You are the culprit.
この事件を語るには、大前提を1つ用意しておかなきゃね。
そう……被害者である大岩雪下本人こそが今回の計画犯、すなわち主犯だったことを。
事件が動き始めたのは、文字通り最初から。俺達が初めて顔を合わせた時からだ。
1番に自室から出たであろう大岩さんは、タブレットを持ってきた天岸さんを見て困った様子を見せたらしい。部屋に戻れないから、タブレットを持っていけないって。
それに対して今回のキーパーソン、チアキさんが善意を示した。
譲ったんだよ。今回の凶器となった、〖引きよせる〗のタブレットを。
チアキさんからタブレットを受け取った彼女は、次に実行犯役とのコンタクトを図った。
ターゲットを定めていたのか、最初に単独になりそうだった人間を基準にしたのかは分からない。
それでも1つ確かなのは……彼女は自己紹介のタイミングを利用して〖倉庫〗で実行犯と2人きりになる機会を強奪してみせたこと。
その行動の目的は2つ、いや3つかな?
1つ目は実行犯に協力関係を結ばせること。俺の知っている犯人は、そう簡単に人を殺せる性格じゃないからね。多分この工程はあったと思う……うん、思いたいな。
2つ目は犯行計画を企てて共有すること。これはマストだった。だって、階別殺人を確認もなしに息ピッタリでやるのは無理でしょ。
3つ目。これが大本命。
〖引きよせる〗と実行犯のタブレットを交換したんだ。
当時、俺達の大半はこいつがどういう風に所有者を認証するのかすら知らなかったと思う。外見が同じ機種だから、本来これは効果的なトリックとして成立するはずだった。
……柊さん達が賢すぎたから、割と一瞬で見破られていたけどさ。
そんな計画が進んでいることも知らず、俺達は呑気に調査を始めた。
殺害現場に選ばれた〖調理室〗を担当する予定だった俺とチアキさんは『始めようとした』っていう表現の方が正しいか。
大岩さんは、俺達が目を離した隙を突いて〖休憩室〗に繋がる扉の鍵を閉めたんだ。
犯行現場である〖図書室〗でも似たようなことが起きていたかもね。
〖引きよせる〗を持っていた犯人は、まあ、結果的にほぼ単独行動になっていた。
〖引きよせる〗の効果を要約すれば、強大な磁力。加えて大岩さんは鉄製のチョーカーを身につけていた。その理由は知らないけどさ。
そんで、〖引きよせる〗は1室分の距離までなら範囲内らしい。
これらの条件を以て……事件は起きた。
大岩さんは、あの細い首をアクセサリーに絞められて亡くなったんだ。
犯人が〖調理室〗の1室上にある〖図書室〗で〖引きよせる〗を発動したことによってね。
この時に彼女は天井まで吊り上げられた。チアキさんが見つけた凹みと、大岩さんの後頭部のたんこぶがその証拠だよ。
彼女は小さかったし、〖引きよせる〗は絞頚を可能にするレベルの磁力だし。根拠もある。
その後、実行犯はチアキさんに〖引きよせる〗を返却してから自分のタブレットを回収したはずだ。そうじゃなきゃ所有者が重複してルール違反になるはずだから。
条件、手順、時間帯。それら全部を照らし合わせていくと……大岩雪下が選んだ実行犯は1人しか考えられなくなったでしょ。
最初に単独行動を取ろうとして、大岩さんが着いてくるのを止めなかった。
遮蔽物まみれの〖図書室〗で1人、彼女の死亡場所の真上で調べ物をしていた。
事件後、治君へ見せつけるように動き回ったり、チアキさんにタブレットを返したりした。
◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
君が犯人だ。
◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
[読者参加型ミステリギャンブル・探偵部門]
第1章【I'm first liar.】
犯 人:蝋梅剛志
トリック:タブレット交換&階別&密室殺人
人狼と赤ずきん 緋衣 蒼 @hgrmao
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