神々の黄昏
薄雪姫
伝説の始まり
第1話
胸がキュンとする物語の主人公になる方法は二つだ。
その1 遅刻ギリギリの時刻、食パンを咥え学校まで猛ダッシュ! 曲がり角で運命の人にごつんとぶつかる
その2 空から降ってきた女の子を受け止める
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
困っている女の子を助けながら、ある宿命を背負い、旅を続けるお人好し(注ロリコンではない)な青年ユキトの場合はその限りではない。
彼は少女を受け止めるどころか自分が空から落っこちてしまった。
ラピ○タに届きそうな巨木のてっぺんから勢いよく落ちたものだからたまったものではない。
いつものように少女の風船を取ってあげようと木に登ったらうっかり足を滑らせてしまったのだ。
地面に衝突した衝撃がユキトの身体を蝕む。
これでは到底立ち上がれそうにない。
「ぜ、全身が……痛いな。でも、イナリちゃんに心配かけたら駄目だ。顔に出さないようにしなきゃ……」
何より、風船が割れずに済んだことは不幸中の幸いだ。
「ユキトおにいちゃーーーーーーーーーーーーんっ!」
重傷を負ったユキトに向かって鈴のような声が猛ダッシュで急接近してきた。
ユキトに風船を取ってもらったこの世のものとは思えない美少女・イナリの声だ。
「ユキトおにぃちゃんって、ずっときいていたくなるくらいこえがすてきで、おんなのひとよりもおかおがきれいで、しかも、ほんとうにやさしいんだね!」
ユキトをべた褒めするイナリはロマンチックに例えるなら、まだ幼いながらに、彼方のお月様みたいに美しい女の子だ。
まだまだ、おままごとが大好きな年齢ながら、未来の彼女を想像すれば誰もが胸を焦がすだろう。
丸くて美しい瞳がユキトおにぃちゃんに尊敬の眼差しを向ける。
「イナリちゃんのふうせん、とってくれたんだね! ありがとう!!!!!。ユキトおにぃちゃん、だーーーーーいすきだよ♡ ぎゅ~」
イナリは大怪我をしているユキトおにぃちゃんに労りの言葉ではなく感謝と愛を伝えるとユキトに抱きつく。
ユキトは触れられることに少し痛みを感じたものの、イナリを悲しませたくないので沈黙を選んだ。
幸か不幸かイナリはユキトの大怪我に気付かずに
「すり……すり……ユキトおにぃちゃん、だ~いすき♡……」
普段以上にほっぺたを赤く染めたイナリはユキトおにいちゃんをすりすりし始めた。
「すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……」
おそらくイナリは、ユキトおにぃちゃんにすりすりするのが大好きという星の下に生まれてきたのである。
「……イ、イナリさん……くすぐったいですよぉ」
風船を取ってあげたとはいえ、将来は純度100%の美少女になるであろうイナリに突然すりすりされたユキトおにぃちゃんはトマトよりも真っ赤になった。
「すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり…すり…すり…すり…すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……すり……」
そんなことはお構いなしでユキトはイナリにすりすりされ続ける。このまま時が止まってしまうのか?
「すり……すり……すり……すり……すり」
もし止まってしまってもそれはそれで楽しいかもしれないな。ユキトがそんなことすら考えるくらいイナリはユキトをすりすりする。
「すり……すり……すり……すり……すり……え!?」
イナリは急に青ざめ、すりすりをやめた。
「ユ、ユ、ユキトおにいちゃん! おケガ、だいじょうぶ!?」
「イ、イナリちゃん! ぼ……僕は……平気ですから」
ユキトは何かを伝えようとしたが、イナリに遮られた。
「イナリちゃんが……ふうせんを……おっきな木にひっかけちゃったから……おにいちゃんがイナリちゃんのふうせんをとってくれなきゃいけなくなって……それでおにぃちゃんが木から落っこちちゃった。」
イナリの鈴を張ったような目から銀のしずくが滝のように流れる。
「イナリちゃんがふうせんをひっかけちゃったせいで……ユキトおにいちゃんが……おケガしちゃった…… イナリちゃん、ふうせんなんかいらないっ」
イナリは涙目で風船を叩き割った。彼女のほっぺたのように真っ赤な風船を。イナリにとっては風船なんかよりもユキトおにいちゃんのほうがずっと大事なのだ。ユキトは自分のためにイナリが流した涙を長時間眺めていればあっという間に傷が全治するような変態ドS野郎ではない。
「泣かないで。かわいいお顔がクシャクシャになっていますよ」
泣いているイナリにユキトは優しく声をかける
「え?」
イナリはユキトの顔を見つめた。
「僕は今、とっても幸せです。高い木に登っていたらカブトムシになったみたいでワクワクできました。それより何より木に挟まった風船を取ってイナリちゃんの役に立てたことが嬉しかったです。」
ユキトは破顔一笑した。
「……ユキトお兄ちゃん」
イナリはピタリと泣き止んだ。
「せっかくの風船が台無しになってしまいましたね。これで新しい風船を買ってきてください」
ユキトは小さな手のひらに五百円玉を乗せる。
「……うん。ユキトおにいちゃん、ありがとう! だ~いすき♡ また遊んでね♡」
イナリは五百円玉を握りしめるとユキトをぎゅっと抱きしめ風船屋さんへ向かった。
夢か現か、遠くに行くにつれ小さくなっていくイナリのお尻からは手触りの良さそうなキツネの尻尾が頭からはもふもふしたくなる狐耳がにょきっと覗いた!
「……あれ!? イナリさんにキツネの尻尾と耳が生えてる!? 気持ちが高揚しているときは不思議なモノが視えて楽しいです♪」
そうは言ってもからだ全部が痛い。イナリの役に立てたことが嬉しくて気づけていないものの骨折に加えて酷い打撲痕もできているかもしれない。さて、ユキトはふと首を傾げた。イナリの風船を取ってあげることにばかり気を取られてすっかり忘れてしまっていたことがある。
「そういえばどうして僕はこの街に来たんだっけ?」
一瞬で思い出した。ユキトは行かなければならない。ユキトにはこの街で己を待っている女の子がいるのだ。
「どうやら足が動きそうにありませんが、このままじっとしている訳にはいきません。」
立とうとしても、激しい苦痛に襲われる。ここは救急車を呼んだほうが賢いのだろうか。
「入院なんかしたら……きっと一週間は安静にしなきゃいけなくなる! 約束の日は今日なのに……」
それに約束の女の子はお嬢様だ。
病院にやってくるなり、
病院で出される食事をガン無視で
入院中のユキトの口に
『ユキト様にふさわしいゴージャスでエレガントなお料理をお召し上がりください』と
ステーキやら高級料亭から取り寄せた豪華マグロ握りをむりやり入れる可能性が高い。
「ど……どうしようかなぁ??」
ユキトが頭を抱えた瞬間、唐突に奇跡(?)が起きた。
「お金が…………………降ってきた!?」
信じられないことに大量の札束が30000枚近くどーんと降ってきたのだ!
しかも夢にまで見た1万円札だ。
中東には女神が天からマナというパンを降らせて人々を助けたという伝承がある。
対して味のしないパンをわざわざ天に降らせてもらうくらいなら、アンパンマンに美味しい顔を食べさせてもらえばよかったのにと日本人は思う。それはともかく、現代日本ではパンでもアンパンマンでもなくお金が天から降ってきたという伝承が今、追加された。
「これって……真逆!?」
ユキトは若干嫌な予感を覚えた。
とりあえず心のなかでは女神様にアーメンと唱えておく。
その奇跡をマッチ売りの女の子にも起こしてほしかったです、と付け加えて。
全身に怪我を負いながらも、救急車を呼んで病院に直行するか
無理をしてでも己を待ってくれている女の子のもとへ行くかで葛藤していたら、
いきなりお金が降ってくるという
「お待ちしていましたわ! 私たちはやはり運命の赤い糸で結ばれていましたのね!」
ユキトの嫌な予感はだいぶ的中していたのだ。
「ひ、ひ、ひ、ひめかさん!?」
ユキトは震えた声で語った。異国の宝石のような瞳、耳がとろける上品な美声、太陽のごとく輝く金色のツインテール、絢爛な桃色のドレスに一切負けていない美しい体つき、国内随一の慈善家と名高い大企業のご令嬢というステータス
どれをとってもおとぎ話のお姫様が実在するとすれば彼女に違いないと誰もが言い放つ究極の美少女・天上院ひめかの名を。
「うふふふふふふふふ! よく来てくださいましたわ!
世界で最も美しくて華奢で可愛らしい王子様である貴方と、
ちょっぴりドジだけど才色兼備なお姫様である私のために
華燭の
朗らかに語る楚々とした声にユキトは青ざめる。
怪我をしていることをくれぐれも悟られてはならない。
「さぁ、お姫様の私と夫婦になり、一緒に国民の皆様をいえ世界中のすべての人を幸せにいたしましょう! でも、久々に出逢ってくださった記念に我が王家の財産2900億円をど~んと差し上げますわよ!」
先程よりも激しく一万円が降ってきた! 雨で言えばパラパラがザーザーになった感じだ!
180cm以上あるユキトの全身が大量の札束に埋もれ見えなくなっていく。
ユキトはなんとか頑張って札束を払いのけると笑顔をつくった。
「相変わらずお元気ですね。ひめかさん。このお金は世界中の人が幸せになるために使わせていただきます」
(ひめかさん、僕はあなたを笑顔にするためにこの街に来る約束でした。あなたを泣かせては約束が違います。だから、怪我をしていることをあなたに悟られないようにしなければ)
ユキトの儚い望みは斜め上の展開を迎えた
「ま、まぁ、やはりユキト様の華奢な身体にこんなに酷い傷がありましたのね! 」
ユキトの心臓が縮み上がった。
「4年前にお会いしたあの日、常日頃から国民のために励んでおられるユキト様には、名誉の負傷があると直感し、いつか傷を癒やして差し上げたいと思っていましたが、真逆これほどとは……」
ひめかに怪我が一瞬でバレたのだ
(ひ、ひめかさんに怪我がバレた!)
ユキトは心の中で震えた声を発する
顔面蒼白のユキトが必死でなにか喋ろうと口をもごもごしていると、
ひめかが感動のあまり(ラーメンの丼ぶりいっぱい分くらい)涙を流し始めた
「ひめか、ユキト様の優しいお心に改めて感動いたしましたわ(涙声)!」
「ひ、ひ、ひ、ひめかさん………こ、これは……その……」
ユキトは尚も諦めず誤魔化そう言葉を探している。
いつの間にか涙が消えていたひめかが自信満々な口調でいきなり突拍子もないことを言い出した
「えっへん! あるときは才色兼備なお嬢様
またあるときは心の美しさにおいても美貌においても白雪姫と肩を並べる国民の皆様がだ~いすきなお姫様! でも、それは世を忍ぶ仮の姿ですわ! 」
「な、なんですってぇええええ!?」
ユキトは目の玉が飛び出そうになった。
「……ネコ様もしゃくし様もオタマジャクシ様だってあえかなりとお褒めになられるユキト様の華奢な身体が受けた傷の痛みは、私が治癒させていただきますわ! とっておきの魔法をお見せします!」
「何を隠しましょう! 私、天上院ひめかこそ……生きとし生けるものを愛し、慈しみ、守護させて頂くために女神ソフィア様の詔を受け、現世につかわされし魔法少女なのですから……」
ひめかの唐突な告白にユキトは数秒間硬直した。
「え、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ユキトは無論、お腹の底から絶叫した。
「ま、ま、魔法少女って……ひめかさん、貴女が……"本物の魔法少女"なのですか!?」
恐る恐る尋ねるユキト。ひめかがアニメの見すぎによるごっこ遊びで魔法少女と名乗っているのなら止めるように注意しなければならない。ユキトは何も厨二病を治療しろと言うつもりはない。魔法少女を名乗ればそれだけで"世界ノ敵"に虎視眈々と狙われてしまうのだ。
「はい! 私はお姫様として魔法少女として世界中の人を幸せにして差し上げたいわ♡。 赤ちゃんの頃、女神ソフィア様とも約束いたしましたから」
ひめかは元気よく返事をすると、Vサインをつくり、左目でウィンクした。魔法少女とはあまねく生命を慈しむ女神ソフィアに遣わされた"救世主" とされる少女たちを指す。
「…………ユキト様の一族に生まれた殿方は魔法少女を愛し、理解し、覚醒させる唯一無二の存在ですのよね! 龍神様や女神ソフィア様からお聞きしましたわ」
ユキトは確信した。
「貴方こそ、僕が旅の人形使いを続けながら……探し求めていた……魔法少女なのですね……ええ。僕はいずれ神々の黄昏の戦いに臨まれるみなさんの勝利をお祈りしています。世界の敵にはくれぐれもお気をつけてください」
ユキトは静かに首を縦に振った。
「では、左腕を拝見させていただいてもよろしいですこと?」
「ええ」
ユキトは左の袖を脱いだ。
「まぁ、そちらの左腕の焔の紋章、ご立派ですわ」
ひめかはユキトの左腕に描かれた燃え盛る炎の紋章を唇で愛撫でした。
「ひ、ひ、ひ、ひめかさん!? い、いきなり左腕に口づけをいただいたら、僕、恥ずかしいじゃないですか」
ユキトは凄まじく照れる。
「まぁ、相変わらず初心ですのね! 可愛い♡
別に唇と唇が近づいたわけでもありませんのに……」
「ひ、ひめかさん……」
ひめかの言動に困惑しながらも何とか持ち直す。
「それにしても、ひめかさんも魔法少女に覚醒していたのですね。魔法少女……その声は永遠に聞く者の耳を麗し、内なる精神は
「ええ。わたくしにお任せください。特に愛するユキト様の素敵なプライベートな箇所(意味深)は御守りしますわ♡ ユキト王子様に処女を捧げるのはこのひめか姫ですもの」
「も、もう……ひめかさんったら(照)」
ユキトは夕焼けのように真っ赤になった
「ユキト様にはお元気でいてもらわなくてはなりませんわね! 将来生まれるであろう私達王家の赤ちゃんのためにも……」
「あ、赤ちゃん!?」
ひめかはすぐに凛とした表情をつくった
「わたくしとユキト様の間にいつか生まれる赤ちゃんのためにも、魔法少女ひめかちゃんが、ユキト様のお身体が受けた大きな傷跡を、これより聖なる魔法の力を以て、癒やし尽くしてさしあげますわ。」
「ぐ、ぐだぐだ言ってないで、もっと早くからそうしてくださいよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ユキトのツッコミが多分海の果てまで響いた
ひめかは凛とした表情から一転、眉を落とした。魂の抜けたような顔でひめかは謝る。涙目だ。
「ごめんなさい。愛しい王子様と一緒にいるとつい笑顔になってしまいますの」
ひめかは直ぐに凛とした表情に戻ると、セクシーな声音で『うふっ』と笑い、可愛らしい髪飾りを取り出した。
「ど、どこから出してるんですか!?」
「あら、胸の谷間からですわよ」。
ひめかは艷やかなツインテールにティアラを刺すと、両目を閉じる。そして、手を組んだ。
詠唱を唱える準備はOKだ。
「そよ風は吹く度にいつも笑顔を運んでくださいますわね。
夕焼けよりも真っ赤なルビィ
海よりも蒼いアクアマリン
そんな色とりどりの宝石よりも笑顔の輝きの方が美しいですわ。
夢の中でも涙を笑顔に変えるねむり姫。
雪のように白く美しい肌に相応しい清らかなる心を宿して生まれた白雪姫。
どんなに意地悪をされても、希望、優しさを捨てずに純粋無垢を貫いたシンデレラ。
女の子はいつかそれはそれは素敵な王子様と結ばれる運命にあります。女の子は誰でもお姫様ですから。
お姫様の願い事はいつも王家を下僕を自国の民の皆様を異国の民の皆様を等しく笑顔にすることです。
お姫様とは、世界の果てまで皆様の笑顔を運ぶそよ風のような乙女ですから。
例えお城から一歩も出られなくても
例えお勉強ばかりで自由がなくても
例えお父様やお母様に厳しく叱られても
例え乙女らしい恋ができなくても
例えこの生命の蝋燭の火が尽きても
私はめげませんわ。私は泣きませんわ。私の心は負けませんわ!!! 私、お姫様になって……世界樹に支えられし九つの世界を、よくしたいです。お砂糖と生クリームがたっぷりの甘い甘いお菓子のようにね…………世界をありがとう"と"だいすき".で一杯にしてみせますわ。
つまらない隔たりが無くなり、
傷つけ合う哀しみの雨が止めば、
空にはきっと、虹がかかりますわ。
どんなに小さな努力の石も積み上げれば立派なお城が立ちます。そう、私は永遠なるお姫様ですわ。 お姫様とは……宝石や真珠よりも輝く生きとし生ける者の笑顔を……ひらひらと翻りながら運ぶことのできる……そよ風のような乙女ですから!!!!」
ひめかの身体が足の爪先から首の付け根まで眩い七色の光に包まれる。
唇は薔薇のように紅く、瞳の色はかすかに紅がかった淡い空色に染まる。艶のある金色のツインテールが、毛先から更に鮮やかな色に染まり、大きな胸が更に蠱惑的に膨らんだ。
「ひめかさん………貴女は……伝説に謳われたどの魔法少女よりもお美しいですね」
ユキトはつぶやいた。ひめかの神々しい姿に目を奪われたのだ。
どんなに眩い輝きを放つ高価な
「華やぐ心は、ラブリーでエレガントなお姫様のティアラで王冠で生命ですわ。 お姫様とは輝く笑顔を運ぶ優雅な風のような、気高く優しい乙女です!」
魔法少女は高らかに名乗った
「吹く度に笑顔を運ぶは、優雅なるそよ風! 私の名はプリティーワルキューレ・ザ・エレガントティアラ!」
魔法少女は喜色満面の笑みを浮かべユキトを見つめた
「ユキト様の痛みは……ちちんぷいぷいで、ハッピーに変えてさしあげますわ!」
魔法少女は、詠唱を唱え始めた。
「天にいます慈しみ深き光の女王よ! 今こそ、其の聖なる力を以て尊キ生命ヲ癒やし給え!」
ユキトの身体を煌めく光が優しく包み込む
(…………ひめかさんの魔法、気持ちいいなぁ)
国語辞典を丸暗記しても言い尽くせないような心地よさがユキトの瞼を閉じていく。
「愛故に
ユキトの身体から傷跡が跡形もなく消えた。
まるで、傷跡など最初からなかったかのように……。
(すぅ……すぅ……)
ユキトは、下手な美女よりも見栄えがする程整った顔立ちや魅力的な声質に相応しい安らかな寝息を立て始めた。
ひめかはぐっすり眠ったユキトの頬に優しいキスをした。
「ユキト様ったら寝顔まで王子様みたいにキュートですのね♡ 貴方はどれだけ私をドキドキさせれば気が済むのかしら?」
ひめかは変身を解除した。
「うふふふ、お姫様抱っこ改め王子様抱っこですわ。私の王子様が今、お目覚めになったら、またまた、ポッと赤くなってしまわれるわね……」
ひめかは、ユキトを逆お姫様抱っこした。
付近の駐車場で鎮座していた自家用タクシーにうつらうつらしているユキトを乗せる。
ひめかは自家用タクシーの運転手さんにユキトを紹介した。
運転手さんは古代ギリシャの英雄や神の彫刻を想起させる男前だ。
「運転手様、紹介しますわ! こちらのビスクドールのように可愛らしい殿方が私の未来の旦那様ですわ。まぁ、子猫のような寝顔でいじらしく寝息を立てていらっしゃいますわね♡ なんてお可愛らしいのかしら! お休み中のようですから音を立てないでいただければ、私は嬉しくてよ。
殿方の心地よい眠りをお守りするのもレディのつとめですわ。ユキト様は……きっと……華胥之夢の中でも私を癒やしていてくださっていますわね……(小声)」
運転手さんは小声で話してもはっきり聞こえるオペラ歌手のようなバリトンボイスで、
「かしこまりました。
ユキトを乗せた自家製タクシーは、中世ヨーロッパの貴族が住んでいても不思議ではないくらいには、絢爛豪奢なお屋敷へ向かって走り出した。
「ぐふふ~
遠い意識の向こうから、艶美な声が聞こえてくる。
「はじめましてぇ~ 私の王子様。貴方のお姉ちゃんですよぉ~! じゃあ、早速ぅ夢の中でもぉお姉ちゃんと一つに溶け合っちゃいましょ。……なーんちゃって、ぐふふ! どこから見ても可愛いわぁ♡」
耳がくすぐったくなるような、思わず甘えたくなるような、世界一フェロモンたっぷりなお姉さんの声。
「うふふ~ 眠れる森の可愛くて優しい王子様は可愛くてエ◯チなお姫様のキスで目覚めてぇ、ハッピーエンドよぉ♡」
誰かの妖艶な紅唇がユキトの頬に触れた。紅唇の跡が頬に残っている。ユキトは、はっと瞼を開き、呆気に取られた
「ここは……!一体!?」
ユキトは今、マシュマロよりもふかふかしたベットの上にいた。
ベットは勿論枕やクッションもマシュマロよりもふかふかしている。床にはスペイン製の高級絨毯が惹かれており、電気代わりに巨大なシャンデリアが置いてある。
ユキトの隣で寝転がっているのは、
美女と言っても色々いるが、彼女ほど高レベルな美女が、横で寝転がっていたのはクニサキ・ユキト22年の人生で初めての経験である。
肉づきがよくて美しい身体に全く負けていないその美貌は、魚や雁も恥じらって身を隠し、お月様でも恥じらい隠れてしまい、花でも恥じらい蕾を閉じてしまいそうだ。
「ご、ごめんなさい。僕みたいな駄目な男の子が……こ、こ、こんなふかふかなベットの上で勝手に眠ってしまうなんて……」
ユキトはお姉さんの正体よりも自分が超美人なお姉さんに迷惑を掛けてないかどうかが気になるようだ。
「僕、ご迷惑をおかけしませんでしたか!? 例えば……"寝言"とか……"よだれ"とか……」
自分の頭を両手で殴りながら謝るユキトを無視して、艶美な声はなおも語る
「そしてぇ、お姫様と王子様はねぇ、国民が若い子もおじいさんやおばあさんも男性も女性もみんながニコニコハッピーになれるようにぃ、こーんなステキなおふれを出すのぉ。」
(ぼ、僕の話は……全然聞いてないのね……)
「"親愛なる国民の皆さん♡、男性も女性も出会い頭にハメハメしてくださいねぇ~"って。ハメハメするっていうのは気持ちいいことしましょってことよ」
「え、そ、そ、その……気持ちいいことって………ひょっとして!?」
「そうなのぉ、ひょっとするとねぇ、『エ◯チなことをしましょ♪』っていうことなのよぉ~ うふふ♡」
ユキトはひどく赤面した。目の前の超美人なお姉さんが上機嫌で喋っていることに関してはとりあえずほっと胸をなでおろし、ユキトは心のなかで "僕があなたという美人なお姉さんにご迷惑をかけてさえいなければそれでいいんです" と呟いた。
「要するにい~っぱい気持ちよくなれば、みんながお友達になれるのよ♡ お友達になるために~ヒトは出会うんだよ~♪ どこのどんなヒトともきっとわかりあえるさ♫」
「お歌、お上手ですね」
ユキトは超美人なお姉さんの高い歌唱力を、天使のような美声を、心底から称賛した。嘘偽りのない本音だ。
「わ、私のお歌を上手って言ってくれるなんて……お姉さん、嬉しくって……も~~っと歌いたくなっちゃった♡ でも、その前にぃ………ユキトちゃんにご褒美あげなくちゃね!」
それを聞いたユキトの背後に冷たいものが走った。ユキトの貞操に危機が迫っている!
超美人なお姉さんは掛け布団を引き剥がすと同時に
「お、お、お、お、お、お姉さん!?」
超美人なお姉さんは、ハイセンスな服を脱いで全裸になった。
「どうかしらぁ? お姉さんのおっぱいはFカップなのよぉん!? いつでも揉み揉みしてちょうだぁい」
情欲をかき立てる豊胸がユキトを誘惑する。
「いい子にはご褒美が必要よ♡ ご褒美はやっぱり"エ◯チなこと"じゃなくっちゃ…まず、おっぱいを好きなだけ、揉み揉みしたら……さぁ、恥ずかしがらないで貴方も純潔の束縛から解放されましょ♪」
お姉さんがユキトの纏っていた衣類を脱がそうと手を伸ばした瞬間ーーーーーー
「ユキトおにいちゃーーーーん! だ~いすきぃいいいいい!!!!!」
耳に覚えのある銀の鈴をふるような声がユキトの名を呼んだ。超美人なお姉さんとは逆方向から声がしたのだ。
「イ、イナリちゃん!?」
ユキトは振り返った。
声の主は、モコモコの狐耳と尻尾を生やしたあの無垢な美少女・イナリであった。
しかも、いきなりベットに向かっていきよいよくジャンピングしてきた!
「すり……すり……すり……すり……」
イナリはユキトおにいちゃんをやっぱりすりすりし始める。
「あら、イナリちゃんじゃない! 可愛い妖狐さんは、初心で可愛い人間の男の子とエ◯チなことをしましょーねー♡ 擲果満車というよりも仙姿玉質な人間の男の子とね……」
(仙姿玉質って、本当なら……僕よりも貴女のことですよ……「仙姿」は仙女っていう意味ですし、「玉質」は宝玉のようになめらかで美しい女性のお肌のことです。貴女みたいに美人なお姉さんを形容する四字熟語ですよ……)
ユキトは心の中でつぶやきつつ、こう言った。
「こ、この状況は……一体!?」
困惑するユキトに構わず、イナリはすりすりしながら、
「イナリちゃん、やさしくてあったかいからにんげんさんのおとこのひとが、ダイスキなんだ。ぎゅ~」
ユキトに抱きついた。
「でも、およめさんになりたいな~っておもったのはユキトおにいちゃんがはじめてだよ」
今更だが、ユキトは目覚めてから開いた口が塞がらない。
「あっ! ユキトおにいちゃんにあえたのがうれしくって、いいわすれちゃってたけどね……イナリちゃんはね、ようこ(妖狐)っていうしゅぞくなの。やさしくてあったかいにんげんさんをえがおにするために、めがみさまのせかいからきたんだよ! にんげんさんのせかいはふうせんがいっぱいでたのしいな♪」
超美人なお姉さんが付け加える。
「妖狐さんはね、人間とエ◯チなことをするのが生き甲斐なのよ! 今度、わたしのお友達の "キツネお姉さん" を紹介してあげるわね……」
ユキトはとっくに貞操を諦めた。
「うん、そうなの! それじゃあ、さっそく………………………………」
超美人なお姉さんもイナリも夢心地だ。
「気持ちいいことはとってもいいこと! エ◯チなこと、シちゃいましょ♪」
ユキトの貞操に嘗てない危機が迫った!
その瞬間……
「ちょ、ちょっとぉおおおお!? モモお姉ちゃん先生! ……はいつもどうりだからともかく……イナリちゃんまで何ヤッてるんですか!? ユキトお兄様がいやがってらっしゃるのがわからないんですか!? 男の子は
「まぁ、ぷんぷんしてるお顔も可愛いいわね♡ 私みたい」
「フフ……イナリちゃんだよ♪ イナリちゃんはね、きょうもつねたんちゃんにあえてうれしいな~」
萌え萌えな声がユキトを救った。
その声音は怒っていた。
声が甘ったるすぎて迫力はゼロだ。
怖いどころか可愛いくらいだ。
「た……た……助かった」
ユキトはほっとため息をつく
「助かったけど、ありがたいような……お姉さんたちに何か申し訳ないような……複雑な気持ちです」
ユキトは、二人の変態(うち幼女一名は多分状況がわかってない)に対して『大人しくエ◯チなことをしてあげたらよかったのかも』と罪悪感を感じつつ、己を救った萌え萌えな声の主を探して、大きなベットに占領された広い部屋をキョロキョロする。
ユキトは直ぐに萌え萌えな声の主を視界に入れた。
「あと、ここはひめかさんがユキトお兄様のため、特別に用意してくださったユキトお兄様専用のベットルームですから、ノック無しで入らないでください!」
巫女服のよく似合う可憐な狐耳の少女がそこにいた。
彼女も恐らくはイナリ同様に妖狐であろう。
太い眉毛が素直そうだ。
狐耳がイナリのそれよりもピンと立っていた
真っ直ぐな瞳がとても大きい。
「ぐふふ~お姉さん、ユキトちゃんのアレ、早くしゃぶりたいわぁ」
「ぜ、全然聞いてないし……」
肌が雪のように白い。
唇の色は、緋唇というより薄桃色の唇だ。
トドのつまり、美少女だ。
狐耳の美少女は密かに胸をえぐられる思いと戦っている。
「え……えっと……ユキトお兄様とやりたいことは、まず、お星様占いと……あと、おはようのキス(照)。それから私のお名前を覚えてもらって……あとは……だ、駄目!!
せっかく王子様がいるのに……ドキドキして……近づくことも出来ないなんて……
こんなに意気地なしじゃ、嫌われちゃうかな?」
「つねたんおねぇちゃんは、ユキトおにいちゃんにエ◯チなこと、シないの?」
もじもじしているつねたんにイナリが無情にも声をかけた。
「イ、イナリちゃん、わ、わ、私は……えっと……その……」
「まぁ、照れ屋さんねぇ~お顔に紅葉を散らしているみたいよぉん」
「ユキト様、お目覚めのおやつの時間ですわ! 最高級フルーツパフェと最高級チョコレートパフェの大盛りをご用意しましたわよ♡ あら、"つねたん"ちゃん様とイナリちゃん様に桃お姉様までいらしてましたのね!
皆さんが賑やかで楽しそうで大変うれしいですわ!」
ひめかが、高級スイーツを両手に
部屋に上がり込んできた。
つねたんは、待ってましたとばかりに進み出た。
「ねぇ、ひめかさん、ちょっと聞いてくださいよぉ。つねたんちゃんがね、ユキトお兄様におはようのキスとあとお星様占いをして差し上げたくて入ってきたら、イナリちゃんとモモお姉ちゃん先生がお部屋を散らか……って聞いてないし!」
無常にも、ひめかはユキト様に現を抜かしていた。
つねたんは涙目だ。
ひめかはニッコリと微笑んだ。
ユキトとつねたんは嫌な予感しかしない。
「ちょうどよかったですわ! みんなで食べたほうが、ほっぺたが落ちちゃうくらい美味しいですもの! つねたんちゃん様とイナリちゃん様の分と桃お姉様の分もご用意いたしますわね。
最高級の紅茶にパフェはいかがかしら?
お口汚しにはきっといたしませんわ。」
「うふふ~ユキトちゃんのアレも美味しそうだけれど、パフェも美味しそうねぇ♡」
「ユキトさんのアレは食べられませんよ……」
「イナリちゃん、パフェだ~いすき!」
案の定、つねたんとユキトの絶叫が多分彼方まで届いた。
1.いもーとひろいん
「…………………というラッキースケベてんかいさーん、世界一クールでキュート!というまさにりりぃちゃん自慢のユキトおにぃちゃんのところに来てね! もし来てくれたらりりぃちゃんが、生クリームたっぷりのパフェをごちそうしちゃいまーす!」
七月七日の夕方であった。りりぃちゃんという童顔ながらも引き込まれる瞳孔をした色白の女の子……とどのつまり、美少女が短冊に願い事を書きつつ、ラッキースケベてんかいを呼んで(?)いた。りりぃはおにいちゃんっ子なのだ。おにぃちゃんへの愛情が袋の中から零れそうなくらいたっぷりつまっている分、願い事の内容も書くのが嫌になりそうなくらい長い。
一応、ぎりぎり短冊に収まったようだ。
そんな願い事を簡単に要約すればーーーーーー
『敬愛してやまないユキトおにぃちゃんが、ロリ妖狐や自称お姫様で正真正銘のお嬢様が変身する魔法少女や妖美で謎多きお姉さんに迫られるというライトノベルでもベタすぎて誰も思いつかないような展開に運良く遭遇しますように』とまぁ、妹さえの主人公が、夕飯の目玉焼きハンバーグを目にした子供のように激しく食いつくであろう妹ヒロイン100%の内容である。
「ユキトおにぃちゃんが、いっぱいラッキースケベな目にあって、しあわせになりますように……。ああ、りりぃちゃんってなんてすてきなおねがいごとをかんがえられるいもうとなんでしょう~」
りりぃは、おにいちゃん思いな自分の性格自体に感動して、ゆっくりと目をつぶり、喜びを噛みしめていた。
「りりぃちゃんは、これからもおにぃちゃんのこと、だいだいだーいすきだからね!!!!!!!!」
りりぃは真っ赤な唇を噛みしめ、胸に手を当てた。
りりぃは感涙に咽んで(?)いる。
だから、涙で前が見えなくて、おにぃちゃんが帰ってきたことに気づかなかった。
「ラ、ラ、ラ、ラッキースケベェエエエエエエエエエ!?」
いつの間にか帰宅していたおにいちゃんが、絶叫する声でりりぃは現実へと無事帰還した。
涙も一瞬で乾いたようだ。
「た、た、た、短冊に恥ずかしいワードを書かないでくださいよ」
りりぃのおにぃちゃんの名前はユキトだ。ユキトは、人形を操り、寂しがっている子どもたちを元気づけてあげる "人形使い" という仕事をしている。そして、訳あってりりぃちゃんのお義兄ちゃんをしてあげている。
そんなユキトおにぃちゃんは、酷く赤面していた。
「あら、ユキトおにぃちゃん、お人形さん、おかえりなさい! 今日もお仕事おつかれ様です。」
りりぃはユキトおにぃちゃんの懇願を華麗にスルーした。
(か、可愛い……貴女が……僕の義理の妹でよかったよ……貴女より可愛い義理の妹を探すことは、砂漠でこぶのないラクダを探すようなものだから……)
大好きなおにぃちゃんが帰宅したので、有頂天外なりりぃの愛くるしい笑顔にいつもながら、癒やされ、ますます、赤面するユキト。
「今日のお夕飯もユキトおにぃちゃんが、りりぃちゃんの次にすきな『オムライス』ですよ!
ウフフ……ユキトおにぃちゃんって照れ屋さんですね。ゆで卵みたいにつやつやのお肌のユキトおにぃちゃんのお顔が耳までまっかっか! お肌にケチャップをつけたみたーい!」
りりぃちゃん、そこは『トマトみたーい』という例えもありだよ。
「そ・し・て・オムライスには……ケチャップで『ユキトおにいちゃんだいすき』って描いておきましたからね!」
ユキトおにぃちゃんの、悲痛な叫びは義妹には届かないらしい。
とりあえず、ユキトおにぃちゃんは手洗いうがいを済ませるべく、洗面所へ行く。
「ちゃんと手を洗ってお手々のバイキンさんをやっつけたら、今度は、うがいで喉のバイキンさんまできちんとやっつけてるね! ユキトおにぃちゃん、えらいえらーい!ユキトおにぃちゃんの、社長!校長先生!女王様!女大統領!女神様!」
「ぼ、僕は……こ、これでも……お、男の子ですよ……!?」
「さぁ、召し上がれ!」
それは見ているだけで、喉が鳴るオムライスだた。
オムライスの卵とケチャップのハーモニーが生み出すかぐわしい香りが、これ以上ないくらいに鼻をくすぐる。
一刻も早く口に入れたいのに、誰もが疾きこと風の如くの勢いで、恥じらいを忘れてもりもり食べたいくらいに美味しそうなオムライスなのに、同時に『勿体なくて食べられないな』という矛盾した感情を全人類に抱かせるような、そんなオムライスだ。ケチャップで大きく描かれ、真心のこもった『ユキトおにぃちゃんだいすき』の文字には、この話を読んでくださっているみなさんなら感動のあまり、思わず涙するだろう。
「うわぁ~今日も美味しそうだね! このふわとろな感触は、お口の中でとろけちゃいそうですね!。りりぃちゃんのオムライスは、ほっぺたが落ち過ぎてほっぺたがいくつあってもたりないくらい美味しいんだよねぇ~」
ユキトの声は弾んでいる。ユキトは、声を弾ませて、知らず知らずのうちに、普段オムライスを余り好んで食べない人さえも、りりぃの作るオムライスに抱く感情を代弁していた。
「いただきます」
ユキトは手を合わせた。
「いただいちゃってください! 今夜こそ、デザートには、りりぃちゃんを食べてね!」
りりぃの容姿を形容すればシンプルに『美少女』の一言に尽きる。サイドヘアーがよく似合うりりぃは、生クリームよりも甘くてとろけるようにキュートな声で話す。
「え!?……ぼ、僕が……り、りりぃちゃんを……食べるなんて……食事中に……そんな……恥ずかしいこと……言わないでよ……」
「じゃあ、ご飯が済んだら、りりぃちゃんを食べる代わりに、りりぃちゃんの蜜◯ボを舐めてね!」
「いや、その理屈は可笑しいですよ!」
(このように、りりぃは、透き通った声をしているのに、声質に不釣り合いなエ◯チな単語を息を吐くように言う、大の下ネタ好きだ。そこを除けば乙女チックな性格だけど、乙女というよりは義妹の
「ラッキースケベさーん、ユキトおにいちゃんのところに来てくれたら、パフェをごちそうしてあげるね!」
ラッキースケベとは、ライトノベルやアニメにおいて主人公の少年が偶然、女性の素肌に触れてしまったり、見てはいけない箇所を見てしまうことだ。展開は人ではないので、多分りりぃが呼んでもユキトおにぃちゃんのところへは来てくれないだろうし、パフェだって食べられない
「ユキトおにいちゃんのところにきてくれたら、パフェをごちそうしてあげる約束もしたし、たんざくにおねがいごともかいたから、きっときてくれるね! ラッキースケベさん。あとは、ささたけにたんざくをつるすだけ」
りりぃは、短冊に願い事を書いた願い事を、堂々と笹竹に吊るした。
「りりぃちゃんばっかりが、ステキ度ムテキなユキトお義兄ちゃんとエッチなことがいっぱいできるなんてふこーへいです! 女の子はみんな、ユキトおにぃちゃんとエッチなことをするケンリがあるのです。」
「そ、そんな恥ずかしい権利は要らないじゃないですかぁあああああああああ!?」
「だってぇ、しらゆきひめとおなじくらいゆきをあざむくようなシロハダで、なまえもないおはなをふめないくらいやさしくてこーけつむひなユキトおにぃちゃんがとおった場所は、おはなばたけになっちゃうんだもん♡ ずばり、お鼻に心地いいニオいで溢れ、キレイなお花がムゲンにさきみだれるお花畑はりりぃちゃんのぱらだいすなのだ!」
2.選ばれし者
神々の黄昏 薄雪姫 @KAGE345
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