私には神様が、少年には純真が宿っていた。

 災厄の年に、山神に捧げられて神の器となった主人公と、主人公を慕う少年の物語。
 少年は両親を亡くし、過疎で超高齢社会の村に引っ越してきた。親族の老人の家に預けられたものの、同じ歳の遊び相手もいない。そんな少年が主人公の前で泣くので、普段は姿を見せない主人公は、少年にだけ姿を見せていた。
 ところがある日から、少年の様子がおかしくなった。そして少年は、主人公にあることを告げて走り去る。そして神の遣いから、主人公は、少年の言葉に返事をしてはいけないと、忠告を受ける。
 そして、ある日のこと。少年は育ててくれていた老人や村の人々と一緒に、神様のところにやって来る。しかし……。

 異類婚譚は多くあるのですが、この作品は人間の因果と、神様の役目との間で揺れ動く心情が、よく表現されています。この設定やストーリー、それらを書ききる文筆力には脱帽でした。

 是非、御一読下さい。

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