第12話 闇
皇帝の暗殺を確認した所で、魔法科学研究所のメンバーは次の行動に移る。
「この戦争を止めなければ」
「しかし団長、どうやって止めるというんです?我々の戦力では、簡単に行かないでしょう」
「そこも、ローアンに助けてもらう」
コスロスは、ローアンの肩を叩く。
「ローアンの召喚で戦場を混乱に陥れ、それに乗じて帝国と共和国の高官を殺害する。こっちは冒険者が主体だし、向こうは農民が主体だ。冒険者のほうが戦闘慣れしているが、どちらも集団行動を苦手としている。今回はそれを狙うつもりだ」
「そう上手く行きますかね?」
「どちらにせよ、皇帝は殺した。あとは煮るなり焼くなり自由だ」
そういって、メンバーの前に立つ。
「これからやるのは、国をひっくり返す重大なことだ。全員、気を引き締めて行くように」
「おう!」
メンバーが戦場に向かって走り出す。
コスロスは、ローアンに話しかける。
「何も緊張することはない。自分の信念が正しいことを証明するための戦いだと思え」
そういってコスロスも走り出す。
ローアンは、その背中を見ながらボソッと呟く。
「そうだよな。自分の信念が正しいもんな」
そういって、コスロスのことを追いかける。
戦場では矢と魔法が飛び交い、前線では剣と剣がぶつかり合っていた。
「全員、準備はいいな?」
ロスコスが合図する。それに反応するように、ローアンは魔法の詠唱を始めた。
『我に力を貸すは、幾億の命。小さきもの達よ、我の声に答えるならば顕現せよ!』
戦場の上空に、巨大な魔法陣が生成される。
『付加するは全てを食らい尽くす強靭な肉体』
魔法陣の色が約1680万色に光り輝く。
『
魔法陣から、黒い雲のようなものが現れる。
空の異変に気が付いた人々が、空を見上げてざわめく。
黒い雲のようなものは、戦場の上空を覆いつくし、太陽の光さえも遮った。
そして一斉に、地面へと落下していく。
黒い雲のようなものが近づいたことで、それが何であるかが分かった。
「ば、バッタだー!」
戦場は敵味方関係なく混乱に陥った。
蝗害のバッタは植物はもちろんの事、そこにあるもの全てを食らおうとする性質がある。
そのため、人に噛みつく事もあるのだ。
問題は、天然のバッタではないことである。
「うわぁ!杖が食われた!」
「こいつら、剣も食うのか!?」
「ぎゃあああ!腕が!腕が食われた!」
阿鼻叫喚がそこら中から聞こえてくる。
「これは一体……?」
レジスタンスのメンバーがドン引きしている。
「バッタの群れに、どんな物質でも食らい尽くす付与をしました。これで鎧も剣も、はたまた生きている人間すらも食らい尽くします」
「ローアン、確かに俺は戦場を混乱させるようには言った。しかし、何もここまでやれとは言ってないぞ」
コスロスが若干困ったように言う。
それに対してローアンは、やや苦笑気味に言う。
「僕がどうしてレジスタンスに入ったと思います?カロットを殺した時から、ずっと思っていたんです。快楽のために殺していたカロットを、僕が殺したら。『自分の行いは自分に返ってくる』なら、僕の行いはどうなるのか。答えは単純です。カロットと同じ、『殺しに快楽を得る』です。だからこうして、大量虐殺をしているんです」
その反応に、コスロスが首を振って答える。
「それはおかしい。おかしいぞ、ローアン。お前はいつの間にそんな人間になったんだ?」
「さぁ。頭を殴られたときじゃないですかね?」
その時、羽音が森の中から聞こえてくる。
「この音……、まさか!」
次の瞬間、森の中からバッタが大量に出てきた。
そして次々とレジスタンスのことを襲う。
「ローアン!今すぐやめろ!」
「やめる?無駄ですよ。僕が召喚した虫ですからね。僕の気が済むまでとことんやらせますよ」
上空の魔法陣はまだ消えない。そこから次々と強化バッタが召喚され続けているからだ。
そして、バッタは戦場を大きく越え、帝都や近隣諸国にまで到達した。
その日、一つの大陸から複数の国家が消えた。
生き残った証人は一人もおらず、その大陸は歴史の闇へと葬り去られることになった。
ただ一人を除いては……。
召喚獣使役のスキルだと思ったら召喚虫使役のスキルだった~上限ないみたいだからとりあえず蚊を1兆匹召喚する~ 紫 和春 @purple45
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