あの頃、私は。
桜川きき
第1話
「いいじゃない、似合うじゃん!」
母が言う。
今日から高校生。
新しい制服に身を包む。
赤のチェックが入ったスカート。
少し、藍色がかったブレザー。
ダサくはない。
期待と不安が入り混じった気持ちで建物を見上げる。
母と父も綺麗なスーツを着て同じように建物を見上げる。
「美織、楽しみだね!」
母がウキウキしたように答える。
寮に入る私をあんなに反対していたのに満面の笑みだ。
早く家から出たかった。うちの家には口のうるさい、私のことが恐らく嫌いなのであろう祖母がいる。私の顔を見るたび、小言…というか悪口を吐き、虫の居所が悪ければ叩かれる。
毎日ビクビクしながら家に帰り、自分の部屋に行くのはもううんざりだった。少しでも自由に楽な気持ちで毎日を過ごしたかった。と言っても一年生の間は先輩と同部屋なので気を使わないといけないがあの時の私は家にいるよりもマシだし、一年の辛抱だと考えていた。
「早く教室に行かないと。」
そう、両親にいい、歩き始める。
父と母は祖母から庇ってくれることもあった。が、それを見るのも辛かった。私は捻くれた性格をしている為、母は間に挟まれて辛そうだった。
だから、私が居なくなっていいではないか。
そう考えていた。
教室に行くと入り口に席順が記されていた。
ある専門的なことが学べるこの高校は2クラスしかないため、新入生の人数も少ない。
自分の席を確認して席を着く。
周りを見渡すと早速、友達を作ってる子、机にあった教科書を見ている子、1人で大人しく座ってるだけの子。色々な子がいた。
前の子が後ろを振り返った。
「私、なつき。これからよろしくね!」
彼女は可愛い笑顔でそう告げた。
「私は美織。よろしく…」
人見知りな私はなんで言ったらいいか分からず、言い淀んでしまった。
「はーい!皆さん、席について!」
先生が教室に入ってきた。
小柄な少しぽっちゃりとした優しそうな印象の先生だった。
「これからみんなの担任になります、田中です。田中佳子と言います。これからよろしくね!」
先生は元気よくみんなに挨拶した。
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