね」
「どういうこと?」私は荷造りの手を止める。
「いいから。嫌いにならないよね」
「だから何?」
こういう時に、ドイツの風習が出る。
あっちの人は何かを主張する時に躊躇ったりしない。そりゃ、思いやりの文化や空気感の機微といったものはあっちにもあるけれど、日本ほど複雑じゃない。だからちょっとイラっとしてしまった。作業中に割って入られたのもあると思う。
「キョウヤに好きって言われた」
いきなりの告白に、何かがすとんと落ちたような感覚があった。
「は?」
電波の向こうでナオミがつぶやく。
「キョウヤに好きって言われた」
頭の中で何かが爆ぜるのと、罵声が出たのは、ほぼ同時だった。私は「何それ意味分かんない!」と叫んでいた。
「どういうこと? あんたキョウヤとできてたの?」
「違う、違う……」
ナオミの声がノイズで歪む。
「そんな、キョウヤなんかとできるわけ……」
……キョウヤなんかと?
この一言で何かが切れた。私はまた、思わず強い口調で迫ってしまった。
「……何? 馬鹿にしてた?」
「えっ」
「あんたよりスタイルも悪くて不細工な私が、キョウヤに惚れてぴいぴい言ってるのを見て馬鹿にしてた? あんたが簡単に手に入れられる男にきゃあきゃあ言ってるのを見て馬鹿にしてた? 運命、とか訳の分からないことを言ってる私を馬鹿にしてた?」
「ちょっと待ってよアユミ。おちつ……」
「もうしゃべらないでっ」
私はやっぱり、叫んでいた。
「二度と話しかけないで。あんたとは終わり。もう顔も見たくない!」
それから、私は泣きながら荷造りをした。私服を詰め、パジャマを詰め、替えの下着や靴下、歯ブラシやヘアアイロンなんかを詰めながら、私はぶつぶつと途切れ途切れにナオミとのことを思い出していた。それは、そう、先述の、一緒に修学旅行用の私服を買った時のことだ。
「キョウヤのこと、忘れたくて」
ナオミは意外そうな顔をしてこちらを見た。
「好きなんじゃないの?」
「うん、でも私、キョウヤのタイプじゃないっぽいし」
スタバの注文カウンターの前。
新作のストロベリーチョコフラペチーノを前にして、「新作かぁ。でも糖分高そうだなぁ」なんて悩んでいるナオミの耳に、私は気持ちをつぶやいた。
「キョウヤってさ、何かほら、あれみたい」
「あれって?」
「何か胸が大きい子が好きみたいよ、あんたみたいな」
ナオミがこちらを見る。
「触る?」
「何でそうなる」
「ストロベリーチョコかぁ。イチゴは酸っぱいからいいけどチョコがなぁ……」
「甘いの嫌いなんでしょ? フラペチーノなんて大体甘いんだからやめときなよ」
「でも流行には乗りたい……」
「馬鹿馬鹿し。流行に合わせて自分を捨てるなんて」
「アユミはその辺ドイツっていうか、ヨーロッパ人っぽいよね」
「別にそんなことないでしょ。ってかあんた、甘いものの中でもチョコはダントツで嫌いなんじゃなかったっけ?」
「うん……何か、歯にも舌にも残る感じの甘ったるいのが……」
「なら余計にやめときなよ。すみません、店内で、キャラメルマキアートトールサイズふたつ、ホットで」
「さすがアユミ。私甘いの苦手だけどキャラメルは不思議といけるっていうか……」
「香りがいいからじゃない? ナオミ匂いフェチでしょ」
「うん、まぁ……」
と、鼻を鳴らすナオミ。
「……シャンプー変えた?」
「どうして分かる」
それから二人、キャラメルマキアートを飲みながら話した。
「私、キョウヤ諦めようって」
「いいの?」
「いいよ。胸ないし」
「関係ないでしょ」
「あるよ。男の子だもん」
「本当にいいの?」
「うん。ほら、修学旅行で行く先さ」
私は一口飲む。
「有名な縁切り神社があるんだよね。そこでキョウヤのこと忘れさせてもらおうって」
「ふうん、そっかぁ」
なんてつぶやきながら、ナオミが私のカップに手を取り、口をつける。
「こらそれ私の」
「いいじゃん、別に。私のあげる」
「そういうことじゃないでしょ」
「で? その縁切り神社が?」
「よかったらナオミ、私と行ってよ。その縁切り神社」
「いいよ」
「本当?」
「うん。だってアユミ行きたいんでしょ?」
さっすが私の親友!
……なんて、あの時は、思っていたのに。
神社の階段をのぼりながら、買ったばかりで馴染まない下着に意識が行き、そこから芋づる式にナオミのことを思い出し、といった風に「怒りのコントロール」からはどんどん遠いところに向かいながら、私は考える。
もういっそ、こんな悩みのない世界に行けたら。
本殿の前に立ち、お賽銭を入れ、ぱんぱんと手を叩いた頃、私の頭にある光景が浮かんだ。
どこで見たのだろう。でも綺麗な湖。
透き通っていて、水面に私が映るような。
飛び込めたら、楽だろうなぁ。
そう思っていた時だった。
足元に妙なぬるさがあった。靴下が一瞬で湿ったのが分かった。え、水? そう思った時にはもう、何もかもが変わっていた。
何、これ……。
いつの間にか、辺りは真っ赤だった。夕暮れ時みたい……そして足元は、いや、私の周りは……。
真っ平だった。どこまでも続く水平線。しかしそれが湖なのはすぐに分かった。波がないから……そして何より、水の色が……。
血のような、真っ赤。
さらに今頃になって、気づく。
沈んでる……沈んでる!
足の裏だけだった生ぬるさが不意に足首辺りを包み始めたことに気づいた。思わず一歩前に出る。すると一瞬、足首は液体から解放されるのだが、しかしまたすぐ、ずぶずぶと足は沈んでいき……。
まずい!
私は走り出した。片足が沈む前に、もう片足を……きっとすっごく間抜けな絵だったと思う。女子高生がひいこら足をばたばたさせて走るのなんて最悪だ。でもそんなことも言ってもいられなかった。私はひたすらもがいて、もがいて、もがきまくって、そして沈んでいった。気づけば腿が、腰が、へその辺りが、飲み込まれていった。もう歩けない!
「たっ、たす……」
パニックで言葉が出てこない。
「たすけ……」
ようやくそれくらい言えた頃になって、私は全てが終わったことを悟った。水は急になめらかになって私を飲み込み、胸を、喉を、そして頭を……。
「アユミ!」
背後で声がして、私は両手で水面を叩くようにして沈没をストップさせる。何度も叩く。何度も叩く。そうすることでこれ以上沈まないようにして、それから、一生懸命体を捻る。振り返った先、そこにいたのは。
「アユミ! 今行くから!」
どこからともなく現れて、いきなり私のいる湖に身を投げる、ナオミの姿だった。
*
それからはちょっと、記憶がない。
まるで大きな生き物の口の中みたいな薄暗くて粘着質な水の中に沈んだと思ったら、いきなり柔らかい存在に抱き上げられた。それがナオミだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
「大丈夫。大丈夫だから」
水の中。
はは。ナオミ、どうやってしゃべってるんだろ。私もその気になればしゃべれるのかな……あーあ、せっかく買った靴下も服も全部台無しだ。まぁそれはナオミも一緒か。はは。でもせめてだからナオミに、何か言おうか。
何がいいかなぁ。
「あのさ」
ようやく、言葉が出る。あぶくが浮かんで天に昇っていく。
「助けに来てくれてありがとうナオミ。ナオミ、大好きだよ」
水の中、仄暗い中で。
ナオミの目が一瞬見開かれたような、気がした。
*
アユミ……アユミ……。
優しい声がする。
アユミ……アユミ……。
甘い匂い。
アユミ……起きてよ、アユミ……。
柔らかい感触。
目を覚ました。まず目に入ったのはナオミの顔だった。
「よかった……アユミ、よかった……」
ナオミが泣きそうな顔になっていた。それが何だかおかしくって、私は笑った。
「どうしたの」
「どうしたのじゃないよっ」
ナオミが声を張った。
「アユミがいなくなっちゃうと思った……! 大切なアユミなのに、私の大事な、大切な……」
「そんなに重く想われても」私は笑った。
「勘違いされちゃうよ」
「されてもいいよ」
ようやく起き上がった私の目を、ナオミがしっかりと見つめてきた。
「昨日、何で話を最後まで聞いてくれなかったの。私まだ話すことあったのに」
「親友の好きな人を取ったこと以外に?」
私が意地悪を言うとナオミはムッとして「取ってない」と言い切った。それから続けた。
「あいつが勝手に来たの。それも……もう最悪」
「どうしたの」
私が訊くとナオミが目を潤ませながら答えた。
「あいつ、好きとか言いながらも私の体じろじろ見て……脚とか胸とか、私はそんなところにいないのに……」
「うわそれ最悪」
「しかもプレゼントとか言って渡してきたのチョコだし」
「げー、何それ全然ナオミのこと知らないじゃん」
「体目当て感すごいよね。これだから……」
ああ、はは。そうか、そうだなぁ。
この時になって私は胸の中で何かが、晴れていく気がした。それは何だろう、熱いお風呂に入った後に浴びる扇風機みたいな爽やかさで、火照った何かを、淀んだ何かを、吹き飛ばしてくれるようだった。
「見て」
ナオミが顔を上げた。私も起き上がり、辺りを見渡した。
「うわあ」
思わず声が出た。
綺麗……すごく綺麗!
当たりは花畑だったのだ。森の中に小さく広がる花畑。白い花が絨毯のように広がって……甘い匂いが、どこからともなく。
しばらく呆然と花畑を見渡した後になって、私は口を開いた。言っておかなければならないことがあるからだ。
「ナオミ、ごめん」
「ん?」ナオミは風でも吹いたか、という顔をしていた。
「私、ひどいこと言ったね」
「そうでもないよ」
「ちゃんと話聞かなかった」
「仕方ないよ」
「あやうくナオミを手放すところだった」
「今こうして、傍にいるじゃん」
さて、とナオミが立ち上がった。
「ここがどこか分からないけど、あっちは視界が開けてる」
言われてみると、鬱蒼と立ち並ぶ木々の合間、一か所だけ、木の生えていないところがあった。
そしてそこには石の階段があった……ここに来る時、私が上っていたような。
「知ってる?」
ナオミが訊いてくる。
「アユミが行こうとしていた神社、こんな逸話があるんだよ」
曰く。
その昔、二人の女性がある男性に歌を送った。しかし傲慢な男性はその歌に応えなかった。悲観した二人の女性は、それぞれこの地にあった湖に身を投げた。すると一夜にして、湖の水は干上がってしまった。その跡地に、悲恋の女性二人を祀るためにできたのが、この神社である。
「悲恋、かぁ」
そんなものでもないけど。私の一方的な思い込みだったし。
まぁ、でも失恋には違いないか。
喪失感、はあった。何せ一時とは言え思いを寄せていた男子に諦めをつけたのだ。時間と感情を失った。それは違いない。でも……。
目線を上げる。何もかも失って、無駄を省いて、残ったものを見つめようとした。
その時、ナオミがいた。
彼女との仲は揺らがない。
そう、思えた。
「行こう」
すっと、差し出された手を繋ぐ。そして歩き出す。
花畑を抜けたところで、あ、そう言えばナオミとこうして手を繋ぐのは初めてかもな、と思った。もしかしたら両親以外の人と手を繋ぐのも初めて。
責任とってよね、と心の中でつぶやいた。
ふと振り返ると、そこに花畑はなく、ただ小さな神社だけが、佇んでいた。
了
その時ナオミがいた。 ~Naomi war damals dort.~ 飯田太朗 @taroIda
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