「静かなる海」アダム・ミツキェヴィチ(ポーランド語)


 風は旗を揺らすことなく、

 澄んだ水はその胸の周りで遊ぶ。

 幸せを夢見る花嫁のように、

 それは起きて溜息をつきすぐまた眠る。


 戦の終わりて帆は旗のごときなり、

 それらは剥げたマストの上でまどろむ、

 船は繋がれたかのごとくわずかに揺れ動く。

 船乗りらは溜息をつき、乗客らは笑う。


 あな海よ、その幸ひなる怪物どもの間で、

 空の曇りたる時は眠りし磯巾着を底に抱き、

 その長き腕で静寂を保ちぬ。


 あな思ひよ、その深みには思ひ出の水蛇を抱き、

 不吉と嵐のさなかで眠るものよ。

 心の休まりし時には、その爪を沈めて隠さむ。







 ***

 原典:https://znanewiersze.pl/adam-mickiewicz/cisza-morska--ii-z-sonetow-krymskich

 参照:https://www.gutenberg.org/files/27069/27069-h/27069-h.htm#BECALMED

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