おまけ 温泉
一泊二日でまた旅行しよう、美波からそうメールが来たのは、九月半ば、夏休みが終わる直前だった。
私は二つ返事で了承した。前回の旅行の帰り際に、また旅行しようという約束を覚えていてくれたのだ。
私が部屋で一人、舞い上がっているところにスマホに着信があった。美波からで、私は慌てて電話に出た。
「もしもし、麗?」
「うん」
「今日暇? 私の家で旅行の計画立てない? あと、お昼も食べよ」
「暇だよ。今から行くね」
時間は午前の十時。今から準備して美波の家に着くのは十一時くらいで、お昼の時間としてはちょうどいい。
電話を切り、急いで準備をして家を出た。鏡で身なりを整えている自分の顔が終始ニヤニヤしていて自分でも引いた。恋人の家に行くのだ、落ち着くことなんてできない。
私は必死に平静を装い、美波の家まで来た。呼び鈴を鳴らすと笑顔の美波が出迎えてくれた。
「先にお昼食べよ」
美波と向かい合うようにテーブルを挟んで座る。テーブルの上にはすでに茹でた素麺が用意されていた。
「自分から誘っておいてあれだけど、麺茹でたりとかしかできないんだよねえ」
そういえば前に美波の家に招待されたときは、冷やし中華だった。あれも麺を茹でればほとんど完成だ。
「普段ちゃんと食べてる?」
「……それなりに」
美波が右頬を掻いた。困ったときの癖だ。
「ちゃんと食べなよ。たまになら作りにくるから」
言ってから下心があるような物言いだと後悔した。下心があるといえばあるが、それより、美波の食生活が心配でと、ぐるぐる考えている私をよそに、美波の顔がぱっと明るくなった。
「本当? 楽しみだなあ」
美波の純朴な笑顔を見て、自分が少し邪な考えを抱いてしまったことを恥じた。気持ちばかりが急いている。
ご飯を食べ終え、本題に入ることになった。旅行の計画だ。前回の旅行で使った切符が二回分余っている。つまり二日分。ここでまた変な考えが浮かんできてしまった。と、泊まり……? 美波と、恋人と。
「麗?」
美波が怪訝そうに私の顔を覗き込んでいた。すっかり自分の世界に入り込んでしまっていたようだ。
「ご、ごめん。なに?」
美波が少し呆れたような表情を浮かべた。
「日程どうするって聞いたの。私の家にいるからって変な想像してない?」
美波がからかうように小さく笑うが、私はずばり本心を言い当てられなにも言い返せなくなってしまった。
そんな私の様子を察してか、美波が少し固まった。しばしの間、微妙な沈黙が流れてしまったが、私は努めて明るく振る舞い均衡を破った。
「日程だよね、ごめん、聞き逃しちゃった」
「だから、来週の平日、一泊二日でいいかって聞いたの」
美波もぎこちなく笑い、普段通りの雰囲気に戻った。
「来週ね。なにも予定はないから大丈夫」
次に行き先の話になり、美波が和歌山の白浜に行きたいと言った。私はあまり知識がないので美波の希望に合わせることにした。
「白浜ってなにがあるの」
そう言いながら私はスマホを取り出し、いそいそと検索する。
「一番はパンダかな。あとは千畳敷、三段壁に……」
事前に調べていたのか、美波の口からはネットに載っている観光名所が次々と飛び出してくる。
「それと、温泉」
温泉という単語に少しびくりとしたが、平常心を保ち、態度には出なかったはずだ。前回も温泉に一緒に入った、別に今さら意識することは……いや、意識してしまう。あのときすでに美波のことが好きだったが、恋人ではなかったからやりすごせた。でも、今回は違う。恋人と温泉に行く、つまりこれはその、あれだ……。
ここで少しだけ冷静になった。美波も私と同じで、その気はあるのだろうか。こればかりは当日にならないと分からない。私ははやる気持ちを抑えた。
スマホを駆使して行きたい場所や交通手段を調べ、まとめあげるころには夜になっていた。
美波が、せっかくだから夕ご飯も食べようと言うので、私たちは近所のスーパーに買い出しに行き、今度は私が料理を作った。
「ちゃんとした料理、久し振りに食べた」
美波は嬉しそうにしているが、普段なにを食べているのか本当に不安になる。
食後にお茶を飲み、しばらくくつろいでからお暇することにした。時刻は午後九時、このままずるずるとここにいたらどうなってしまうのか分からない、主に自分が。
「麗」
玄関で靴を履き、ドアノブに手をかけたところで美波が小さく呟いた。
振り返ると美波が少し顔を赤らめている。
「どうかした?」
美波は無言で私に抱きつき、唇を近づけてきた。
心の準備などする時間はなく、気がつけば柔らかいものが唇に添えられた。私も優しく背中に手を回し、体を密着させるように抱きしめた。
美波の唇が少しだけ私の唇を啄む。私もそれに応えるように啄む。お互いの唇を貪るように何度もキスをし、美波の息づかいが荒くなっていく。私も脳が溶けそうになり、正常な判断が徐々に失われていく気がした。このまま軽いキスでは飽き足らず、舌を入れ、そして……と考えたところで美波が唇をゆっくりと離した。唾液が一筋、お互いを細く結んでいる。
「ごめん、急に」
全身に血が巡り、過敏になり始めていたところに美波が耳元で囁くものだから理性を保つので精一杯だった。
「キスしたいなら、いつでもいいよ」
もう一度キスをし、美波の家を後にした。
私は自分の家に帰ってきてすぐシャワーを浴び、ベッドに飛び込んだ。
最後のキスは、官能的だった。思い出すだけで心臓が飛び跳ねる。自分の手で唇に触れ、柔らかさを思い出す。本当に美波は私のことが好きなんだ、親愛ではなく愛情として。そのことにようやく実感が持てた。今回の旅行もつまり、そういうことでいいんだよね、私は枕に顔を押しつけ、美波の顔を思い浮かべた。
不意に前回一緒に温泉に入ったときのことを思い出した。あのときはなるべく美波の裸を見ないようにしていたが、それでも綺麗な体は目に焼きついている。
「美波」
私は美波の体と今日のキスを思い浮かべながら下半身に指を入れた。
旅行の日はあっという間にやってきた。私は一昨日に爪を切り手入れをし、昨日も入念に整えた。ムダ毛の処理もした。余計な脂肪はそれほどついていないから慌てる必要はなかった。
準備万端で集合場所の京都駅に向かうとすでに美波がいた。
「おはよう、麗」
私もおはようと返し、二人だけの旅行が始まった。
美波の笑顔が眩しい。電車で並んで座り、綺麗な横顔をちらちらと眺める。普段よりさらに美人に見える。
予定通り各停の電車を乗り継ぎ、和歌山駅に到着。そこからさらに予定の観光地まで電車とバスで移動し、楽しんだ。動物園のパンダも、三段壁から眺める海も、美波の前では霞む。
宿にチェックインし、夕食を食べ終え、お待ちかねの温泉に入る。
着替えとタオルを持って、大浴場へ移動する。移動する最中、私は緊張してしまって上手く話せず、ぎこちない受け答えしかできない。
脱衣所で、美波はなんでもないかのようにさっさと裸になり大浴場へと消えていった。
どうやら、私だけが舞い上がっているようだ。煩悩まみれの自分に急に嫌気が差した。私も美波のように平然としていられたら、どれだけいいだろう。
私も急いで服を脱ぎ、体を洗って美波と一緒に温泉に浸かった。
しばらく今日の思い出と明日のことを話してから二人で温泉から出た。美波の体を凝視しないように必死だった私は、あのままもう少し温泉に入っていたらのぼせるところだった。
部屋に戻り、二人で足を伸ばしながら並んで座りテレビを見る。
美波が私のほうに寄ってきて太ももから足の小指までがぴったりとくっつく。
浴衣から覗く足がすべすべしていそうで綺麗だ。
「そうだ、これ見て」
しばらく無言で身を寄せ合っていたが、美波がどこからともなくこのホテルのパンフレットを取り出した。
「このホテルは各部屋につぼ湯って呼ばれるお風呂がついてるんだって」
パンフレットを覗き込むと、美波から爽やかな匂いがした。シャンプーだろうか。
「あれかな」
パンフレットから顔を上げ、ベランダに目を向けた。プラスチック製の大きな桶がぽつんと置かれている。大人二人ならなんとか入れるくらいか。お湯をためるための蛇口はついているが、シャワーはついていない。周りは視界を遮るために竹の壁で覆われている。
「ネットで写真見たときから思ってたけどさ……」
美波が言い淀む理由は分かる。なんというかその、ちゃちだ。雰囲気がない。
「せっかくだし入ろうよ」
美波が勢いよく立ち上がり、浴衣を脱いだ。そのまま下着も脱ぎ、裸になってベランダへ出た。
私はあまりのことにあっけにとられ口がきけず、動けなかった。
そういえば、美波はたまに突拍子もないことをする人だった。私は力が抜け、躊躇いながらも裸になりベランダに出た。
「麗も入ろ」
美波は蛇口を全開にしてお湯をためながらつぼ湯に入っていた。
「お邪魔します」
美波と並んでつぼ湯に入った。案の定狭くて美波と密着してしまう。いいお風呂とは言い難いが、美波と密着するこの状況は悪くない。いや、最高。
肩と肩が、腕と腕がせわしなくぶつかる。そのたびに私の心臓が激しく脈打ち、音が美波に聞こえてしまうのではないかと心配してしまう。
徐々に肌と肌が触れる時間が長くなってきた。きめ細かい美波の肌が、私の肌で傷つかないか、そんな変なことを考えてしまう。ついには身を寄せ合い、私の二の腕に美波の胸がくっつく。美波はさらに押しつけてくる。
美波にその気があるのかは分からないが、雰囲気を少しずつ作っていきたい。私も負けじと美波の胸を押し返す。
「そろそろ出よ」
しばし無言の攻防が続いたところで、顔を真っ赤にした美波が立ち上がった。恥ずかしいのかのぼせているのか私には判断がつかない。
私たちは無言で体を拭き、交互に髪を乾かしてから、再び並んでテレビを見始めた。
私も美波も下着を上下とも着けず、浴衣一枚の格好だ。
私の手になにか暖かいものが触れた。見ると、美波が指と指を絡ませるように握っていた。
テレビの音がうるさい、私はテレビを消し、美波を押し倒した。
私の前で服を脱ぐときに躊躇いがなかったり、なんでもないかのように一緒に温泉に入ったりと、美波にその気はないものばかりだと思っていた。でもこの旅行も、美波の家でキスしたときも美波からだった。だから私が。
「美波」
「麗」
私は美波に覆い被さりゆっくりとキスをした。お湯に浸かったばかりだからか潤っている。キスをしながら、美波の耳や頬を撫でていく。時折美波が苦しそうに息を吐き出す。
呼吸を忘れ美波の唇を貪ったせいで酸欠気味になり、一度唇を離す。
ゆっくりと目を開けると、そこには潤んだ瞳が私を見上げていた。美波の頬が上気し、呼吸が荒い。美波のお腹が呼吸に合わせ上下するのが私に股下に伝わってくる。
美波の浴衣をゆっくりと脱がし、胸があらわになる。豆粒大の小さくて可愛らしいピンクの乳首、仰向けでも形が崩れず張りがある胸に思わず見惚れてしまう。
しばらく固まっていると美波が自分の腕で胸を隠した。
「美波?」
「麗、見すぎ」
この段になってそんなことを言われるとは思っておらず、困惑してしまう。
「だめ、だった?」
「だめじゃないけど」
美波が恥ずかしそうに顔を逸らしてしまった。私は美波の腕をどかそうと手首をつかんだが、美波は力を入れ抵抗してくる。
「さっきまで一緒に裸だったじゃん、今さら……」
「状況が違うじゃん」
「状況?」
「……温泉は裸が普通だけど。でも今は……」
「今からすることも、裸が普通だよ」
私は部屋の明るさを落とし、部屋が電球色で満たされる。
もう一度美波の腕を胸からどかそうとすると、今度は抵抗されなかった。
私は浴衣を脱ぎ捨て、乳首と乳首を合わせるように胸を押しつけながら再度キスをした。
美波の唇を味わうたびに体が少し動き、乳首同士が擦れる。美波の乳首が徐々に固くなっているのが伝わってくる。無論、私の乳首も固くなっている。
キスをしたまま、今度は右手で胸を優しく愛撫していく。空いている左手で美波の耳を包み込み、撫でる。
耳が弱いらしく、美波の息がどんどん荒くなっていく。私の唇から逃れようとするが、私は離さない。その間も右手で乳首に触れないように胸を揉みしだく。外側から胸の天辺へ少しずつ近づける。
人差し指で軽く乳首を弾くと、美波の体が少し跳ねた。反動で唇と唇が離れ、美波が空気を必死に取り入れる。
私は添い寝するように美波と密着し、休む間を与えず、右手中指を美波の下半身に添えた。
「美波、いい?」
美波が黙って頷いた。
私はゆっくりと第一関節まで指を入れた。中は暖かく、柔らかい。大量の蜜に溢れ、少し動かすだけで艶めかしい音が響く。
私は傷つけないように、慎重に指で入り口付近をいじり倒しはじめた。
美波には痛い思いをしてほしくない。美波ならきっと痛くても我慢してしまう。苦痛の伴うセックスにしたくない。
入り口だけをなぞるようにしながら、美波の全身をまさぐっていく。今の美波はどこを触っても気持ちよさそうにしている。
突然美波が私の腕をつかみ、自ら私の指を挿入した。私の中指が全て美波の中に入り、美波が私の中指をより奥へ導こうとする。
「麗、いじわるしないで」
なにかが切れる音が聞こえ、私の理性と、美波を大切に扱う気持ちが吹き飛んだ。
私は中指を激しく前後させた。指の第一関節しか入ってない状態から一気に指を滑り込ませ、指を入り口近辺まで移動させ、一気に突き刺す。何度も、何度も。
美波は激しく喘ぎ、指で突かれるたびに頭の下の枕を強く握りしめる。
「麗……。麗!」
美波の私を呼ぶ声に応えるようにさらに激しくする。美波を傷つけないように、とかは考えられなくなっていた。前腕部が痛くなってきたがお構いなしに指を動かす。
「ん……。あ、麗……」
やがて美波の一番気持ちいいであろう場所にたどり着き、執拗にそこだけを責め立てる。
美波の声が、息づかいが、下半身が立てる音がどんどん大きくなっていく。
「麗、だめ……。麗、麗……!」
「可愛いよ、美波」
美波がよりいっそう体をくねらせる。私はわざと音を立てるように指を動かす。
「もう……。麗……、麗、あ、イく……」
私が陰核を強くこすった瞬間、美波が両手で枕をつかみ、頭を支点にして、体を大きく仰け反らせた。
美波の動きと呼吸が止まり、部屋が完全な静寂に包まれた。しばらくして、美波がゆっくりと体勢を戻し、荒く呼吸を始めた。
指を美波の中から抜くと、蜜が長い糸を引き、部屋の明かりが反射する。
「麗、すごかった」
私も美波の横に寝転がり、入れていた手とは反対の手で頭を撫でた。
「気持ちよかった?」
「うん」
「よかった」
美波に軽くキスをし、目を閉じたところで、美波が私に馬乗りになった。
「美波?」
「今度は私がするね」
「え、でも……」
「嫌なの?」
美波が不安そうな表情を浮かべた。
「そんなわけないけど……」
そう言うやいなや、深いキスがされていた。柔らかな舌が、私を満たす。美波の舌が器用に歯茎を滑り、私の舌が吸われる。
突如乳首に鋭い快感が走り、瞼の裏が真っ白になった。
「麗、大丈夫?」
美波が蠱惑的に笑いながら私の顔を覗き込んでいた。
「……もっと触って」
美波がまたキスをし、私の全身を愛撫していく。
好きな人にただ触られるだけでこんなにも感じるのか、私は感動していた。美波の細い指が、優しく肌に触れるだけで全身が火照り、もっと欲してしまう。そしてなによりも幸福感に包まれる。
美波の右手が胸からお腹へ、お腹からお尻へと移動する。ついに秘部に指が到達した。
「麗、いい?」
私は静かに頷いた。本当はどうしようもないくらい欲している。ただ、薄く残った理性が最後の砦となりどうにか冷静でいられた。
指が少し入った瞬間、ぴちゃぴちゃと厭らしい音が響いた。
「麗、ここ、すごいよ」
私から溢れ出る蜜がそうさせていると理解するのに時間がかかった。先週美波の家でキスしたときからずっと、美波とこうなることを考えていた。そして今日、美波とセックスし、私の指でよがる美波を見て濡れてしまった。
「美波、もっと……」
美波が少し指を動かすだけで全身から力が抜けていく。指が私を貫き、湿った音が響くたび私は気を失いそうになる。
「あ……美波……美波」
私は下腹部に力を入れ、指を逃がさないようにくわえ込む。さらに美波を抱き寄せ、窒息する勢いで抱きしめた。
「好き……美波、好き」
美波のいい匂いが鼻腔をくすぐり、感度がより高まる。美波と自分の内側に取り込みたい、その一心でより強く抱きしめる。
目の前がだんだん白くなってきた。想像上の美波で慰めるのとは全然違う。こんな快感知らなかった。美波が、私の好きな人が、私の恋人が、私のために必死になってくれている。心も体も満たされていく。
「美波……もう……あ……だめ」
美波が小さく笑って、さらに指を加速させる。
そんなことしたら……私は。
「あ……ん……イ……」
なにも見えない、なにも聞こえない。私がどこでなにをしているのかさえ判断がつかなくなったが、そんなことはどうでもいいくらい気持ちがいい。快感と幸せが長く続く。
やがて五感を取り戻し、私の上の美波を感じられるようになった。
「麗、どうだった?」
「……ヤバかった」
美波が安心したのか、表情を崩した。
「よかった。……上手くできるか不安だった。実は、いろいろ調べたりしたんだよね」
美波が私のために。きっと、キスをしたあのときから覚悟を決めていたんだ。
そんな美波を見ていて、また私の中で炎が灯った。
美波を抱きしめたまま転がって上下を入れ替え、私が美波に馬乗りになった。
「麗?」
「……まだ、シたい」
美波が恥ずかしそうに頷き、私はキスをした。
女同士のセックスに果てはないと、どこかで読んだ気がするが、本当だった。私が美波を果てさせると、今度は私が美波によって絶頂を迎える。交互に繰り返し、時には美波を連続でイかせたりしながら、休むことなくセックスを続けた。
空が白み始めるころ、美波が果てると同時に気を失い、私も泥のように眠りについた。
チェックアウト時間ギリギリにホテルを出て、市場まで来た。道中昨日のことが思い出され、顔を合わせづらかったが、手はずっと握っていた。
向かい合ってご飯を食べているが、昨日とはお互いの雰囲気が違う。
「美波」
海鮮丼を頬張っていた美波が小さく「ん?」とこっちを見た。
「明日はなにかある?」
「特には」
「あのさ……」
自分の欲深さに美波が呆れないかが心配だったが、意を決した。
「行きたい場所があるんだよね。それでもう一泊できないかな……なんて」
美波が目を丸くし、恥ずかしそうに小さく頷いた。
「でも、もう切符ないよ。一枚だけ買い足しても三回分は余っちゃう」
「……また旅行すればいいじゃん」
がっつきすぎたかと不安になったが美波は可愛く笑っている。
「そうだね、じゃあもう一泊しようか」
私はいそいそと宿を予約した。
心をみせて 四国ユキ @shikoku_yuki
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