第26話 NTR殺人事件

 ソファの上に胸をボーガンの矢で貫かれた男の死体が仰向けに倒れていた。


 工口こうぐち彰久あきひさは死体に手を合わせた後、部下の朝立あさだち元気げんきからの報告を待つ。


「ガイシャは運送会社経営の鳥根とりね倫太郎りんたろう、40歳。至近距離からボーガンで撃たれて殺害されたようです」


「うむ。それで容疑者は絞り込めそうか?」


「それが、第一発見者の妻・美奈代みなよが怪しいと踏んだのですが、彼女にはガイシャの死亡推定時刻のアリバイがありました。その時間、美奈代は出会い系アプリで知り合った男とラブホテルにいたのです」


「その男が共犯なのではないか?」


「……いえ。ホテルの防犯カメラをチェックしたところ、美奈代と男が一緒にホテルに入るところを確認しました。美奈代のアリバイは動かしようがありません」


「それでは美奈代を引っ張れないぞ。他に何か情報はないのか?」


 すると、朝立は手帳を捲りながら躊躇ためらいがちに話し始めた。


「……これは事件に直接関係するかわかりませんが、ガイシャの鳥根は酷い寝取られ願望の持ち主だったようです。自分の妻が他の男に抱かれる様子を覗くことで異常に興奮する変態だったそうで、美奈代はそんな鳥根の性癖に付き合うことが苦痛だったみたいです」


「……ふーむ。他人の趣味にケチをつけるつもりはないが、寝取られの何が良いのかさっぱりわからん。欲望もレベル上げればちょっとやそっとじゃ満たせなくなると、そういういことなのか?」


「犯人、わかったんだけど」


 工口と朝立が振り返ると、そこにはギャル探偵・肉倉ししくらエリカが立っていた。


「エリカちゃん、何故ここに!?」


「ギャル探偵は神出鬼没なの。そんなことより警部、犯人は妻の美奈代で決まりだよ。この事件は遠隔殺人だったんだ」


「遠隔殺人?」


「美奈代は鳥根を全裸にした上で椅子に縛り付け、目の前にモニターを用意していた。そこに自分の浮気現場がライブで中継されるようにしておく。そうすれば、寝取られ願望がある鳥根は当然フル勃起する」


「腹とチンポが同時に立つな」


「そしてチンポには紐が結ばれていて、勃起するとチンポが紐を引っ張る力でボーガンから矢が発射される」


「なるほど、勃起チンポに引き金を引かせたというわけか。興奮したら死ぬのに勃起を堪えられない。熱い欲望はトルネイドってわけだ。よし、美奈代のアリバイを徹底的に洗い直すぞ!!」


 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。











「……あの警部、それはNTRネトラレではなくてTMR西川貴教の方です」

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肉倉エリカの超推理を1000文字我慢できれば迷宮入り 暗闇坂九死郎 @kurayamizaka

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