第2話

無事に入学式も終え、寮で先輩に挨拶もしこうして私の高校生活は始まった。

授業も少しずつ始まっていき、普通の高校では学ばない、専門分野の教科も多く思っていたよりこれはしんどいぞと思い始めて1週間。

毎日が飛ぶように過ぎていった。

初めての教科ばかりで果たして着いていけるのかと思っていたが難しい教科ばかりではないみたいで、今からの時間は生物の授業だった。

背の高い、すらりとした男の先生がやる気満々で教室に入ってきた。

「はい、授業はじめます!」

私は先生の声に一目惚れ、いや人聞き惚れした。

落ち着いた、穏やかな声だった。

聞いた瞬間好きだな、と思った。

話し方も声のトーンもちょうどいい。

あー、この授業は好きな授業になりそう。と少し嬉しくなった。

あっという間に授業が終わった。名前は泉俊太郎先生。名前もすぐに覚えた。

授業が全て終わり、部活時間になった。

1年生は今日から部活体験が始まる。

やりたい部活が特になかった私はできたばかりの友達…坂田みずきに話しかけた。

「ねえ、部活体験どうする?どこか行きたいところは決まってる?」

「うん、そうだな…吹奏楽部に興味あるから見に行かない?」

そう言われて私もみずきについていくことにした。

ただ、ついてきただけの私は先輩に流されるままフルートのところで体験させていただき、ひたすら音が出る練習をしていたが、時間がきてしまい「そろそろ終わろっか」と声をかけられた。

みずきもちょうど終わったところだったので一緒に音楽室を出ようとすると先輩に「隣の準備室に先生いるから声かけて帰ってねー」と言われた。

音楽室を出てすぐ、時計をみたみずきは「やばっ!電車やばいわ。今日、用事あるん忘れてた!」

と言い出した。

「いいよ、帰りな。私、先生に声かけとくから」

「ごめーん!ありがとう!」

みずきは走って帰っていく。

私は隣の準備室の扉前に立つと「ん?」と不思議に感じた。

扉にすりガラスがついているのだが、先生がいるはずなのに中は真っ暗なのだ。

もしかして先生、いないのかな。

そう思い、ノックもせずに扉を開けてしまった。

ガラッ!

勢いよく扉を開けるとそこには泉先生ともう1人、可愛い感じの女性の先生がいた。

そして、見てはいけないものを見てしまった。

多分…キスしてた。

そう頭で認識した瞬間。

何故か全力で走り出していた。

「待って!ねえ!待って!…」

泉先生の声が聞こえる。

そりゃ、先生だって恋愛するよね。

頭では分かっていても高校生になりたての私は初めて見たキスに戸惑いを隠せなかった。


急いで寮に戻った私は部屋に行った。

同部屋の先輩はもう既に帰ってきていたようでベッドで寝ていた。

私は静かに鞄を下ろしてジャージに着替えた。

部屋を出て食堂へ行く。

「美織、遅かったじゃん。」

そう声をかけられて振り返ると友達の美奈子が既に夜ご飯を食べていた。

私も食事を取りにいき、美奈子の隣に触る。

「なんか、顔色良くないけどどうした?なんかあった?」

優しい美奈子が聞いてくる。

あのキスのこと、美奈子に話していいかな…。

そんな思いが頭をよぎる。

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あの頃、私は。 桜川きき @kiki14chiyo

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