組み立て家具の予備パーツ

「好きとか言った?俺」


起きると彼はなにも覚えていないことを教えてくれた。


寝癖がつき、寝ぼけ眼でこちらを見る彼はとても可愛らしく何処か中性的なところを感じさせる。


「好き、可愛い、一緒にいてって言ってたよ」


私が事実のみを告げると彼は驚いていた。


「嘘だ〜、俺はまゆのこと好きだからなあ」


まゆではないよ、私は。


言い返しても仕方がないと判断した私は作り笑いしながら気持ちを軽く伝えた。


「私は好きとか一緒にいてとかそういう言葉を簡単に言えない。言いたいけど。だからやっぱり意識すると思う。」


彼は黙った。黙りながらこちらを向いて考えていた。


「付き合うとかは早いんじゃないかな」


そう言われて、私は頷くしかなかった。


「酔っぱらっているとは言え、無責任なことを言わないで。私だって女だし、都合よく使われたら悲しい。」


「ごめん。」


彼はぼさぼさになった髪の毛を手櫛でとかし、こちらを向いて座った。


「でも昨日、まゆの連絡先ブロックした。」


「そう」


彼は不満そうな顔をした。


だからなんなのだ、というのが私の感想。


気持ちが残っているのなら、ブロックしたところで自分で解除すれば連絡は取れる。


それにまゆさんは彼氏が居ながらもゆいくんとセフレとして関係を持っている。


まゆさんのこと好きになれない。


私はいきなり吐き気を催して、外へ逃げた。


彼は追いかけて来なかった。


部屋に戻ると、体調の心配ではなく帰るかどうかの心配だった。


「帰るよ」


どこか安心していそうな彼の表情を見ると、私は期待をするだけ無駄なように感じた。


「ここまででいい」


私は一人になった瞬間に、雨の中に溺れた。


雨はきっと涙を隠すために降って来た、そう思いながら濡れて歩いた。


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微睡 澪凪 @rena-0410

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