なんとなくそんな気はしてた

 鉱山にダンジョン出現。

 しかも迂回路を塞ぐようにダンジョンが現れてしまった。


「この辺りに強い冒険者はいない」


「しかし崩落した岩をどけるのにも……いまだに温泉は噴き出している。どけようと手を出すとどうなるのか誰にもわからない」


「だが今から大きな都市に依頼を出して人を集めることなど難しいでしょう。ジケさんのおかげで食料や水はあっても熱さで体力を奪われる。坑道の中に留まれば精神的にも参ってしまう」


 ダンジョンが見つかったことを受けての話し合いはぐるぐると同じところを回っていた。

 ダンジョンを攻略しようにも鉱山が近くて人の出入りが多いこの地域では魔物が寄り付きにくく、尚且つ鉱山付近の魔物も定期的に倒される。


 魔物そのものの脅威度も高くないために周辺にいる冒険者はベテランであっても実力者は少ない。

 坑道に現れたダンジョンはミノタウロスが出てくる可能性が濃厚で、そうなると実力として高いレベル要求される。


 今から離れた町で人を集めて来るのを待っているなんてことをするのにも時間がかかってしまうのだ。

 だからといって崩落した岩をどけてしまうことにも決断はつかない。


 ただ岩をどければいいのではなく今だに温泉が噴き出しているので、温泉が噴き出していることや温泉が噴き出しながらの作業になることにどれだけの影響があるのか先が見通せないのである。


「このままでは話もまとまりません……ジケ様はどう思いますか?」


 堂々巡りすら会議にはジケも参加していた。

 もはやここまでくれば会議から外して関わらない方がおかしいぐらいなのでツケアワシがジケも呼んでいたのである。


「俺から一ついいか?」


「ええ、もちろんです」


 ダンジョンがあったという報告のためにグルゼイも同席していた。

 ジケに意見を求めたのだがこの状況で何か意見があるのならグルゼイでも全く構わなかった。


「ダンジョンを攻略すべきだ」


「……それはどうしてですか?」


 グルゼイが断言するように意見を述べてみんな注目する。


「崩落のことは分からんから俺には意見できない。しかしダンジョンのことなら少しは分かる。あのダンジョンには複数の入り口がある可能性が存在している」


「どういうことでしょうか?」


「考えてもみろ。発見された入り口からでは崩落現場までいけない。なのに崩落現場にミノタウロスがいたかもしれないという話がある」


「そっか……向こうの方にもミノタウロスがいるってことは向こうの方にミノタウロスが出なきゃいけないのか……」


 見つけたダンジョンの位置はアルケアンたちのところに行く道を塞いでしまっている。

 つまりアルケアンたちの方に行くことができないということなのである。


 そのはずなのに崩落した時にミノタウロスがいたかもしれないという話があった。

 まだミノタウロスがいたかどうか確定ではないものの仮にミノタウロスがいたのだとしたらそれはおかしな話となる。


 一度外に出てまた再び坑道に入ってくるはずもない。

 つまりミノタウロスが向こう側に行った秘密があるのだ。


 彷徨い歩いてどこかに繋がっている道を見つけた可能性もあったが、グルゼイはまた別の可能性を考えていた。

 ダンジョンの別の出入り口があるのではないか。


 基本的にダンジョンは一つの出入り口で発生するのだがまれに複数の出入り口を持つダンジョンも生まれることがある。

 グルゼイは迂回路に現れたミノタウロスも崩落現場に現れたミノタウロスも同じダンジョンから出てきた魔物であるが、出てきた出入り口が違うのではないかと予想したのである。


「なるほど……そのようなことがあるのですね」


 別の出入り口があるダンジョンはあまり有名でもない。

 ジケだけでなくツケアワシたちもそんなものがあるのかと驚いている。


「ダンジョンを攻略すれば消える可能性もあるし……」


「そうでなくとも向こう側に移動することができるかもしれないということか」


 ミノタウロスが出てきているということはダンジョンが長く放置されたことによるダンジョンブレイクという現象を起こしているということでもある。

 そうなるとかなり危険でダンジョンそのものも攻略しなければいけないものとはなっている。


「しかし誰が攻略を……」


「任せろ」


「えっ?」


 問題はダンジョンを攻略できる人がいないということである。

 またしても会議に停滞の雰囲気が流れ出したところでグルゼイがジケの肩に手を置いた。


「俺と弟子がやろう」

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【第十四章完結!】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  ※現在スライム注入中 犬型大 @Samondog

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