ドラマの撮影

 

ドラマの撮影

「はーい、皆さん。今からここで飛び降り自殺が行われるので、通行止めです。迂回して、別ルートを通って下さい。大変申し訳ありません」


 いつも通る道を歩いていたら、通行止めだった。そこには黄色と黒のテープで規制線が張られ、その内側から警備員がそう叫んでいた。ドラマの撮影か何かか?そう思いながら、僕は、ビルの上を見上げた。首が痛くなるほど高いビルの上には、人みたいなものがいた。へー、ドラマの撮影ってこんな風に行われるのか、僕はふとそう思った。これは、明日の話のネタになるな、僕はそう思い、規制線の外側から見学することにした。すると、警備員が僕に向かってこう言った。


「あんた、こんなモン見たらトラウマになるよ。ほら早く。帰った、帰った」


「いや、そういうの慣れてるんで。僕は大丈夫です」


 僕は口から出まかせを言った。すると、警備員が


「そう?それなら、内側から見学する?」


 と言い、僕に手招きした。僕はありがたく思い、近くで見学することにした。


「心の準備整った?もう大丈夫?」


 地上から警備員が男に向かって、拡声器でそう叫んだ。すると、屋上にいる男も拡声器で、

「大丈夫です。整いました」と言った。


「じゃあ、自分のタイミングで飛び降りてね」


 警備員が男に向かって、声をかけた。


 すると、男は10秒も経たないうちに、ビルから飛び降りた。ドンという音とともに、男の体が地面に叩きつけられた。辺りに血が飛び散る。


「すごい、ドラマの撮影ってこんな風に行われてるんだ。まさか、マットもなしで飛び降りるなんて。あの俳優さん、役者魂がすごいっすね。撮影後は救急車呼ぶんですか?」


「君、何言ってんの?これ、ドラマの撮影じゃないよ。彼はただの自殺志願者。それに救急車って。あの状態で生きてるわけないじゃん」

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ドラマの撮影   @hanashiro_himeka

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