ミスリル鉱山、何潜む6
「これはどういうことですか?」
「……行ってみればわかる」
壁があるわけでもないのに何も見えないというのは初めてでジケは困惑しているが、グルゼイにはその原因がわかっているようだった。
「これは……」
「こんなところになぜ……」
進んで近づいても黒く塗りつぶされたように魔力感知はできない。
そしてとうとう目で見えるところまでやってきてジケを含めてみんなが驚いた。
「どうして階段が?」
ジケが魔力感知で見えなかったところには下に降りていく階段があったのである。
「これはダンジョンですね」
みんなの疑問に答えたのはニノサンであった。
あるはずのない階段、そしているはずのないミノタウロス。
ようやくその謎が解けたとグルゼイは思った。
「長いこと放置されてブレイクを起こしたダンジョンがあった。だからミノタウロスが不自然に鉱山の中にいた……」
ダンジョンはどこに発生するか分からない。
草原のど真ん中に現れることもあれば人里離れた山の中に現れることもある。
ジケが過去に聞いた話では一夜にして町中に現れたなんて話まであった。
鉱山の中にダンジョンができてもおかしな話ではないのである。
そしてダンジョンがあることでミノタウロスについても説明がつけられる。
崩落してしばらく人が入っていなかったことでダンジョンが放置されブレイクという魔物が外に出てきてしまう現象が起きた。
おそらくダンジョンに出てくる魔物がミノタウロスで、ブレイクによってミノタウロスはダンジョンの外に出てきた。
しかし出てきた先が真っ暗な鉱山の中だったために彷徨う個体がいて、今回の事故や不自然なミノタウロスの出現に繋がったのである。
「困りましたね……ここを抜けて向こうの道に行かねばならないのですが……」
ダンジョンが発生した。
このことはもちろん大きな問題である。
しかし今の状況においてもっと大きな問題があった。
その問題とはアルケアンたちについてだ。
今ダンジョンの階段の周りは三方が石でできた壁で囲まれている。
本来階段がある場所はそのまま抜けていける道だったはずなのである。
ただ道が塞がれているだけならダンジョンを避ければいいのだが、今通ろうとしていた道はアルケアンたちのところに行くために絶対通らなきゃいけない道であった。
「他に迂回できる道はないんですか?」
「内部図に載っていない道でもない限り……」
ビリードは険しい顔をして首を振る。
他の道は昔の崩落によって通れなくなってしまい、今通れる道はダンジョンが出現した道だけなのである。
「……一度撤退するぞ。どうするかはそちらの判断だが今このままダンジョンには飛び込めない」
こうなると選択肢は二つである。
アルケアンたちがいるところの崩落した岩をなんとか避けるか、ダンジョンを攻略して消してしまうかである。
消えないダンジョンという可能性もあるのでどちらにしても確実なことが言えない選択肢になってしまう。
ただダンジョンを攻略するにしても今そのまま突入するわけにはいかない。
ジケたちはダンジョンを見つけたところで引き返して外に出たのであった。
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