怖いような 物悲しいような でもやっぱり怖いような

 別荘のシャンデリアにぶら下がる幽霊と、それを見ることのできる僕と春ちゃんのお話。

 中学三年生、まさに思春期年代の少年の、少し怖くて不思議な思い出の物語です。

 いわゆる成長物語、と言い切ってしまってはさすがに語弊があるのですけれど、でも成長や発達の途上にある少年が主人公でなければ、きっと成り立たなかったであろう物語。

 彼の経験したそれを〝何〟と呼ぶべきか。きっと言いようはいくらでもあるのですけれど、でも本編を読んでそのまま体感するのが一番だと思います。
 少なくとも、当の彼自身には説明し得なかった、何か不思議でうら淋しい感情の奔流。
 こういうの、もう本当に大好きです。

 幽霊が登場するお話であり、何かホラーのような冷たい不気味さ・怖さがあるのですけれど、でも物語そのものはあくまで主人公自身のドラマが軸。
 少年の青春を静かに描きながらも、しかしじっくり読み直すとやはりうすら寒くなるようなものがあったりして、その手触りが本当にたまらない作品でした。

 ホラーでもあり青春物語でもあるお話。
 そのしっとりとまとわりつくような湿っぽさ。
 とても面白かったです。