傍若有人

 僕は確かに文字を読んでいるのだけれど、傍らに人がいて、僕に物語を語っているような感覚になる。
 物語の中の風景は、主人公の歩みに合わせてゆっくりと姿を現してくる。母親に物語の続きをせがむ子どものような気分になり、僕は物語を一気に読み進めてしまう。
 既存の話を全部読んでしまうと、続きが気になって焦れるような感情も湧いてくるのだけれど、物語るリズムが、僕に(たぶんあなたにも)寄り添うように心地良く、そして確かなものなので、僕は安心して「続きが読める」という幸福な希望を持つことが出来るのだ(と思う)。
 あなたにこの物語を勧め、そして一緒に語り合いたくなる、そんな物語。