想い出して、忘れようとしたけど

 誰もいない校舎。


 今日で別れを告げる校舎。


 先生との想い出がたくさんある校舎。


 私の最初で最後の初めての恋がある校舎。


 ついに校門までやって来た。


「……行かないとね」


 そう呟いた私の言葉は私にしか届いていない。


 ここを出ると全てが終わる。


 そんなこと分かっている。


 分かっているからあと一歩を踏み出すことができない。まだ先生のことを好きでいたいからだ。先生とずっと一緒にいたいよ。


 けど、それは叶わない恋。


 だから私は恋を置いていくように出ていく。


「あっ!久成くなりまだ帰ってなかったの?」

「先生……」


 そんな決心を忘れさせてしまうかのように先生がやって来た。

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