まだ桜は咲かないけど、私の恋は散ろうとしている

長月紅葉

誰もいなくなった校舎で

 誰もいなくなった校舎。いつもは生徒で賑わっているのに、今日はそれが嘘のように静かだった。まるで、別世界に迷い込んでしまったようでもあった。


 そんな校舎を私は1人で歩いていた。


 同級生はもういない。きっと今頃は打ち上げとかしてるだろう。さっきクラスのグループで行く人募集してたから。どうやらカラオケ行ってから、ファミレスで駄弁るらしい。


 なんとも学園生らしい打ち上げだ。


 私はうるさいのが苦手だから参加しないけどね。それに、あまり仲のいい人いないし。


 窓から見える桜が咲きそうになっている。


 よく卒業ソングとかでは桜が咲いているみたいなことを歌っているけど、現実は全然咲いていない。理想と現実のギャップを感じてしまう。


 そんなことを考えながら、私は筒状の卒業証書を持っていた。


 そう、私は今日卒業をした。3年間通い続けた緋岩ひがん学園を卒業した。周りでは泣いている人が多かったけど、私は泣かなかった。


 私って冷めているのかな。


 本当なら帰るはず。けど、そんな気持ちになれずに、校舎に詰まった想い出を辿るようにして歩いていた。


 ここには私の想いが詰まっているからね。

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