壮大で毎話味わいの違う怪奇と食のフルコース、最後まで残さず召しあがれ!

最終話まで読んだ衝撃と感動と切なさで、上手くレビューが纏められる気がしない。

この作品は、ホームズポジション陰陽師(食いしん坊)とワトソンポジション婦警(食いしん坊)と幽霊(食いしん坊)が織りなす、怪奇にご飯を絡めた一話完結形式のお話です。一話一話のクオリティは高く、1・2話はこの作品に慣れるための前菜として入りやすく緩めに、3話からは更にパワーアップして各話全然味付けが違う、濃厚な物語が楽しめます。

作者さんの引き出しが多いので、直球ホラーから感動、ゆるいミステリー、若干変わった舞台と題材と各種取り揃えられていて、特に10話の感動は珠玉の出来。作品によってはここがピークになりかねないんだけども、この作品はコレ以降も空気の違う面白さを保証できます。読み始めたら止まらん、ギャグもブラックも感動もホラーも全部織り交ぜたこのテンションは読む麻薬、読むフルコース料理!

終始ゲタゲタ笑って怖がって時々泣いたりしんみりしているうちに最終話と来て、まあこれは普通においしいデザートだろう、くらいのノリで読んでると色々ぶん殴られて動けなくなります。一話完結ものとして各話面白く、長編ものの醍醐味もしっかり含んで、長く付き合った読者に予想以上のものをくれる作品です。

壮大で重さもあるのに、最後まで読んだ後の読後感は日常ものが終わってしまったくらいの、ほどよい切なさに収まるのがまた不思議。これも怪奇でしょうか?

全話読んだらお気に入りの回列挙祭りしよう、って思ってたけど、全話面白いから逆に挙げづらいな。最終話はまた別の感動として、単体エピソードとして個人的に好みなのはやっぱり第九話、「百年の愛」と第十話、「そう産むということ、そう産まれるということ」と第十七話「誰が為のものか」第二十話「かざぐるまの魂」あたりかな。

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