第4話 再会

 さらに次の日の放課後、僕たちは駅前のハンバーガーショップにいた。

 僕はコーラ、滝はオレンジジュース、真奈子先輩はポテトとコーラ。

「ほら、君らも食べなよ」

 そう言い、真奈子先輩はポテトを進めるが僕は緊張で食べられない。

 滝はじゃあといい、ポテトをもぐもぐと食べる。

 そうこうしていると二人組の女子高生が入ってきた。

「林さん、おまたせ」

 そう言いい、ロングヘアーの女子高生が向かいに座る。その後ろからあの逆ホームの美少女が姿をみせ、隣に腰かけた。

 間近で見るとやはりあの綾ちゃんが成長した姿に思える。

「こんにちは、麻川綾乃といいます」

 向かいのホームの美少女はそう名乗る。

 おかしいぞ、綾ちゃんの姓は井上じゃなかったけ。


「高橋広太郎君ね、覚えているわよ。ずいぶん久しぶりだよね」

 にこりと可愛らしい笑みを浮かべて、綾ちゃんは言った。

「やっぱり君は綾ちゃん。でも名前が……」

 僕は言い、乾いた喉を潤すためにコーラを飲んだ。

「それはね、私、麻川家の養子になったのよ。前に家ではいろいろあったからね……」

 いろいろのところを言うときだけ、綾ちゃんは目をふせた。

 それは滝の推測が正解だったことを意味するのだろう。

 虐待を受けていた綾ちゃんは僕の父親の通報を受けた行政の機関によりあの家庭から引き離された。父さん、今更ながら見直したよ。

 やがて資産家の麻川家に引き取られ、養子になった。

 そしてかつての過去は完全に消え去り、今は麗しのM女学院の生徒になったのだ。

「小さいときのこと、よく覚えているわ。こう君といるときだけつらいことを忘れることができたのよ……」

 おおきな瞳をわずかに潤ませて、綾ちゃんは言った。

 過去の自分はただ近所の女の子と遊んだだけだ。それがどうやら彼女の救いの一つになっていたのならこんなに嬉しいことはない。

「こう君、また会えてうれしいわ。せっかく会えたのだから、これからもよろしくね」

 おおきな瞳からは涙は完全に消えていた。


 ハンバーガーショップを出て、僕たちは綾ちゃんたちと別れた。

「なんだい、この展開は。ちょっとご都合主義がすぎるんですけど」 

 ぶーたれながら真奈子先輩は滝の秀麗な顔を見る。

「僕はいい小説のネタが手に入ったのでそれで十分ですよ」

 滝は秀麗な顔に笑みを浮かべた。

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波打つ町を出たところは再会 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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