ディストピアを歩こう、その心臓が止まるまで

 機械化され管理され、優秀なものだけが守られる帝国。
 少女の不治の病をきっかけにそんなディストピアを出て放棄された外の世界へと踏み出す二人の旅路はどこへたどり着くのか、期待が高まります。
 命についての考え方が伝わる描写も素朴かつ丁寧です。少女の心臓のタイムリミットが緊張感を出しています。
 一方、個人の感想ですが帝国から外の世界へ出ることが禁止されている割にドア一枚くぐるだけでいいのはちょっとセキュリティが手薄ではないか(主人公の職位なら出入り自由なのかも知れないが)、主人公が帝国のエリートならもっとひき止める人がいても良いのではないか、という細かい部分が気になってしまいました。それらの障害があればもっと「それでも少女のために外に出るんだ」という覚悟が際立つように感じます。