第8話 ジン

「ジンと修行しとった癖に軟弱な身体じゃのう」

 肉体がボロボロになった俺を見下ろすようにハクレイが言ってくる。

「あそこまで完璧に流体リュウテイを喰らえばこうなる」

「それが軟弱じゃというのに...まぁでも紛い物の一撃はさすがに驚いたわ返そうにも返せない態勢に持ち込まれておったからのう」

「そらどうも、初手に全力掛けたかいがあるってもんだ」

 ハクレイはそれを聞いて愉快そうに笑う。

「そうかいそうかい!まぁ成長と言えば成長じゃの!駆け引きは大切じゃ。まぁあのキチガイ鍛冶師には駆け引きを持ち込もうとしたところで陽炎カゲロウを使われたらそれで終いじゃからの!駆け引きも大事じゃが素の技と力を重点的に育てんと永遠に一撃は届かんぞ」

「そういうハクレイさんは師匠に一撃与えたことあるのかよ」

 先ほどまで愉快そうな表情をしていたがハクレイは表情をがらりと変え真面目な面構えをする。

「4」

「4?4撃が一回のさいこ...」

「今までジンとやりあってきて与えた攻撃の回数は4回ということじゃ。ジンはな素で強すぎるのじゃ。魔法ありの武術、魔法混合戦闘なんか始めたら勝ち目は完全に消え失せ、一撃を与えること自体が不可能になるな、他にも素手で飾ってある仮面なんかつけられたら恐怖でちびりそうになるわい」

「そんな強いんだな...師匠って」

「そうじゃな、まともに現状やりあえるとしたら5か7つくらいしか思いつくやつはおらんのう」

「へぇどんな奴らなんだ?」

「それは教えんわ、いつか知ることになるやつもおるかもしれんが基本的に関わらんでいいやつ関わることそのものが危険な奴らじゃったりする。知らぬが吉というやつじゃ」

「そういうことか...それならもう話はやめて飯でも食うか」

「そうするかの」

 ハクレイはそういうと一人ドアのほうへと歩いていく。

「あの~ハクレイさん俺体動かないんすけど~」

 それを聞くとああそっか!みたいな面して俺のところに駆けよってくる。

 元まで来るとポケットからポーションを出してぶっかけてくる、顔面に。

「ブファ」

「いい面じゃの」

 気色の悪い笑顔で俺を見つめてくる。

「殴ってもいいか?いいよなこれ!?」

 さすがにイラっと来て心の愚痴を吐いてしまう。

「反撃するぞ」

 怖いから実行はしないでおこう。

「よ~しご飯ご飯~」

 そのままそそくさドアのほうへスキップしていく。

「現金なヤツじゃの」

 やれやれといった感じで俺に続きドアの元まで歩き始めるハクレイ。

 ありがたいことに食事は既にできていた。

 席に着くとハクレイが食事をよそってくれ楽しい団欒の時間を過ごした。

 次の日、今まで布団でしか寝たことがなかった俺はベットという新しい感覚に飲まれハクレイにたたき起こされたのだった...。

 

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鍛冶師の弟子~最強な師に届く一撃を求め学園へ~ 星宮 穹 @hosisora

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