2人っきりの教室

 教室。


 黒板には卒業おめでとうと書いてある。


 きっと、卒業式に合わせて後輩たちが書いてくれたはず。私には後輩と関わりはなかったけど。


 これを見ると改めて卒業したことを実感する。


 右前の窓際の席。


 ここが私の場所だった。


 授業がつまらない時はよく外を見ていた。少しずつ変化する風景をボーと見ていた。


 それに、ここは先生との想い出がある。


 2人っきりで補講してたんだ。

 いつも赤点を取ってた私に、丁寧に教えてくれて嬉しかったよ。


「今度こそ赤点回避してくれよ」

「がんばります!」

「よしっ、その意気だ。じゃあこれ解いてみな」

「どれどれ……先生、分かりません」

「さっきも教えただろ。それに昨日も教えたぞ」

「忘れちゃいました」

「せめてもう少し申し訳なさそうにしてくれ」


 先生知ってた?


 私はわざとテストの点数悪くしてたんだよ。


 勉強したらちゃんとできる子なんだよ。


 ただ、先生と一緒にいたかったから補講できるような点数を取ったんだ。合法的に、そして怪しまれることなく一緒にいられるのってそれだけだからね。


 私はちゃんと勉強できるからね。


 勘違いしないでよね。

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