情報は流れてくるものではない。
現代と違い、少し前までは情報など庶民には降りてこないものでした。
下町の人間は、半径500M の世界を知るのがせいぜい。
この物語は、そんな下町の飯屋の息子が魔術師になるため、伝手もなく旅に出る所からはじまります。
(すみません。まだ80話までしか読んでいません。それを踏まえて)
そこまでは、タイトルの魔術を使えるようになるどころか片鱗さえも見つけられない物語。でもそれがいい。
少年の特殊能力?は記憶力と観察眼。それもチートではなく飯屋で働いて身に着けた技術。
それだけを武器に、人と出会い、情報を得、知識を学び成長してゆく。
骨太の本格的なジュブナイル。安易なファンタジーとは一線を画す筆力と構成。
子供の頃、図書館で古典のSF小説を読んでいた時のドキドキ感を思い出させました。
必ず名作として残る。そんな期待をいだかせる本格派のファンタジー小説です。
今のところタイトルには良い意味で裏切られましたがとても面白いお話です。むしろタイトルがどう回収されるか楽しみです!
また、主人公・ステファノの出自である『飯屋のせがれ』という設定がきっちり生かされている点も良いと思いました。理由なく『デキる』、わけではなく、物語冒頭に至るまでにいろんな苦労があったんだと想像させられますね。
もっと言えば『飯屋のせがれ』だったからこそ物語が成り立っていると思います。
いわゆる物語のテンポに関しては、確かにゆっくりめではありますが、逆に言えば丁寧に描写していて不足が少ない分わかりやすくてそこもGOOD。ステファノがどんな道を辿るのか注目。
月並みな表現ですが、非常に面白い内容です。
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
僕は確かに文字を読んでいるのだけれど、傍らに人がいて、僕に物語を語っているような感覚になる。
物語の中の風景は、主人公の歩みに合わせてゆっくりと姿を現してくる。母親に物語の続きをせがむ子どものような気分になり、僕は物語を一気に読み進めてしまう。
既存の話を全部読んでしまうと、続きが気になって焦れるような感情も湧いてくるのだけれど、物語るリズムが、僕に(たぶんあなたにも)寄り添うように心地良く、そして確かなものなので、僕は安心して「続きが読める」という幸福な希望を持つことが出来るのだ(と思う)。
あなたにこの物語を勧め、そして一緒に語り合いたくなる、そんな物語。
こんなにも面白く、そして文学的な作品が未だ一部の人にしか気付かれずに生まれていること、普通のことを普通に出来ると言うことが強みの主人公の魅力にも身震いした。
いいものは世間や世界に出なければならないと思うが、この作品が世に出ることはすこし難しい気がする。ライトなノベルではなく、時に重さで殴りつけてくるような比喩表現、文章の構成がキチンとしていることに尊敬を覚える。
だからこそいわゆる【ラノベ】の世代の人に受け入れられるのかどうかが心配なのだ。
私の余計な心配が杞憂に終わりどんどんと、書き進めて頂き、さらなる高みに登る所を一読者として見守りたいと思わせる作品でした。